DeNAがキュレーション事業加速、MERYとiemoのノウハウ注入で「食」分野に進出

10月1日に女性向けファッションまとめサイト「MERY」と住まいに特化したまとめサイト「iemo」を運営する2社を約50億円で買収し、キュレーション事業に参入したディー・エヌ・エー(DeNA)。次なる展開は「食」をテーマとしたキュレーションサイトだ。

12月19日に正式公開した「CAFY(カフィー)」は自宅で手軽に作れるレシピなど、食に関するテーマの情報を紹介するサイト。レシピに加えて、「クリスマスの厳選スイーツ9選」や「ホームパーティーを華やかに演出するテーブルウェア7選」など、食卓に関するリスト記事が多い印象だ。

すでに掲載されているコンテンツの一部は、外部のライターが有償で執筆したもの。今後はMERYやiemoと同様に、一般ユーザーに無償で投稿してもらう。隙間時間にスマホで雑誌をめくるような感覚で見てもらうコンテンツを充実させていく方針だ。

「50億円効果」で買収から2カ月でローンチ

コンテンツ以外で特筆すべきは、サイト立ち上げの早さだろう。CAFYはMERYを運営するPeroli、iemo、DeNAの3社連携によるサービス。10月の買収直後からDeNAのメンバーを中心にチームを発足し、それからわずか2カ月あまりでサービス開始に至っている。

具体的な連携効果としては、CAFYのターゲットでもある主婦層向けの記事を手がけるiemoが、主婦に受けがいいコンテンツの編集方法を助言するとともに、人材面でもディレクターを派遣。Peroriはサイトの見せ方をアドバイスするなど、開発面で協力している。実際にCAFYはMERYのサイト構造を移植したかのようにも見える。

「iemoとMERYが1年かけて踏み固めてきたことを端的に注入している。iemoは1年で150万MAU(月間アクティブユーザー、9月時点)、MERYは1年半で1200万MAU(同)と急成長カーブを描いているが、両社のノウハウがあればさらに短期間で成長するのでは」(iemo代表取締役CEOの村田マリ)。ノウハウについては「企業秘密」とのことだが、これを獲得するためにDeNAは約50億円で両社を買収したと言えそうだ。

激戦区のグルメ分野キュレーション、勝算は?

DeNAはCAFYによって、読者層が大きい衣食住すべてのジャンルを網羅することになる。ただ、iemoとMERYの成長の背景には、圧倒的競合が不在たったことがあるのも事実だ。グルメ分野では食べログが「食べログまとめ」、ぐるなびが「メシこれ」、クックパッドが「クックパッドニュース」を展開するなど、すでにネット大手が参入済み。ほかにも堀江貴文プロデュースの「テリヤキ」「マカロニ」といったサービスもある。

食ジャンルのキュレーションは激戦区と言えそうだが、村田マリは勝算をこう語る。「食べログやぐるなび、クックパッドは自社サイトの集客のために事業をやっている。それに対してCAFYは、iemoとMERYが成長してきたように、メディアとして読者が求めるコンテンツを作る意識が強い。ユーザーの隙間時間を獲得できるメディアを目指している。」

左からPeroli中川綾太郎氏、DeNA牛尾正人氏、iemo村田マリ氏

外部コンテンツとの提携で著作権対策

ところで、キュレーションメディアで問題になりがちなのが著作権(パクリ)だ。実際、MERYは一部のコンテンツでは、外部サイトの画像や文章を無断転載した事例もあったりする。著作権的にグレーだとしても、上場企業であるDeNA傘下となると、これまで以上にコンプライアンスの風当たりが強くなってきそうだ。

この点について、DeNAでキュレーション事業を率いる牛尾正人は、「新しいサービスなので想定外のことが起きるかもしれないが、社会のコンセンサスを得ながら進めるしかない」と説明する。その一環として外部サービスと提携し、各社のコンテンツをMERYやiemo、CAFYの記事に「お墨付き」で利用できるようにする。第一弾としては「レシピブログ」「Snap dish」「ミイル」と提携する。

キュレーションサイトで国内最大級のアクセスを誇るNAVERまとめでも、サービスの成長に伴い、著作権侵害が指摘されるようになった。NAVERまとめは人的なチェックだけでなく、ゲッティイメージズやAmazon.co.jp、食べログなどと提携し、無許諾で各社が指定するコンテンツを記事に利用できるようにしてきたが、DeNAも同様にキュレーションの著作権対策を強化する動きを見せている。

「めちゃくちゃ美しいM&A」

DeNAが2社を買収した10月以降、各社の間では活発な交流が続いているという。買収当時、社員数が8人だったiemoは、DeNAからの出向で20人に拡大。Peroriも買収当時12人だった社員が倍増している。さらに、専属ではないが、広告営業や採用、マーケティング業務もDeNAが担当していることから、「一気に組織がスケールした」と村田マリは振り返る。

組織がスケールしたことで、iemoは「マネタイズの本丸」(村田マリ)でもある、建築家やリフォーム、インテリアメーカーなどの事業者とユーザーのマッチングを前倒しできると、DeNAとの相乗効果を語る。同様に、MERYも記事で紹介した商品を購入できるECによる収益化を早期に実現できるようになりそうだ。

「DeNAの出向社員は、配属の初日からスペシャリストとして働いてくれた。数億円を調達したスタートアップでも、こんな短期間でDeNAクオリティの人材はそうそう獲得できない。その恩返しとして、iemoとMERYのようなスタートアップからDeNAにノウハウを提供できたのは、めちゃくちゃ美しいこと。一般的に『M&Aはうまくいかない』と、うがった見方をされやすいが、うまくやってやろうって思う。」(村田マリ)


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TechCrunch Japan

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