Amazon(アマゾン)のKindleは、言うまでもなく、電子書籍リーダーの購入を検討する際に、真っ先に思い浮かぶブランドだ。とはいえ、もちろんライバル機種もある。比較してみると、最新のエントリーモデルのKindleは、あまりお買い得とは言えないように思える。価格は安いが、品質もそれなりで、水準を満たしていない。
電子ペーパーを採用したKindleのラインナップの中で、最も基本的な現在のデバイス、つまりただの「Kindle」(Kindle Paperwhiteや、Kindle Oasisなどではない)は、今年2019年にアップデートされ、いくらか改良が加えられた。調整可能なフロントライト付きのE-Inkディスプレイ、改善されたタッチスクリーン、そして全体的なデザインも刷新された。とはいえ、気づかない人も多いほどの変化でしかない。
価格は110ドル(日本版は1万980円)、またはデバイス上の広告表示を受け入れるなら90ドル(日本版は8980円)で、市場に出回っている同クラスのデバイスの中でも安い方だ。また、上位モデルのKindle Paperwhiteの150ドル(日本版は1万5980円)、Kindle Oasysの270ドル(日本版は3万1980円)と比べても、はるかに安い(両モデルとも「広告付き」は、それぞれ2000円ずつ安いが)。
もちろん、OSはおなじみのKindle OSで、他のモデルと同様、Amazonアカウントとシームレスに同期する。ざっくりと比べれば、フォーマット、ストア、アクセス性、その他の点で、他のモデルとものとほとんど変わらない。この範囲では、何か犠牲にしなければならないようなことはない。
残念ながら、犠牲にしなければならないのは、もっと重要なこと。表示品質だ。
ここ数年、電子書籍リーダーのディスプレイの品質が、解像度と照明の両面で、大きく進歩したことは誰の目にも明らかだ。数ヶ月前、私は130ドル(日本版は1万4904円)のKobo Clara HDをレビューした。このモデルは、余計な機能はほとんどなく、率直に言って質感はイマイチだが、美しい画面と色温度調整可能なフロントライトを備えている。それだけで、十分金額に見合った価値がある。
スペックは雄弁だ。「Newモデル」のKindleの画面は、6インチでピクセル密度は167ppi。Clara HDはその約2倍の300ppiとなっている。これは、上位モデルのKindleと同じ。その違いは誰でも気付くレベルのものだ。特に文字の表示品位が違う。解像度は必ずしも高ければ高いほど良く見えるというわけでもないのだが、167と300の違いは一目瞭然だ。文字はより鮮明で、整って見える。また、フォントの違いもよくわかる。設定のカスタマイズのしがいがあるというものだ。(最近気付いたのだが、Koboには簡単にフォントを追加できる。これはなかなか素晴らしい。)
マクロ撮影でないと、両者の違いを捉えるのは難しいが、個人的にはこれは重大な問題だと考えている。スマホにしろ、タブレットにしろ、(Amazon自身のものも含む)電子書籍リーダーにしろ、すべてが高解像度を目指して進化してきたのには理由がある。逆戻りはありえない。
Claraは、上に示したように、寒色から暖色まで、色合いを調整可能なフロントライトも備えている。画像の色温度は実際とは異なるが、両者の違いはひと目で分かるだろう。私はこれがそれほど便利だとは思っていなかったのだが、解像度と同様、いったん慣れてしまうと、もう元には戻れない。廉価版Kindleの、冷たくて荒いピクセルの画面は、Koboの暖かくて滑らかな画面を見た後では耐え難いものがある。どうしてもKindleが必要で、なおかつ100ドル以上を出すことができないなら、高解像度でフロントライトを備えた、旧世代のPaperwhiteモデルか何かを探してみることを真剣にお勧めしたい。読みやすさがまったく違う。そしてそれは電子書籍リーダーにとって、本当に最も重要なポイントなのだ。
買ってしまった後で後悔しないよう、もう少し時間をかけて検討してみよう。たとえばPaperwhiteモデルはよくできたデバイスであり、Amazonの「広告(キャンペーン情報)」を受け入れるなら、エントリーモデルとそれほど値段は変わらなくなる。Kindleシリーズは、だいたいどのモデルも高い質感を持っている。しかし、Kindleブランドにこだわらないなら、Kobo Clara HDはどうだろう。少しだけ値段が高いが、KindleのPaperwhiteモデルを含めて比べても、より優れた読書体験が得られる、と私は考えている。また、同社のデバイスならではの柔軟性も備えているのだ。
エントリーモデルのKindleが、同じくエントリーモデルの競合機種に対抗できるような画面を装備したら、私も喜んでお薦めしたい。しかし今のところは、この表示品質を考えると、ちょっと値段の高いモデルを推薦せざるを得ない。
[原文へ]
(翻訳:Fumihiko Shibata)