Facebookがさきほど発表した新機能はビデオの視聴方法を大きく変えそうだ。これまでビデオを見るといえば、そのうち面白くなるだろうと期待して我慢して退屈な画面を見続けたり、忍耐が続かず再生バーで先の方をこっそり覗いて興味ある場面を探したりするのが通例だった。しかし見た目があまり変わらないビデオや画面に向かってホストが話すタイプのビデオの場合、時間を費やして見る価値があるのかどうかを判断するのが非常に難しかった。
しかしFacebook Liveのビデオの場合、システムはどの部分が人気を集めたかを知っている。何か興味を引く場面になると視聴者はライブでコメントしたり絵文字を投稿したりできるからだ。Liveビデオの放映側もこの反応を見ることができる。Facebook Liveのライバル、Periscopeも同様の機能を実装した。
Facebookにインタビューしたところによると、タイムラインで再生されるビデオを一層効果的なものにするために視聴者の反応のボリュームを表示できるるようにしたという。今回の新機能で、Facebook Liveのどの箇所でどれだけの反応が集まったたかが一目で分かるようになった。録画されたクリップの再生バーに視聴者のリアクション量がオーバーレイ表示されので、興味ある場面に直接ジャンプすることもできる。
要するにビデオのどこが評判になったかがすぐ分かり、時間がなければそれ以外の部分をスキップすることができる。
この機能は逆にライブビデオの放映者側にも影響するだろう。アマチュアのストリーム放映者がビデオをわかりやすくし、テンポを速くめるなどの好影響をもたらすだろう。しかし同時に放映者は視聴者が飽きて切り替えるのをおそれてじっくり話をするのが難しくなるかもしれない。
再生バーがエンゲージメント・グラフになる
Facebookビデオの責任者、Fidji Simoは私のインタビューに対し、「Facebook Liveビデオの視聴時間の3分の2は、録画の再生だ。つまりユーザーはたとえライブの場で視聴ができなくても、ライブ放映されたビデオを好む」と語った。これがFacebookの真似といわれながらもPeriscopeが#Saveという録画機能を新設した理由だろう。
Simoはまた「Facebookユーザーが録画されたライブビデオを見る場合、再生バーに視聴者の反応をオーバーレイ表示するエンゲージメント・グラフ化はビデオのハイライト部分を探すために非常に役立つ。これまでビデオは退屈だとして敬遠していたユーザーもこうしたツールが用意されればビデオ視聴の時間を増やすはずだ」と説明した。
Facebookによると、再生バーのエンゲージメント・グラフはすでに一部のユーザーに公開済みだ。この記事のトップのスクリーンショットで分かるように、再生バーはブルーの波型の表示に変わり、視聴者の反応のボリュームを示すようになっている。視聴者は再生ボタンをスクラブして動かし、反応が少なかった部分をスキップして直接ピーク部分を再生することもできるようになった。FacebookではLiveビデオを録画再生する場合でも絵文字や「いいね!」(「ひどいね!」等も含む)をライブ・ストリーミングの際と同様に表示するとしている。
再生バーに情報を表示する例としては下のスクリーンショットのように、SoundCloudで再生音楽の音量を表示する例が遠い従兄弟に当たるだろう
Simoによると再生バーのエンゲージメント・グラフ化はライブビデオに限られるという。「われわれは〔新機能を〕他のビデオに広げる計画はない。これはライブビデオに限って非常に役立つ機能だと考えている」ということだ。
ライブビデオではハイライトの価値が高まる
エンゲージメント・グラフの導入はビデオグラファー側にもいろいろな影響を与えるだろう。ゆっくり時間をとって準備し、クライマックスを盛り上げていくという手法をとりやすくなるだろう。視聴者は再生バーを見て先の方にクライマックスが用意されていることが分かるし、もし急いでいるなら直接その部分を再生できる。ゴールデンアワーのテレビドラマは視聴者が飽きてチャンネルを変えてしまわないよう、CMタイムの前にかならず「はらはらする場面」を入れるように脚本が書かれている。エンゲージメント・グラフ化によってビデオの構成が視聴者によく分かるようになったので、ビデオグラファーは視聴者の関心をかきたてるような面白いシーンを戦略的に配置しておく必要が出てくるかもしれない。
アマチュア・ビデオグラファーの場合、タイムラインで自動的に再生され最初のる数秒は退屈な場面が多い。しかし先の方に面白い場面があるならエンゲージメント・グラフを見ればそれが分かるので、Facebookの友達はビデオを再生してみる気になるだろう。ともかくSimoはそう期待している。
「ライブビデオはライブで見るのがいちばんおもしろい。しかしいろいろな事情でそれは常に可能ではない。われわれは録画の再生であっても、視聴者がその場に居合わせたかのように感じられるようできるかぎり努力している」とSimoは説明する。
しかし同時に、視聴者側の行動も変化し、たとえばクライマックスの箇所を過ぎるととたんに誰も見なくなるというような現象が起きる可能性がある。この先にもう面白い場面はないとわかってしまうと、指がむずむずしてくるだろう。エンゲージメント・グラフによって前方に何があるか予め知れることは、線形的、論理的な場面の積み上げを破壊してしまう。ビデオのフォーマットは芸術的というよりむしろ実用的な方向に傾くかもしれない。
しかしモバイルデバイスを利用したライブストリーミングはまだ非常に新しい分野なので、まだはっきりした形が定まっていない。Facebookのエンゲージメント・グラフがどんな効果をもたらすかも含めて今後の動向を注視する必要がある。
Facebookはビデオの民主化の一環としてタイムラインにライブビデオを導入した。またビデオ作成を助ける各種のツールの提供によってビデオの制作件数が急増している。視聴者側で「面白いビデオ」を選り分ける手段が必要とされてくるのは必然的だ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)