Amazonが映画館チェーンを買収か?

Amazonは、実際の映画館の世界で、より多くのことを進めるための準備をしているのかもしれない。ブルームバーグによれば、この電子商取引の巨人はLandmark Theatresの買収の準備をしているらしい。Landmark Theatresは米国最大の芸術映画(インディーズならびに外国映画)チェーンを標榜しており、27地域268スクリーンにまたがる52の映画館を結んでいる。

ブルームバーグの情報提供者によれば、AmazonはWagner/Cuban Cosからの事業買収の可能性と競い合うことになるという。だが最終的な決定はなされていない。

各社はこの報告書に対して公にはコメントしていないが、Amazonの広範な戦略に合致するようにみえる手段であることから、これは考慮に値するシナリオだ。

Amazonは、顧客が欲する実質的にあらゆるものを、デジタル世界で購入することを容易に(そして安く)するために、驚くべき仕事を成し遂げてきた。それが洗面化粧品、書籍、食料品、衣服や電子機器などの日用品であろうと、あるいは映画、音楽、あるいはアプリやゲームのためのクラウドストレージであろうと、わずか1クリックで購入することを可能にしたのだ。Amazonは、売り手と買い手の間の仲介業であると同時に様々な商品やサービスの売り手としても振る舞うという、自身の市場モデルを介して、人びとがお金を使いたいと思う場所をなんでも提供するのだ。

しかし、決してオンライン世界に転換できない小売形態がある。それは経験型小売だ ―― レストランで外食したり、バーやイベントに行ったり、支払う前にメロンを持ち上げて匂いを嗅いだり、そしてもちろん映画を観るためには、立ち上がってどこかへ実際に行かなければならない。

Amazonはこれをよく知っているため、より物理的な商取引に人びとを引き寄せるために、ゆっくりと静かに、厳選した強みを集め続けている。こうした動きに含まれるものの例が、書店や、自分自身で運営する未来的なキャッシャー不要の食品店などだ。そしてもちろん、自然食品会の巨人Whole Foodsの獲得に137億ドルを費やしたことも忘れてはならない 。

最後のものは、映画館チェーンがどのようにAmazonの世界に取り込まれて行くかを考える際に有益だ。AmazonのPrime Fresh食料品配送サービスは、忙しいユーザーに食料品店へ行かなくても良い利便性を提供するものだが、これに対してWh​​ole Foodsは食料品店に出かけることが好きな利用者を捉える手段をAmazonに提供する。

しかし、それだけではない。Amazonは、Prime加入者のためのさらなる別特典として、Whole Foodsの割引を追加した。その強靭な物流の力を、Whole Foodsへの注文と配達に対しても広げようとしているのだ(もちろん最初はPrime加入者に対して)。そしてもちろん、同社はその他の製品であるKindleやEchoを売るためのポップアップショップを、店内の最も良い場所に確保している。

映画館のチェーンを所有したAmazonは、映画や実験的な物理的商取引に対する関心の拡大、そして商業帝国の残りの部分の活用に対する多くの機会活用を、はっきり示している。

映画館の世界は長い不況が続いている。高価なチケットやスナックを避けて、快適な自宅の少しばかり小さなスクリーンで観ることを選ぶ消費者が増えているからだ。しかし、ディスラプティブな視点から見ると、この年老いたビジネスモデルも魅力的なものなのだ。だからMoviePass(定額制で映画館での映画が見放題になるサービス)などがやってきたことも驚くようなことではない。それは映画館の座席にもっと多くの人たちを呼び込むために、フラットレートのサブスクリプションを提供することで、映画体験の再興をおこなうチャンスを見たからだ。

もちろん、MoviePassは出血大サービスだし、様々な意味で混乱を引き起こすものだ。だがそれは大きなインパクトを示した。これによってAMCが注意を向け独自のサービスを始めることになった。

だが世界最大の劇場チェーンの場合には、MoviePassと同じ種類の痛みを経験することはほとんどないだろう。なぜなら、それは配信手段をコントロールし、大規模なサポートインフラストラクチャを持っているからだ。そしてもちろん自分自身の映画館を所有している。

しかし、もしAMCの防御力がセーフティネット程度だとしたら、世界で最も価値のある企業の1つであるAmazonの場合は、エアバッグ、衝突センサー、シートベルト、自動ブレーキを持つだけでなく、次に何をすれば良いかを教えてくれるAlexaさえも装備しているかも知れない。もしAmazonが赤字の映画館チェーンを経営するとしても、それはAmazonにとってバケツの中の小さな一滴に過ぎないのだ。

既にAmazonは、2018年4月現在、Primeメンバーが1億人を超える世界最大のデジタルサブスクリプション事業を展開している。この上に、映画館へのサブスクリプションを付け加えることは、それが無料でも割引でも、簡単なことだ。

だがちょっと待った!Landmark Theatresの価値はさらに高いものだ!われわれが知っているように、Amazonは、Primeユーザーに対してムービー、テレビ、音楽を提供する、始まったばかりのメディアビジネスを抱えている。これにはAmazon自身のオリジナルコンテンツマシンであるAmazon Studiosが含まれている。これはTransparentのようなTV番組や、Manchester by the Seaのような映画を担当している。

シアターチェーンを買収すれば、Amazon自身の制作する映画の流通経路がさらに広がり、Amazonはその流通コストをより厳密に管理することができるようになる。また、劇場、DVD、デジタル配信をカバーするポジションを持つことで、まだ制作されていない映画に対する興行権を交渉する際に、Amazonがより多くの力を発揮することは間違いない。

配給をコントロールすることは、各映画賞の季節に有利に働く。映画のリリースタイミングは受賞候補者を決定する際に大いに役に立つからだ(そしてもちろん、そうしたスクリーンはAmazonが伸びつつある広告を流すことのできる場所となる)。

そして結局の所、劇場というものは、不動産ビジネスでもあることを忘れないで欲しい。

映画館が売り場使用権で大きなお金を稼いでいることは、昔から知られた事実であり、それに応じて、人びとが、暗い映画館の中に座る前後に、ひしめき合いお金を使うための広いロビーを用意してきた。通常の商品販売(Amazonとマーケットプレイスパートナーによるもの)に加えて、Amazonはこの空間をWholeFoodsで行ったやりかたと同様に、映画を観に来たひとに何の関係のない商品の体験スペースを用意することができる。そうなると俄然、何か新しいものを試すための興味深い場所に思えてくる。

ブルームバーグの記事に対するAmazonやLandmarkからの反応がなかったとしても、このニュースで他の劇場チェーンの株価が下落しても驚きはない。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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