12月にMozillaは、モバイルビジネスのために作ったFirefox OSが軌道に乗らなかったので開発も販売も中止し、今後は物のインターネット(Internet of Things, IoT)方面へ方向変えする、と発表した。ひとつの分野で失敗した組織が、それよりもさらに複雑と思われる別の分野で成功するのか、多くの人が首を傾げたが、Mozillaは同社のIoTの候補リストの中から、最初のいくつかのプロジェクトを公表した。それは、(1)インテリジェントな“パーソナルユーザーエージェント”、(2)クラウドソースによるセンサネットワーク、(3)スマートホームのイニシアチブ、そして(4)IoTデバイスのための音声インタフェイスだ。
Mozillaは、これらのそれぞれがコミュニティのメンバーの取り組みによって開発されテストされることを期待する、と言っている:
(1)
まずProject Linkは、Mozillaの説明では“家の中の各種デバイスと家族がどのように対話しているか、という個人の好みを知って、各人のデバイスやネットワークの利用を自動化するパーソナルユーザーエージェント”だ。
このプロジェクトは最初、FoxLinkと呼ばれていて、基本的なアイデアは、ユーザー個人の好みを学習して、ユーザーが介入しなくてもインターネットに接続されたさまざまなデバイスをコントロールする、というものだ。もちろん人間ユーザーによるコントロールもできる。Mozillがここで追求しようとしているインテリジェンスは、映画Herに出てくるパーソナルアシスタントSamanthaを想起させる。Mozillaによると、このプロジェクトはまだ、きわめて初期的な段階だそうだ。
(2)
一方、Project Sensor Webのねらいは、センサネットワークにクラウドソースなデータを注入して、私企業的でなく、公共的に誰もがアクセスできるようにする、というもの。IBMのWatsonのような私企業的サービスを、そのオープンWeb版として提供するもののようだ。Watsonはご存知のように大量の公的あるいは私的データを私企業の傘の下に集めている。IBMはその取り組みの一環としてWeather Companyを買収したが、Mozillaはそれに対抗するかのように、Sensor WebでクラウドソースによるPM2.5空気汚染センサネットワークを、最初のパイロット事業として立ち上げる気だ。Sensor Webを図解すると、下図にようになる:
(3)
Project Smart Homeは、Apple HomekitとRaspberry Piなどを使うDIY的やり方、という高低二極に対するMozillaの“中道的”な答だ。基本的には、Mozillaが提案するこのプラットホームの上でハードウェアやソフトウェアのメーカーが、自分たちのインターネット接続型ホームデバイスを動かす。なお、これはSensor Webプロジェクトよりも商用色の強い内容のようだ、若干のためらいもあるが:
“人びとは安価で使いやすいスマートホーム技術を求めているが、でも人間生活の日常的な問題の一部は、既製品的なシステムでは解決できない。そういう問題をRaspberry Piなどを使ってDIY的に解決することもできるが、それは多くの人にとってあまりに複雑すぎる”、とMozillaは書いている。“ここには明白なマーケットギャップがある。でも、消費者がそのギャップを本当に填めてほしいと願っているのか、そのへんがよく分からない”。
MozillaによるとProject Smart Homeの次のフェーズでは、今のスマートホームに欠けているものを研究する。併せて、既存のソリューションの限界や制約も調べる。
(4)
最後の第四のプロジェクトはVaaniだ。(1)のLinkがSamanthaのインテリジェンスだったのに対し、Vaaniはそれの声になりたがっている。つまりそれはAmazon Echo的な音声インタフェイスで、デベロッパーは自分のアプリやハードウェアにそれを、ユーザーがそれらとより自然に対話できるための方法としてくっつける。Mozillaによると、最初は家の中の対話からだ。たとえば、“家の中の温度は何度?”とか、“二階の灯りを消して”など。これで、スマート温度計や照明システムが応じてくれるのだ。つまり、そのハードウェアやアプリのための、コマンドやクェリの一(ひと)揃いを実装する。
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ただしFirefox OSはこれまでの実績が良くないから、疑いの目で見る人は多い。Mozillaは自分の長所、すなわちWebブラウザーの技術をベースに、デベロッパーを相手にした方がよい、という声もある。もちろん、今後も得意分野は活かすべきだが、でもせっかく作ったFirefoxOSだから、簡単に見捨てずに、それにできることを究(きわ)めてみるのも、たいへんすばらしいことだ、と私は思う。
IoTはまだ生まれたばかりの分野だから、今あちこちで行われているプロプライエタリな(私企業的な)事業活動とは逆に、あくまでもオープンWebでやってみるのは、決して悪いことではない。