フェイスブックがClubhouseとInstagram Liveを合わせたようなQ&A製品Hotlineのテストを開始

Facebookの国際的研究開発グループであるNPEチームは、米国時間4月7日、Hotline(ホットライン)の最新テスト版をローンチし、公開ベータテストを開始した。これは、Instagram Live(インスタグラム・ライブ)とClubhouse(クラブハウス)を足して二で割ったようなウェブアプリだ。クリエイターがオーディエンスに話しかけることができ、オーディエンスはテキストか音声でクリエイターに質問できる。しかし、Clubhouseと違い音声のみに限定されることはなく、クリエイターが望めばカメラをオンにできる。

不動産投資家Nick Huber(ニック・フューバー)氏が、4月7日、米国東部標準時間午前10時から初めて公にこれを使ったライブ配信を行った。Facebookは、プロのスキルを広めたいクリエイターを後押してくれる人をHotlineの協力者として求めており、ヒューバー氏はその代表だ。同氏は、そのプロのスキル、副収入源としての工業不動産投資の話をした。

Facebookでは、HotlineはEric Hazzard(エリック・ハザード)氏が率いている。ハザード氏は、自ら開発したアプリtbhがFacebookに買収されると同時に同社に加わった。tbhは、わかりやすさを重視したQ&Aアプリで、エグジット前の9週間でアクティブユーザー数を250万人に伸ばし、質問への回答の投稿は10億件を上回った。Hotlineで、ハザード氏は再びQ&Aスペースで製品開発を行うこととなった。

だが今回の新開発アプリは、新進気鋭のソーシャルネットワークClubhouseの影響を受ている。実際、Hotlineのユーザーインターフェイスは、ClubhouseやTwitterのSpaces(スペース)といった音声のみのソーシャルネットワークを使ったことのある人なら、モバイル機器で開いたときに、どこかで見た感じがするはずだ。モバイルの画面のトップ(デスクトップ版は左側)には、イベントのホストが丸いプロフィールのアイコンやライブ配信映像が表示されるスピーカーセクションがある。画面下部(デスクトップ版は脇)には、イベントのリスナーが現れる。

しかしHotlineには、Clubhouseなどの既存アプリとの相違点がいくつもある。

画像クレジット:Facebook

たとえばリスナーのセクションでは、見ているだけの人(プロフィールアイコンで表示される)と、質問をする人とが分けられている。このセクションの上部には、ユーザーからの質問の一覧が示され、見ている人はそれぞれに支持票、不支持票を投じることができる。クリエイターはそれを見て、次に対応すべき質問を選べる。また、質問者をステージに引っ張り上げて会話することもできる。

現段階では、ユーザーは質問を打ち込んで、自分の番になったら「ステージ」でホストと合流できるようになっている。今のところ、ゲストはプロフィールアイコンで表示され、ステージでは音声のみ。設定にはリスナーが映像を有効にできるオプションがあるが、今回のテストでは機能していない。

質問が入ると、ユーザーは拍手、炎、ハート、笑い、驚き、親指サインの絵文字でリアクションできる。

画像クレジット:Hotline

ホストは、イベントの全管理権を握る。質問の順番待ちリストから不適切なものを削除したり、イベントから人を追放したりが許される。初回のテストにあたっては、Facebookの従業員がモデレーターを務め、Facebookのコミュニティ規定利用規約データに関するポリシーNPEチームの補足条項に違反する人間を排除することになっている。

もう1つ、HotlineとClubhouseの注目すべき違いに、Hotlineではイベントが記録されるという点がある。

現在、Clubhouseでは、ユーザーは会話の記録や録音はされないとた知っているため、気楽なおしゃべりが楽しめている(ホストがルームのタイトルに記録の旨を示していない場合に限る)。こうすることで、参加者は安心して自由な会話ができるというのが、Clubhouseの方針だ。しかしHotlineでは、自動的に録音録画が行われる。イベント修了時、ホストにはMP3とMP4の2つの形式で記録ファイルが送られる。クリエイターは、これをYouTubeやFacebookなど他のネットワークで公開したり、編集で短く詰めてTikTokなどのアプリに使ったりできる。音声はポッドキャストなどに利用することも可能だ。

ローンチ時点では、Hotlineには誰でも無料で参加できる。オーディエンスの人数に制限はないが、実験が進むにつれて変更される可能性もある。

Clubhouseとの類似性はあるものの、Hotlineには、映像、テキストベースの質問、投票方式を導入したことで、また記録がされることで、雰囲気は異なる。気楽な溜まり場というよりは、専門家が進行し、オーディエンスの質問を受けるというプロフェッショナルなイベントの雰囲気だ。

Hotlineは、NPEチームがクリエイターの世界に向けて、音声と映像を使ったさまざまなアイデアの実験としてローンチしたアプリの1つに過ぎない。同チームでは、Cameo(カメオ)に似たSuper(スーパー)のテストを続行する。これはクリエイター向けの完全な映像ウェブアプリだ。音声のみのアプリCatchUp(キャッチアップ)のテストも以前に行っていたが、2020年中止した。Venue(ベニュー)とい名で知られていた別のQ&A製品もあった。これは、ライブイベント用のTwitterによく似たコンパニオンアプリだ。最近では、TikTok風の動画アプリCollab(コラブ)とBARS(バーズ)もローンチしている。前者は音楽、後者はラップのコラボを行うものだ。

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NPEチームのプロジェクトは、時間とともに、必ずしも独自の独立したアプリを作り出すことではなくなってきたが、十分な人気を獲得できたなら、その可能性は残る。だが、これらのテストと実験から学んだことには、Facebookの今後の製品開発に活かされ、Messenger RoomsやFacebook Liveといった既存の製品の新機能の構築に役立てられるという、もっと大きな意味がある。

Facebookは、Hotlineのローンチに関して公式な発表は行っていないが、今回のテストに関する声明を出している。

「Hotlineでは、専門家が自分で事業を構築してきたときと同様に、人々が専門家からプロのスキルなどの知識を学べるよう、インタラクティブなライブのマルチメディアQ&Aをどう役立てたらよいかを見極めたいと思っています」と広報担当者はいう。「New Product Experimentation(NPE、新製品実験)では、CatchUp、Venue、Collab、BARSといったマルチメディア製品をテストしてきましたが、これらのフォーマットが今後も人と人をつなぎ、コミュニティを構築する一助になれることを知り、勇気づけられました」。

Hotlineは、Clubhouseに対抗するFacebookの唯一の策ではない。Messenger Room内で使えるClubhouseのライバルも開発中だと、Facebookは認めている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookClubhouse音声ソーシャルネットワークNPE

画像クレジット:Facebook

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(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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