Amazonによるeコマース50%独占が意味するもの

(編集部注:筆者のJun-Sheng Li氏はCanvas Venturesの立ち上げのためのエグゼクティブ。Walmartでグローバルeコマースサプライチェーンを担当する上級副社長を務めた)

ウォルマート(Walmartのグローバルeコマースサプライチェーンを担当するSVP5年間務めた者として、私は実在の小売店舗がいかにeコマースにおけるAmazonの独占に対応しているかを最前列でつぶさに見てきた。我々の多くが警戒していた。それを誰が責めることができるだろうか。今日、Amazoneコマース取引の50近くを扱っている。

私の見立てでは、もしあなたが実在小売店舗を運営しているのであれば、あらゆる販売チャネルを統合するためのデジタル戦略を有しているか、特に何もせず無関係のままかのどちらかだろう。そうした状況を正確に理解するために、まずはこれまでの流れを振り返ろう。小売業者が直面している最も大きな問題と私が認識しているものから始める。

目標:真にオムニチャネルになる

オムニチャネルでの小売は、全ての小売業者が目指すものとなっている。しかし、どのようにして成し得るのかを知っている人はほとんどいない。要するにオムニチャネルは、顧客が何を購入するか、そしてインターネットでの購入なのかあるいは直接店舗での購入なのかにかかわらず、シームレスで継続的な体験を提供することを意味する。

たとえば、私は自分のスマホを使ってNordstromで靴を買い、購入した商品を実在店舗でピックアップするか、あるいは自宅に配達してもらうかを選ぶことができる。しかしなんらかの理由でその靴を返品したいとなれば、私は送り返すこともできるし、店舗でも返品できる。ここでのNordstromとのやり取りは絶えず1つのチャネルから他のチャネルへとフローしている。

しかし実在店舗の経営者からすると、それは言うは易し、行うは難しだ。

多くの変更点

彼らは「悪魔は細部に宿る」と言うが、私はそこに「細部はサプライチェーンの中に含まれている」と付け加えたい。そして今日のサプライチェーンはこれまでになく複雑だ。もしあなたが従来タイプの実在店舗小売の経営者で、オムニチャネルに移行しようと努力している場合は特にそうだ。手始めにあなたは物事がかなり異なることを理解する必要がある。あなたが行うようになることは次の通りだ。

・何百もの店舗の代わりに何百万もの家庭に商品を届ける

・何千ではなく何百万ものSKU(在庫商品識別番号)を管理する

・店舗向けにトラックに積み込むのではなく、ラストマイル配達も含め、小包で家庭に届ける

・流通センター(DC)に加え、発送センター(FC)も運営する。FCは消費者に直接商品を発送し、DCは店舗に発送する

オムニチャネルにしたい?

現在あなたが所有する流通センターに、発送センターを加える準備をしよう。複雑さのレベルは桁違いに増えるだろう。

3つの主要課題

オムニチャネルを追求していく中で直面する最も骨を折る3つの主要課題がある。

・組織とマネジメントの制約

・人々の変化への抵抗。多くの人が新たなパラダイムの中でとらえるのは難しいと感じる

・それぞれの事業にそれぞれのプロセス、KPIs(重要な業績評価指標)、インセンティブがある

全チャネルにわたるアセットを共有するのは難しいかもしれない。たとえば、倉庫のスペースや、オンラインと実在店舗の間のストックのバランスをどのように振り分ければいいのだろう。

プロセスとシステムでの課題

・初めに計画を立てる:予想される需要の総計を出し、実在店舗とオンラインそれぞれでの販売を計画する

・現在何を抱えているか理解する:全チャネルにわたる商品仕分けを決める。DCFC、店舗、そしてマーケットプレイスのベンダーなど第三者のところも含む。

・最後にどこから商品を発送するかを把握する。世界さまざまな場所へと販売される商品を即座に追跡しなければならない。

イノベーションの継続

実在小売店舗は、サプライチェーンに影響を及ぼす新たなプロセスやテクノロジーを絶えず学ぶ必要があるだろう。たとえば:

FCをサプライチェーンネットワークに組み込むとき、新たなプロセスを学ぶ。ここには、品物を受け取る、分別する、保管する、選ぶ、梱包する、発送する、ドライブスルーや受け取り用の品物をロッカーや店舗にしまっておく、といった工程が含まれる。こうしたプロセスは、従来のDCや店舗で使われているものとは全く異なる。

・梱包のテクノロジーにも同時に取り組む。パッキングの手法1つのパッケージにどれくらい詰めるかを能率的なものにする)と、材料(長距離や環境、コスト、商品の保護のために何が最も良いかを考慮する。特に断熱素材やトートを使ってグローサリーを家庭に配達するとき)だ。

・家庭のグローサリーショッピングとラストマイル配達の需要をマッチさせる。DCから店舗へとトラックで商品を配送するのに加え、店舗から顧客の家までのいわゆる牛乳配達的な配送をどう運営するかを考える必要もある。グローサリーを家庭に届けるときは、特定の時間スロットに注意しなければならず、腐りやすい商品がすぐに、そして確実に受け取られるよう時としてライブ配達行う。これは、常に最新で技術的にモダンなTMS(輸送管理システム)を必然的に伴う。

Amazoneコマース初期からリーダー

この記事のヘッドラインに戻ると、Amazonは従来の小売業者からさほど抵抗を受けることなく、いかに今日のように巨大なeコマース企業になったのだろう。実在店舗のエグゼクティブたちが居眠り運転をしている間にそうなったのだろうか。この問いに答えるには過去のフレーミングが役に立つかもしれない。

eコマースにおける4つの波

小売業者がすべきこと

私が思うに、我々はもう戻れない地点に来ている。オムニチャネルという列車は駅を出発したのだ。もし私が小売事業を経営していたら何をしていただろうか。まず、顧客はオンラインとオフラインの両方で買い物することを好み、特定の商品に関しは2日での配達を期待しているという事実を受け入れるだろう。これはAmazonによって高い水準にセットされてきた。それから私は、店舗からの発送や店舗でのピックアップといった新サービスを提供するために、倉庫や流通センター、店舗といったすでにある資産にテコ入れを図るプランを練るだろう。また、オンライン注文品を発送して顧客の自宅に届けるための新たなセンターを設けるだろう。

Amazoneコマースを支配しているが、デジタルプラットフォームをうまく展開しているデパートや小売ブランドはたくさんある。私は、ウォルマートがオムニチャネル戦略に巨額投資したころの2013年から2018年まで、そのウォルマートのチームに所属していた。

2019219日、ウォルマート2019年第四四半期の決算を発表したが、そこで示されたeコマースの売上は前年同期比43%増と、昨年のホリデーシーズンについての懸念を吹き飛ばすようなものだった。

もちろん、効果的なオムニチャネル戦略には多くの要因が絡んでいる。私が思うに、最も大きな要因は単に企業が方針を固めて取り掛かることだろう。

イメージクレジット: Smith Collection/Gado / Getty Images

原文へ翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。