Wall Street Journal:今Appleは全企業保有現金の10%を所有している。Moody’s調べ
QZ:Appleは米国全企業保有現金の10%を押さえている
実際は:Appleの国内および国外保有現金をもし総合すれば、米国企業保有現金の10%程度に相当する、ただし金融機関を除く。つまり、たまたま米国に本社を置く一国際企業を米国企業と呼び、その保有現金を算出し、米国企業で最も現金豊富な分野を除外して人為的に制約した集計値と比べると、全企業保有現金の10%に相当するという意味だ。
これはWall Street Journalの見出しより、ずっと印象に乏しく、QZの記事よりかなり割引かれている。しかし、われわれは少々杓子定規になりすぎたようだ。ちょっとAppleの隠し金庫をのぞいてみよう。
2013年5月21日付内部文書に、Appleが納税を逃がれるために、様々な事象を処理している方法 ― 完璧に合法かつ予想された行動 ― が示されている。これによると同社は現金1450億ドルを保有しており、その70%に当たる1020億ドルは海外にある。
つまり、国際複合企業体たるAppleは、1020億ドル相当の現金、現金相当物、および有価証券を、有名無実の母国であるアメリカ合衆国の外部に持っている。現金は一部の国境を越えては移動できない。もしAppleがその現金を「母国」に持ち込みたければ、苛酷な法人税を払う必要がある。つまり、同社の現金の大部分は永続的国外追放状態にある。
よって、これをわれわれが米国企業と見做せる会社の管轄下にあるとして勘定することは、合理的定義を曲げることになる。
Appleの国内保有現金は約430億ドルだ(国内外比率に関しては5月のデータが最新)。Wall Street Journalの記事は、Moodyによると米国企業保有現金合計は1兆4800億ドルであると報じている。したがってAppleの国内現金はこの数字の約3%だ。少々印象に欠ける。
しかし、一企業の国内保有現金を他社の総保有現金と比較するうえで、そこにはさらなる混乱の元がある。比較対象は(全企業ではなく)非金融機関企業だけだ。われわれは真理とはほど遠い位置にいる。
それでもAppleは莫大な富を持っており、アクティビスト・投資家のカール・アイカーンは、同社に対して900億ドルの株式買い戻しプログラムを要請中であることを発表した。Appleの現金持ち高を抑制するためだ。
保有現金を比較する真っ当なやり方は、Moody’sが格付けする1000社(同社が1.48兆ドルという数字を算出する元にしたと思われる)の明細を調べ、国内現金は国内と、国外は国外と比べることだ。ただし、米国を拠点と呼ぶ一国際企業の部分集合と比較したければの話だが。
裕福な国際企業すべての総保有現金高を比べる方が、ずっと興味深いだろう。お楽しみあれ。
トップ画像提供:Steve Snodgrass
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(翻訳:Nob Takahashi)