Blockchain―昨年は「幻滅の谷間」に落ちたが2017年の展望は明るい

Bitcoin

編集部:この記事はCrunch Networkのメンバー、Peter Smithの執筆。SmithはBlockchainのCEO、共同ファウンダー。以前の記事は How bitcoin protects against geopolitical risk

2017年のデジタル資産、またそれを支えるブロックチェーン・テクノロジーの展望は?

これは重要な質問だ。ことにフィンテック・ビジネスにとっては最近気がかりなニュースがあった。Goldman SachsとSantanderがR3 CEVを脱退し、 ブロックチェーンををプロトコロルとして採用する唯一の現実的デジタル通貨であるbitcoinは終わったのではないかという観測が流れた。

懐疑論者は正しいのか? われわれが知るようなデジタル通貨は本当に終わりなのか?

エコシステムになにがしかの影響はあるだろう。だが答えははっきりとノーだ。

以下のことを考える必要がある。ポンドは安全な決済通貨の一つと思われていたが、今年始めに起きたBrexit(イギリスのEU離脱)は、一夜にしてポンドの下落を招いた。この時期にbitcoinの価値は急増した。アメリカの大統領選直後、株価は一時急落したが、bitcoinはアップした。

これは偶然の一致だろうか? 私にはそうは考えられない。 これらの事象は 安全でボーダーレスで手続きが簡単なデジタル資産への要求が非常に強いことを自ずから物語っている。このようなデジタル資産は国や中央銀行のような中心による統制を受けない。金融政策、資本政策からも自由だ。その結果グローバル・リスクからの避難場所として最適だ。

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さらに重要な点はデジタル資産は現代、つまりデジタル情報が重要となった時代にこの上なく適合する。デジタル資産を可能にすyるブロックチェーン・テクノロジーは現行の金融システムを根底から揺るがす可能性がある。それはもっと透明性を高め、効率化され、誰にも利用できるものにならなければいけない。

この1年を振り返ると、第1四半期はblockchainをベースとするスタートアップへの投資の総額は10億ドルという巨額となった。しかしこの投資の勢いは後退した。

2016年の1月から9月まで、, blockchainスタートアップは4億2900万ドル92回の株式発行によって調達した。これを2015年の同期と比較すると件数で16%、金額で7%、それぞれマイナスとなっている。こうした低調さは、すでに市場に影響を与えている。たとえば、先週、Circleは同社のアプリ内でのbitcoinの売買から撤退した。

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これらはつまり「終わりの始まり」なのだろうか?

そうではない。こういう現象は画期的な新しいテクノロジーでは常に予期される。ことにそのテクノロジーが金融システムのような死活的に重要な分野を根本的に変革する可能性があるならなおさらだ。非常に有名になったGartnerのハイプ・サイクルの図で言えば、bitcoinは昨年「過度な期待」のピーク期を通り過ぎたところだといえる。Gartnerによればこの時期には「多数の成功事例が報じられるが、多くの失敗事例もある。この段階で一部の企業は行動を起こすが、静観している企業も多い」。

こうしてblockchainビジネスは「幻滅の谷間」の時期に入った。この時期は「興味が失われる」ことが特徴だとされる。 実験や導入が結果を出せないことが続くからだ。「この時期にこの段階で、ベンダーの多くは失敗して市場から退出する。生き残ったベンダーが製品を改善し、早期採用企業がそれに満足を示した場合にのみ投資が継続される」とされる。生き残った企業には逆に投資が集中することになり、本格的普及期に向かって進む道が開かれる。

これが私の見ている現状だが、来るべき2017年には市場にも変化が起きると予想している。

Gartnerのハイプ・サイクル理論によれば、一部の企業は段階的な改良を目指すが、一部の企業はすべてを自分でゼロから作らず、パートナーと提携するなどの戦略的な行動に出る。一部の企業は燃え尽きる。

しかしラディカルなイノベーションは現状を段階的な改良することによってもたらされることはない。本当のイノベーションはグローバル化という現代の状況に適合したまったく新しいシステムの構築を必要としている。blockchainに関していえば、2017年、またその後に来るのがこの時期だと私は考えている。

画像: Day Donaldson/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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