Amazon GoのライバルTrigoが約24億円を調達

従来、スーパーのレジでは店員が精算していたが、バーコードリーダーとタッチスクリーンによる自動化が世界のいたる所で広まりつつある。その次のシステムとして多くの人が予想するのは、コンピュータービジョン技術をベースにしたプラットフォームだろう。客が棚から取ったものを画像認識し、買い物中に金額を自動集計する。客は店を出るときに何もせずに済む。9月16日、このような次世代精算システムを開発するスタートアップが資金調達を実施した。調達した資金によってシステムの開発を継続し、食料品小売業者に売り込む。ターゲットとして想定するのは、先行するAmazon Goを横目にしながらも、Amazonに頼らずにAIを使ってアクションを起こしたいと考えている業者だ。

精算不要の食料品購入システムを特に大型スーパー向けに開発するテルアビブのコンピュータービジョンスタートアップであるTrigo(トリゴ)は、シリーズAラウンドで2200万ドル(約24億円)を調達した。Red Dot Capitalがラウンドをリードし、既存株主であるVertex Ventures IsraelとHetz Venturesも参加した。これまでのTrigoの調達総額は2900万ドル(約31億円)となった。

Trigoはバリュエーションを公表していないが、すでにイスラエル最大の食料品店であるShufersal(シュファーサル)やヨーロッパのチェーン(会社名未公表)などの食料品チェーンと多くの取引を行っているという。

Shufersalは早くも今後5年間で280店舗にTrigoのシステムを導入する計画だが、Trigoはまだ開発の初期段階にあり、Trigoの強気の見通しに期待する計画と言える。Trigoは現在、約460平方mの店舗でカメラとセンサーをテストしているという。Amazon Goの典型的な店舗の2倍の広さだが、大規模なスーパー(約3300~4200平方m)だけでなく、Trader Joe’sやLidl(約1900平方m)などと比べてもまだまだ小さい。

Amazon Goと同様にTrigoも、店舗に張り巡らしたカメラが、買い物かごの中身を記録する。カメラは単に商品を見分けるだけではない。三角測量システムによって、同じ商品に対する二重請求を防ぎ、また客が店を出る前にカゴから棚に戻した商品を合計金額から除くことができる。

物事をスピードアップするだけでもない。買い物体験を再び楽しくすることがテーマだ。

「人々が食料品のeコマースを本当に望んでいるとは思わない」とマーケティング担当副社長のRan Peled(ラン・ペレド)氏は語った。「スーパーで買い物をするという体験がどんどんつまらなくなっているからeコマースを利用しているだけだ。実在店舗が、数十年前のスーパーに行くのが楽しかったあの時代の魅力を取り戻すのをお手伝いしたい。コンピュータービジョンベースのまったく新しいOSを店舗に導入したら何が起こるだろうか?」。

Amazon Goとは違いTrigoは特定の小売業者と利害関係があるわけではないため、小売業者同士の競争関係を気にせず、どの業者にも売り込むことができる。Trigoのシステムは店にポイントカードがあっても問題なく導入できる。

ただ、Amazonが世界で最も価値ある企業の1つに成長したのは、さまざまな企業のライバルであると同時にパートナーでもあったからだ。Amazon Goのシステムを競争相手に提供したとしても、Amazon Goの成長を妨げる要因になるかどうかはわからない。それはTrigoにも言える。

「Amazon Goを支える技術は、約10年前から業界に存在していた」とペレド氏は述べる。Trigoは2018年にMichael(マイケル)とDaniel(ダニエル)のGabay(ガベイ)の3兄弟によって設立された。「しかし、弊社のシステムを構築したその時がまさに、『ああ、これは上手くいくかもしれない!』と気づいた瞬間だった」。今となって彼が思うのは、タイミングが良かったということだ。食料品小売業者は自動化の流れに乗りたいと思っている。AmazonがGoを自身のビジネスに使うだけでなく競争相手の小売業者が購入できるサービスとして売り出しても使わない業者は一定数いるだろう。Trigoにチャンスはある。

精算にかかる時間をゼロにするという課題に、違う方法で挑むスタートアップもある。ちょうど先週、スマートなカートを開発するCaperが資金調達を実施した。ショッピングカートのセンサーが商品を記録し、買い物金額に加算する。スマートカートは客のショッピングカートの中身をより近くから確認できる利点があるが、Trigoのような店舗全体のシステムは運用コストをより低く抑えることができそうだ。例えば、ソフトウェアは既存の店内カメラのものが使える。

一般的に特許は企業が知的財産を守る重要な方法の1つだが、興味深いことにTrigoは別のアプローチを取る。「特許は申請しない。テクノロジーを公開したくないからだ」とペレド氏は言う。「誰にも見せたくない部分がある」。皮肉にもコンピュータービジョンを開発する会社のコメントだ。

世の中のすべての問題またはプロセスをテクノロジーによって解決する動きが加速する中、新しいテクノロジーの力で食料品店を21世紀へ導く者がいる。Trigoはそんな会社の1つであり、食品小売ビジネスが切望する存在だ。

「世界をリードするTrigoのコンピュータービジョンチームがこのテクノロジーを世界規模で拡大し、食料品小売業界全体に革命を起こす最初のチームになると信じている」。Red Dot CapitalのマネージングパートナーであるBarak Salomon(バラク・サロモン)氏は語る。「精算時に各商品のバーコードを人間がスキャンするプロセスには時間がかかるし時代遅れだ。Trigoのテクノロジーは実在店舗を救う。店で買い物をするという体験に新しい命を吹き込む一方、今なお残っている良い部分は生かしたい」。

 画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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