先月、上場準備中であることを発表したDropboxは、今日(米国時間3/12)、証券取引委員会に提出したS-1書式をアップデートし、売出し価格を改定した。DropboxはNasdaqに上場して1株当たり16ドルから18ドルで3600万株を売り出す。18ドルの場合、売却総額は6億4800万ドルとなる。ティッカーシンボルはDBXが予定されている。
またDropboxは新たなインテグレーション・パートナーとなったSalesforceに対して株式で1億ドル分を売却すると発表した。時期は上場の直後で、1株当たり価格は「上場売り出し価格に準じる」という。
上場の正確な期日は明らかにされていないが、今月末となるはずだ。
上場時のDropboxの時価総額は上場プレミアムを考慮すると70から80億ドルになるとみられる。 これはテクノロジー企業として昨年のSnap以来の大型上場となる。しかしDropboxが2014年に3億5000万ドルのベンチャー資金を調達した際の会社評価額、100億ドルには届かない模様だ。
Dropboxはその将来性と共に上場が他のテクノロジー系大型上場のいわば風見鶏となるものして各方面から注目されている。この中でSpotifyはすでに上場を準備中だが、Airbnbのように上場に関してまだ何も発表していない大型スタートアップもある。
もちろんDropboxのようなクラウド・ストレージと宿泊の共有経済(Airbnb)や音楽ストリーミング(Spotify)では全くビジネスモデルが異なるので比較は無理だという意見もある。特にSnapが上場後大きな株価下落―30%以上―によって投資家に手痛い損害を与えたことを考えればDropboxの上場にも慎重にならざるをえないかもしれない。
しかしプラスとして、Dropboxはクラウド・サービスというコンセプトを一般ユーザーに拡大したパイオニアだという点が考えられる。モバイルの急速な普及、端末アプリの軽量化、インターネット接続の高速化といった要素によりユーザーがデータをローカルデバイスから追い出ししクラウドに保存する傾向が一気に強まった。これらのトレンドを追い風として、現在Dropboxには180カ国以上に5億人のユーザーがいる。
マイナスの面は、この5億人のうち、有料メンバーが1100万しかいないという点だ。2017年の売上は11億ドルと発表されている。これは216年の8億4500万ドル、2015年の6億400万ドルから十分にアップしているものの、依然としては利益を出すまでに至っていない。2017年の赤字額は1億1200万ドルだった。
ただし2016年の赤字額は2億1000万ドル、2015年は3億2600万ドルだったから大きく改善されている。しかしDropboxには無料ユーザーを有料ユーザーに転換するための効果的なプランがあるのかというのは重要かつ緊急性の高い疑問だ。これは黒字化を待つために投資家はどれくらいの期間忍耐を続けられるかという問題と関連する。
この点、Salesforceが自社サービスにDropboxをインテグレーションすると同時に1億ドルを出資するというのはこの上ない信任投票といえるだろう。またDropboxが設定した上場売り出し価格が控えめであることも信頼性を高めている。Salesforceは顧客関係管理をクラウド化するサービスだ。ティッカーシンボルをCRMとしてもいいくらいだし、ロゴにはブルーのクラウドがあしらわれている。スタートアップから出発して現在は確固たる大企業の地位を築いている。
SalesforceがDropboxと密接な関係を築くことになったのは短期的にDropboxのビジネスモデルにとって有利な材料なのはもちろんだが、中長期的にはDropboxにイグジットの可能性を与えるかもしれない。Salesforceはクラウド・ストレージ・サービスにおいて重要な地位を築こうと年来努力してきた。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)