指先の操作だけで大量の情報にアクセスできるようになったことは、本当に素晴らしいけれども、でも文字通り自分の指先でしか情報にアクセスできない人たちはどう思っているだろう?。ここにご紹介する新しい画期的なタブレットは、磁力を利用して突起〔点字の‘点’に相当〕を並べ替え、地図などの画像情報も触覚に翻訳できる強力なツールになるかもしれない。
このまだ名前のないタブレットは、ヨーロッパのBlindPADプロジェクトの一環として過去数年間、進化し改良されてきた。その目的は、タッチスクリーンデバイスの安価でポータブルな代替機を作ることだ。開発は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者たちが担当している。
その最新のプロトタイプはやや厚いiPad miniぐらいの大きさで、巧妙なメカニズムで突起を上げ下げすることによって、画像や文字や点字を表す(点字用には大きすぎるかもしれない)。小さな突起には磁石がついていて、磁石はつねに二つのスチール層のどちらかにくっついている。電流を流すとコイルの力で層が切り替わる。eペーパーの画面と同じく、現在の形を保つのに電力を使わないから、とても効率的だ。
突起の反応はとてもはやいので、動きや振動でフィードバックを伝えられる。また、手による押し下げや滑らしも検出する。
しかし目的は、目の見えない人のためのKindleではない。点字ディスプレイはもっと密度が必要だから、Blitabが使ってるような、もっと違う触覚ディスプレイが必要だ。BlindPADの突起の数は横12行、縦16列だ。それらを、“taxelだ”(tactile element, 触覚的成分)と呼ぶ人もいる。言葉で説明するより、見た方がよく分かるだろう:
EPFLのHerbert Sheaは、こう説明している: “人びとは点字ディスプレイを読めるし、近くの障害物を白い杖で見つける。われわれの安上がりなタブレットは、グラフィック情報をリアルタイムで提供するから、部屋や道路の配置を事前に知ることができる”。
たとえば安全な横断歩道が角道のどこにあるかを示したり、二つのドアのどっちが正しいロッカールームかを教えたりできる。また健常者と一緒にグラフや幾何学の問題を考えることもできる。昨年の研究では、このタブレットと紙の上の盛り上がった点が、児童にほぼ同じ学習効果をもたらした。
われわれの結果は、プログラマブルな地図が教育やリハビリの現場でグラフィカルなコンテンツを表示する効果的な方法であることを、示している。従来の、紙を使う方法と変わらないし、柔軟性や多用性はもっと優れている。
BlindPADの突起タブレットはまだ開発途上だが、研究を始めてからかなりの年月が経っている。現状はかなり効率的で、ワイヤレス、そしてある程度はポータブルだ。
Sheaによると、このテクニックは、手で押す手袋のような形で健常者も利用でき、同じような空間的情報や、仮想現実における触覚的フィードバックを与えたりできるだろう。
今週デンバーで行われるACM CHIカンファレンスで、チームの最新の結果が展示される。