Crew Dragonテスト成功でSpaceXはNASA初の有人民間宇宙飛行事業者へ


既報のとおり、SpaceXとNASAは極めて重要なミッション「Demo-2」を成功させて、宇宙飛行の新たな歴史を作った。SpaceXのCrew Dragon宇宙船は初の有人飛行を無事完了したのだ。NASAの2名の宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏は5月30日に軌道上国際宇宙ステーション(ISS)に到着し、約2か月間実験などに従事したのち無事に地球に帰還した。

Crew Dragonは当初の計画どおりに全任務を進めることができたようだ。打ち上げ、ISSへのドッキング、逆噴射による衛星軌道離脱、完全自動操縦により着水という重要なステップを予定どおり実施し、何より重要なことだが、すべての段階で2名の宇宙飛行士の安全を確保できた。

今回のミッションの最終段階はベンケンとハーリーの両飛行士を乗せたCrew Dragonをメキシコ湾にパラシュートで着水させ、ゴーナビゲーターと呼ばれるSpaceXの回収船に引き上げることだった。このプロセスは米国東部時間午後3時18分(日本時間8月3日午前5時18分)にスムーズに完了した。その後、午後4時ごろにカプセルのハッチが開かれ、4時6分に両宇宙飛行士が姿を現した。

周辺には多数の民間船が見物のために集まっていた。これは航行禁止区域の違反でセキュリティー上の問題なのだが、SpaceXは制止線を作って作業を続行した。ともあれこの状況では他に方法はなかっただろう。

今回の飛行が成功したことで、Crew DragoとFalcon 9ロケットをNASAの正規の基準により商用有人宇宙飛行システムとして認証する準備がすべて整った。ただし最終的な認証決定までには今回の飛行に関する情報をすべて詳細に審査し、解決を要する何らかの問題が残っていないかチェックする必要がある。我々が中継で見た限り、Demo-2は終始絵に描いたように順調に作業が進んだように思われるので、NASAの認証を得るための困難は大きくないだろう。もうひとつ記憶すべき点は、これが45年ぶりの有人着水だったことだ。前回の着水は1974年のSkylabの最後のクルー(NASAプレスリリース)だった。

Crew Dragonが進むべき次のステップは宇宙ステーションへの往還における米国の主要手段となることだ。次回からは本番任務となり、Crew-1と呼ばれる。スケジュールとしては9月中が予定されており、NASAの宇宙飛行士と日本の宇宙開発機関であるJAXAの星出彰彦宇宙飛行士がISSへ向かう(JAXAプレスリリース)。

これによってNASAは2011年のスペースシャトルの退役以後失っていた自国(および友好国)の宇宙飛行士を自力で宇宙ステーションに往復させる能力を取り戻す。ただしこれは商用クループログラム(Commercial Crew program)とう名前が示すとおり、スペースシャトルの際のようにNASAが打ち上げから機体運用まですべて単独で実施するものではなく、あくまで民間企業との協力によって行われる。全ミッションを完了したのはSpaceXが最初となったが、ボーイングもNASA向け商用宇宙飛行の実施の2社目となるべく準備を進めている。

NASAは将来にわたってISSへのアクセスを確保したい意向だ、また宇宙産業育成の資金とするためにできるかぎりコストを節約したいのでCrew DragonもボーイングのStarlinerも有料の乗客のための席を確保している。SpaceXはすでにCrew Dragonによる宇宙往復(ISSには滞在しない)旅行のチケットの予約を取り始めている。Dragonカプセルは最大7名の収容能力がある。NASAはこのうち4席のみを予約している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook