Facebook、Messenger Broadcastsのテスト開始――スモールビジネス向けチャット広告ツール

ユーザーにはありがたくない話かもしれないが、Facebookは独自のボットを作成するリソースがないスモールビジネスでもセルフサービスでメッセージ広告を送れるようになるシステムのテストを開始した。

昨年11月、TechCrunchは FacebookがMessengerで会話したことのある相手に対して企業が広告メッセージを送信できるMessenger Broadcastというシステムのプロトタイプを社内で開発したことを報じた。FacebookではいよいよMessenger Broadcast Composerと呼ばれるメッセージ作成ツールを社外でテストする準備が整ったようだ。当面このツールを利用できるのはアメリカ、メキシコ、タイの企業ページのごく一部となる。

現在ツールの利用は無料だが、FacebookのMessengerプロダクトの広報担当者に取材したところでは、無料利用は一定期間に限られるという。将来は企業向け有料サービスとなる。Messengerは企業によるスパムを防ぐため、投稿数に上限が設けられている。またすでに企業にメッセージを送って会話を開始した相手以外に無差別にメッセージを送信することは禁止されている。それでもテクノロジー面の能力に欠けたスモールビジネスが低品質のメッセージを大量に送信することがあり、これはユーザーをいらだたせることとなっている。

一方、Facebookは13億人のユーザーを抱えるまでに成長したMessengerを収入源の一つに育てる方策を探していた。もちろん企業がチャットを利用する場合でも合理的な使い方はある。カスタマーサポートの電話口で延々と待たされることはよくある。それよりMessengerですぐに回答がもらえるほうがずっとよい。しかしディスプレイ広告が表示され、大企業が広告メッセージを流せるようになったMessengerに今度はスモールビジネスまでがBroadcastsツールで参入する。運用をを誤ればFacebookのチャット・サービスは新たなスパムの温床とみなされかねない。

Messenger Broadcast Composerを利用するにはプログラミングの知識は一切必要ない。スモールビジネスはこれまでにメッセージを送ってきたユーザーのリストから条件に合った対象を選び、広告メッセージのタイトルと本文、画像を入力する。ユーザーに望むアクションに応じて、ウェブサイトに呼び込みたいのであれば、ボタンにURLを設定する。またユーザーが選択して回答できるように定形文を作成することもできる。

上のスクリーンショットはMessenger Broadcastのプロトタイプ。現在利用は無料だが、Facebookによれば将来は有料になるという。

利用者はメッセージを送ってきた消費者を「靴に興味あり」といった具合に手作業でタグづけして分類する必要がある。 靴の広告であればこのタグがついた相手を選んで送信することになる。無料試用期間の後、どういう料金体系になるかだが、おそらく広告を送信する相手に数に比例することになるだろう。プロトタイプの場合、一定数のユーザーへの送信は無料といいう条件がついているので将来は料金を支払えばもっと多くのユーザーにメッセージを送れるようになるに違いない。

Facebookの担当者によれば、消費者は店舗や商品に関する問い合わせやカスタマーサービスなどの必要がある場合にMessengerを使ってスモールビジネスと会話する傾向を強めているという。2017年には3億3000万人がMessengerからスモールビジネスにメッセージを送っているということだ。Facebookの担当者によれば「しかしフィードバックによれば、スモールビジネスにはMessenger Platformを利用して自動的に返信メッセージを送るボットを開発するリソースやノウハウがない場合が多く、そのため消費者からのメッセージのすべてに回答することが困難になっていた」という。

Facebookがボット開発プラットフォームを公開したのは2016年4月だが、これはいささか早まった決定で開発や運営に必要なツールの多くを欠いていた。Facebookでは現在もこうしたツールを開発中だ。たとえば、会話相手のユーザーの 連絡先を収集するツールが最近追加された。.しかしピザハウスや衣料品のブティックなど地域のスモールビジネスにとって独自のボット開発というのはハードルが高すぎた。消費者からのメッセージにはやむなく個別に手作業で返信していたという。

「われわれがBroadcast Composerを開発したのはそういう背景がある。消費者がFacebookページの運営者にメッセージを送ってきた場合、その全員あるいは一部に対してページのインボックスから即座に返信できるようにするのが狙いだ」という。

FacebookのニュースフィードもSnapchatも企業がセルフサービスで広告を出稿できるツールやAPIを整備してからビジネスが飛躍的に伸びた。有力ブランドは社内リソースや代理店を経由して大量の広告を掲出している。これに取り残されていたスモールビジネスはBroadcast Composerによってセルフサービス広告が出せるようになる。もともと消費者と親密な関係を築いていた近隣店舗などが大きな便益を得られるのは間違いない。ウォルマートやナイキからメッセージがくればどうせ広告だと考えてしまうが、通りの先の店からメッセージが来れば、広告である点は同じでもずっと親しみが持てるものになる。ただしそのためにはスモールビジネス側にカジュアルかつ対話的な態度が欠かせないだろう。

Facebookのチャットサービスの将来像に関しては、Bloated Facebook Messenger plans to simplify in 2018参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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