Facebookは、米国時間9月25日、映画「レディ・プレイヤー1(Ready Player One)」に出てくる「オアシス(Oasis)」のようなVR世界を、独自に構築中であると発表した。それがFacebook Horizon(ホライズン)だ。サンドボックス化された仮想現実の世界で、その中にユーザーが独自の環境やゲームを構築できるもの。そこで友達と遊び、交流したり、他のユーザーが造成した地形を探索したりすることができる。つまり、ネット上の仮想世界、Second Life(セカンドライフ)のFacebook版のようなものだ。
Horizonは、2020年初頭に非公開ベータとして開始される予定となっている。ユーザーは、自分を表すアバターを自由に作成し、Telepods(テレポッド)と呼ばれるポータルを使って、仮想の地域を行ったり来たりすることができる。また映画を観たり、友達といっしょにいろいろなメディアを楽しんだり、「Wing Strikers」といったマルチプレーヤーのゲームで遊んだりすることも可能。Horizon Locals(地元住民)という人間のガイドもいて、ユーザーを支援してくれる。VRの世界での安全を守り、荒らしがはびこらないようにする。
早期アクセスを希望するユーザーは、ここからベータ版に申し込むことができる。
Horizonの立ち上げにあたってFacebookは、既存のソーシャルVR体験、Facebook Spacesと、Oculus Roomsを、10月25日に閉鎖する。Horizonが利用可能となるまでは、多少のブランク期間が発生する。Oculus Roomsは、ユーザーが自由に模様替えを楽しめるVRの貸室として、2016年に登場した。一方のFacebook Spacesは、2017に公開され、ユーザー同士がチャットしたり、映画を観たり、友達とVRの自撮りもできるようなもの。しかしいずれも、多少のソーシャル機能を備えたロビーの待合室のように感じられるもので、その先に控える本格的なVRゲームへの入り口に過ぎないもの、という雰囲気は拭えなかった。そうしたものとは対照的に、Horizonは目的地であり、単に目新しいだけでなく、ユーザーが長い時間を過ごすことができる場所として設計されている。
Facebook Horizonの仕組み
一見した範囲では、HorizonはSecond Lifeを近代化したもの、一人称のSims(シムズ)、AltspaceVRが意図していたものを成就させるもの、あるいはプレステのPSVRを利用したDreamsや、子供にも人気のクロスプラットフォームのRobloxと競合するもの、と考えられる。2016年にFacebookは、Oculusの新しい従業員全員に、「レディ・プレイヤー1」の小説を配っていた。それ以来、彼らはその世界の構築に熱心に取り組んできたようだ。
Facebook Horizonは、ある町の広場に集められた状態からスタートする。そこに足を踏み入れる前に、ユーザーは、かなり広範囲をカバーする何でもアリのアバターツールを使って、自分の容姿や服装を自由に設定できる。ユーザーは、VRの内部でHorizon World Builderを使って、ゲームの競技場、休暇で行く隠れ家などを作ったり、そうした場所で可能な活動を定義したりできる。いずれもプログラミングは不要だ。
たとえば、熱帯の海に浮かぶ島を設計し、友人を招待して、仮想のプライベートビーチでいっしょに過ごすこともできる。Oculusにもあった彫刻機能、Mediumに似たオブジェクトクリエーターを使えば、自分のアバターに着せるカスタムTシャツなど、何でも作ることができる。また、本格的に開発したい人は、ビジュアルなスクリプトツールを使って、インタラクティブに応答する体験を作成することも可能だ。
Horizonの安全性については、Facebookは「市民権」のページを設けて説明している。そこには、「Facebook Horizonの市民として、敬意の持てる快適な文化を創り出す義務があります… Horizonの市民は友好的で、開放的、そして好奇心も強いのです」と書かれている。Horizon Localsは、VRの世界を歩き回っていて、質問に答えてくれたり、技術的または安全上の問題がある場合には、ユーザーを支援してくれる。彼らは、顧客サポートでもあり、また世界の治安部隊でもあろうとしているのだろう。
万一、ちょっと手が付けられないような状態になってしまったら、シールドボタンをタップして中断し、Horizonと並立するプライベート空間に閉じこもることもできる。ユーザーは、自分用の個人的な空間の境界を定義できる。その中には、他の誰も顔を出したり、踏み込んだりすることができない。そこでは、黙秘、遮断、報告といった一般的なツールがすべて利用できる。Facebookが、コミュニティの風潮の大筋を定義し、こうした保護機能も用意したことは、賢明な措置と言えるだろう。
Facebook CEO、マーク・ザッカーバーグ氏は、米国サンノゼで開催されたOculus Connect 6カンファレンスで、Horizonを発表した。同氏によれば、Facebookとコミュニティが、VRサンドボックスについて、より多くの経験を積むにつれて「Horizonが拡大し、良いものになっていく中で、このような性質を持つことになる」と説明した。
Horizonは、ソーシャルインタラクションを促進することに腐心しているようなビジネスにとっては、まさに意義のあるものだろう。ユーザーがそこに留まった時間に応じて、広告収入を得ることもできる。Horizonの中には、いろいろなブランドの仮想の看板、おもちゃや家具を購入できるFacebook運営のショップ、ナイキの靴やシュプリームのシャツなどのブランド品を扱うサードパーティのモール、などが登場することも容易に想像できる。そうしたものからの収益の分配や、ゲームの世界の利用、特別な惑星の探検などが可能となるサブスクサービスの収入が、Facebookを潤すことになる。
Facebookも、市場に登場してから15年が経過し、新鮮味もだいぶ薄れてきた。ユーザーも新たな社交の場を求めている。多くのユーザーは、Facebook上での近況のアップデートや、しらじらしいライフイベントには見切りを付けている。きれいな写真が並ぶInstagramや、しがらみのないSnapchatの方に引き寄せられているのだ。Facebookは、もしSpacesに替わる独自のVR機能が開発できなければ、脇に追いやられる危険もあった。Horizonが、ユーザーが現実の生活から逃避でき、友達と自分の生活を比較して妬んだりする必要のないVR世界を提供できれば、Facebookに飽きてしまったり、窮屈さを感じているユーザーにアピールするはずだ。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)