ブランドと店舗をつなぐ卸・小売のプラットフォーム「SpaceEngine」を展開するスペースエンジンは2月3日、CoralCapital、KVP、Plug and Play Japan、数名の個人投資家よりシードラウンドで総額約1億円を調達したことを明らかにした。
SpaceEngineはD2Cブランドやオンラインで商品を扱っているメーカー(サプライヤー)の“オフライン進出”を支援するプラットフォームだ。最近では成長中のD2Cスタートアップが実店舗を開設する例も増えてきているけれど、同サービスはさまざまな店舗とマッチングすることで、サプライヤーがより手軽に自分たちの商品を店頭で販売できる点が特徴だ。
サプライヤーはSpaceEngine上に登録されている多様な店舗から、自分たちの商品を売って欲しいところを検索。商品の価格や納品数、販売期間を指定した上で委託販売形式にて商品の販売依頼を送る。店舗側が承諾すればマッチング成立となり、実際に商品を送って店頭で販売してもらえる。
ブランドにとっては自社店舗やポップアップを構えるのに比べてハードルが低いのがメリット。このサービスを使えばECで商品を売るように、手軽に実店舗にチャレンジできる。継続的に店頭販売に取り組むために活用するのはもちろん、テストマーケティング感覚で単発利用するのもありだ。一方の店舗側は委託形式なので、仕入れのリスクなしでユニークな商品を扱える。
実際に商品が売れた場合には35%が店舗の収益、15%がSpaceEngineの利用料となり、残りの50%がブランドの元に入る仕組みだ。
SpaceEngineには2019年5月のリリースから8ヶ月で3600のサプライヤーと800店のリアル店舗が集まり、登録商品も6万4000点を突破した。サプライヤー側は個人のクリエイターや小規模なブランドに加えて大企業のD2CやスタートアップのD2Cブランドなども参加。昨年10月にBASEと連携したことも登録数の増加に繋がったという。
「最近ではプロユーザーが増えてきた。たとえば化粧品や飲料、家電といったジャンルの大企業のD2Cブランドに使っていただいたり、食品や化粧品などを手がけるD2Cスタートアップだったり。先日Allbirdsが日本に進出して話題になったが、成長中の海外D2Cブランドが日本で商品を売る目的で問い合わせをしてくるケースもある」(野口氏)
登録店舗は紀伊國屋書店、メガネスーパーなど大手チェーン店から、アパレルや雑貨屋、美容室、ネイルサロン、カフェなど幅広い。最近ではシンガポールやタイに店舗を持つユーザーも出てきているそうで、これが増えてくると「ブランドが自分たちの商品を海外の実店舗で売ってもらう」といった体験もできるようになる。
すでに海外では同様のマーケットプレイスを展開するFaireが急成長中。2017年設立の同社は昨年1.5億ドルを調達し早々とユニコーン企業リストに名を連ねた。日本だとラクーンホールディングスが運営する「スーパーデリバリー」が近しいが、既製品を中心に様々な商品を揃え、安く仕入れられる場所という色が強い。
スペースエンジンとしてはFaireと同じく、オンラインブランドを中心にユニークな商品を扱うメーカーやクリエイターを集め、そういった商品を扱いたい店舗とマッチングすることで事業を拡大していく考えだ。
サプライヤー側に関してはBASEと同様、他のECプラットフォームとの連携を進めながら良質なブランドを獲得する計画。店舗側もPOSレジサービスや店舗インフラ系企業との提携を増やし、店舗数の拡大を目指す(既にスマレジと提携済み)。
今回の資金調達はそれに向けた組織基盤の強化や人材採用への投資が主な目的。春頃を目処に、店舗からサプライヤーの商品を検索して仕入れられる「卸売マッチング機能」の追加などを含めたアップデートも予定しているという。
「これまではサプライヤーから店舗へ委託販売のオファーが出せるサービスだったので、店舗側は申し込みが来なければ登録しても商品を販売できず、一方通行になっていた部分もあった。既存ユーザーから『自分たちから商品を仕入れて販売したい』という声もたくさん頂く中で、店舗が自ら積極的にアクションできるような仕組みを取り入れ、卸・仕入れのマーケットプレイスとしてさらに進化させていきたい」(野口氏)
スペースエンジンは2018年5月の設立。これまでエンジェル投資家からの出資や金融機関からの融資により数千万円規模の資金調達を実施しているが、VCからの調達は今回が初めてとなる。
なお同社はTechCrunch Tokyo 2019 スタートアップバトルのファイナリストの1社だ。