有力IT企業は音声アシスタントに力を入れているものの、近い将来自分たちの人工知能が一人勝ちして事実上の標準になるとまでは思っていないようだ。
今日(米国時間8/30)、MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラとAmazonのCEO、ジェフ・ベゾスはこの分野での提携を発表した。
実現は年内となるもようだが、ユーザーはAmazonのAlexa音声アシスタントにMicrosoftのCortana音声アシスタントを呼び出して作業をさせるよう命じることができるようになる(その逆も可能)。
以下は両CEOの声明。
Microsoftのサティヤ・ナデラ: あらゆる状況、あらゆるデバイスを通じてユーザーがCortanaを利用できるようにすることにわれわれは高い優先順位を与えている。Office 365との統合を含めたCortanaの知識がAlexaから利用できるようになるのはこの目標に向かっての大きな前進だ。
Amazonのジェフ・ベゾス: 世界は巨大で多様な場所だ。そこでインテリジェント・アシスタントの勝者も一つではないはず。それぞれの人工知能は独自の知識と得意とする能力を持つことになるだろう。有力な人工知能が相互に連携できるようになることはユーザー体験を豊かなものとし、有用性をいっそう増すだろう。われわれのEchoがCortanaに容易にアクセスができるようになるというのは素晴らしいニュースだ。
また声明ではユーザーが両社の人工知能の相互運用性を得られることがウィン-ウィンの提携である所以も説明されている。【略】
ここで強調されているのは(人工知能が別の人工知能を呼び出して会話するというのはややこっけいな印象だが)CortanaとAlexaの得意分野が大きく異なるという点だ。Cortanaはビジネスユーザーを主たるターゲットとするとする生産性ツールであり、Alexaは消費者を対象とするeコマースとエンタテインメントのツールだ。
こういう状況で両社が縄張り意識を強く持つことには大きな戦略的な意義が見いだせず、逆に提携することによって強みを相互に補完できる可能性があることになる。
New York Timesの記事でベゾスは「将来、ユーザーはさまざまなAIをそれぞれの得意分野に合わせて使うようになるだろう」と予測している。いわばハイキングに行きたいならそういうことに詳しい友達に相談するし、レストランを選ぶならまた別の友達に尋ねるようなものだ。ベゾスは「ユーザーができるかぎり多数のAIを利用できるようにしたい」と述べている。
ベゾスはまたAlexaがAppleのSiriやGoogle AIとも会話できるようになる可能性も考えている。ただしまだ具体的な交渉はないという。
ただしAppleとGoogleが人工知能分野でなんらかの互換性を実現する契約に調印する可能性はゼロだ。両社はiOSとAndroidというモバイルのエコシステムを2分する巨大プラットフォームを運営しており、Amazon、Microsofグループとは全く異なる戦略と優先順位を持っている。われわれは忘れがちになるが、AmazonとMicrosoftはモバイル・プラットフォーム競争に挑んだものの脱落した過去がある。
簡単にいえば、モバイル・プラットフォームで有力な地位を築けなかったのであれば、人工知能の相互運用性を拡大することでモバイル・アプリの有用性を高めることが両社にとって得策となる、ということだろう。
画像:Justin Sullivan/Getty Images
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)
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