災害救助などの場面を考えると地上走行と飛行が同時にできるデバイスがあれば便利だということは明らかだ。しかし従来のドローンは走るか飛ぶかどちらかしかできないのが普通だった。そこでどちらもできるFlying STARが登場した。メカニズムは呆れるほど簡単なので「今までこれを誰も考えつかなかったのはなぜだ?」と思う読者もいるかもしれない。
イスラエルのベングリオン大学の研究者が考案したFlying STARは、飛行・折り畳み・自動走行ロボットだ。アイディアはローターも車輪も回転するという初歩的な事実に気づいた結果生まれたという。それなら両者を兼用させる手だてがあるのではないか?
実現までにはいくつもの困難があったが、David Zarroukが率いるチームは現代の軽量、強力なドローン部品の助けを借りて空陸ハイブリッドの実現に向けて努力を重ねた。その結果、必要なときには一般のドローンのように空を飛び、着陸した後、ローターを載せた4本のアームを下に曲げ、動力を車輪に伝えて地上を走り出すロボットが完成した。
もちろんドローンの下部に車輪を取り付けてもよかったわけだが、ベングリオン大学のチームのアイディアのほうがいくつも点で優れていた。まず第一に、ローターを駆動するモーターがそのまま車輪を駆動するのでメカニズムがはるかにシンプルで効率的だ。もちろん車輪駆動の場合にはローターの場合よりモーターの回転数を低くする必要があった。しかしアームを下向きに曲げる方式はホイールベースと地上最低高を大きくし、安定性と走破性をアップさせる。不整地を走行する場合に非常に有利になる。
下のビデオでFSTARが空を飛び、着陸し、トランスフォーマーのようにアームを動かして地上走行モードに変身するところを観察できる。これはモントリオールで開幕するIEEEのロボティクスとオーテメーションに関するコンベンション向けに用意された。
Flying STARはごくわずかのエネルギー消費量で毎秒2.43メートル走行し、障害物を乗り越えたり階段を上ったりできる。そしてもちろん空を飛べる。開発チームのリーダー、Zarroukはプレスリリースで以下のように述べている。
我々は地上を走り空を飛ぶこのタイプのロボットについて、利用範囲を広げるために大型版、ミニ版を開発する計画だ。またアルゴリズムの改善とスピード、コストの削減にも取り組んでいく。
見てのとおり、現在はプロトタイプでプロダクト化するまでには数多くの作業が必要だろう。しかし実用化されれば撮影やパッケージ配送などの一般的商業用途に加えて農業用、災害救援用、軍・警察用としても利用できるはずだ。
【Japan編集部追記】地上走行中もデバイスのローターは回転しているので車輪とローターで動力を切り替えることはしていないようだ。正面から見た映像ではローター下部にモーターが設置され、ギアトレーンで回転数を落として車輪に動力を伝えている。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)