Googleがモバイルアプリ開発に利用できる大量のクラウドサービスを提供する。これまでにもGoogleは、2014年に買収したFirebaseによってモバイルアプリ開発専用のプラットフォームとSDKを提供している。しかし今回、Firebaseに数々の新機能が追加され、Googleがもつ他のクラウド・ツールに統合される事によって同サービスが大幅に拡張されることが明らかになった。
本日開催のGoogle I/Oで発表された新しいFirebaseでは、既存のサービスを活用することによって機能の拡張を実現する。これまでのFirebaseは、今は亡きFacebookのParseにどこか似ているものだった。そのどちらも、データベース・サービスやユーザー認証機能、ホスティング・ツールを持つからだ。今回発表された新しいバージョンは、Googleにすでに存在するGoogle Cloud Messagingなどの開発ツールと、Firebaseがもつ新旧のサービスを組み合わせたものなのだ。
Googleは今回のアップデートによって、Firebaseを47万人の開発者たちを抱える統合されたアプリケーション・プラットフォームへと進化させる(Firebaseの買収時は11万人だった)。
今後のFirebaseは、高度に統合された分析サービス機能をもつことになる。Google Analyticsの開発チームによって構築された分析サービスがその例だ。アプリに数行のコードを追加するだけでサービスを実装することができ、ユーザーの基本的な情報をアプリからFirebaseに直接取り込むことが可能になる。それだけではなく、Google Analyticsと同様にアプリ内のパーツと数々のイベントを紐づけることもできる。これにより、ボタンが押された回数や購買行動などを把握することが可能だ。
さらに、Firebaseはこのデータを利用してユーザーのセグメント情報を構築し、ユーザーの行動をより詳細に分析したり、広告キャンペーンの効果を測定したりすることを可能にする。
今回開発チームがFirebaseに導入した2つの新機能では、このセグメント情報が重要な役割を持つ。その1つは、リモートでアプリ内のコンフィギュレーションが変更できる機能だ。これを利用することによってA/Bテストを実施することができるだけでなく、ゲーム内の特定のプレイヤーに制限時間を多く与えたり、アプリ内の購入履歴によって異なるCTA(特定のボタンを表示するなどの行動喚起)を与えることができる。
セグメント情報が活躍するもう1つの機能は、Firebaseの新しい通知機能だ。Firebase Cloud Messagingへの改名が発表されたGoogle Cloud Messagingがこの機能のベースとなっている(この改名は、GoogleにおけるFirebaseブランドの重要度を示すもう1つのサインだ)。GoogleはすべてのFirebaseユーザーに対し、iOS、Android、Webに対応した通知機能を無料かつ無制限で提供する。
セグメント情報と通知機能を組み合わせることで、アメリカやカナダのユーザーには英語の通知を送る一方で、その他の国のユーザーには翻訳された通知を送ることなどが可能になる。
さらにGoogleは、今回のアップデートよりFirebaseとCloud Test Labを統合することを発表した。Cloud Test Labとは実際のハードウェア上でアプリの動作テストを実施することができるツールであり、今後Firebase Test Labと改名される。新しいFirebaseでは、開発コンソールから直接このサービスにアクセスすることが可能だ。
Firebaseの新機能にはこの他にも、クラッシュ情報のレポート(このレポートは新しい分析サービスとも統合されており、クラッシュがユーザーに与えた影響を観察することができる)や、ダイナミック・ディープリンクをアプリ内に作成する機能などが含まれる。ダイナミックなリンクとは、ルールを設定して、ユーザーを誘導する場所を指定できるというものだ。例えば、ユーザーがすでにAndroidアプリをダウンロードしていれば、そのリンクはアプリを起動させる。一方で、ユーザーがまだアプリをダウンロードしていなければ、彼らをPlay Storeに誘導することが可能だ。
同じく新しいサービスであるFirebase Invitesでは、アプリのユーザーはFirebase App Indexing(これまでのGoogle App Indexing)と呼ばれる参照コードをシェアすることにより、アプリのコンテンツをGoogle Searchに組み込むことができたり、GoogleのAdWordsやAdMobの広告プラットフォームと統合させたりすることができる。
また、Googleは今回のアップデートよりFirebaseの新しい料金プランを導入する。ある程度のリミットまでは無料でサービスを提供するのと同時に、予測可能なコストを求めるアーリーステージのスタートアップには固定料金プランを、より大規模なアプリのためには、使った分だけ支払い料金プランをそれぞれ導入する。
Firebaseのチームが私に話してくれたところによれば、現在GoogleはFirebaseを公式推奨のモバイル開発プラットフォームとして位置づけているという。
かつて、Facebookはモバイル開発のためのクラウド・ベースのバックエンドをParseによって提供するという、Firebaseと同じような野望を持っていた。しかし結局、今年の初めにParseのサービス停止が発表されることとなった。Firebaseによれば、Googleはクラウド・プラットフォームにユーザーを呼び込むための手段としてFirebaseを位置づけており、FirebaseユーザーがParseのような結末を恐れる必要はないと主張する。結局のところ、FirebaseはGoogleがもつ多種多様のサービスを結びつける役割を持っている。それにはGoogleの広告ビジネスや、BigQueryなども含まれる(今後は同サービスを利用した生データの分析が可能になった)。Facebookのプラットフォームには、Parseと自然に抱き合わせることが可能なサービスが存在しなかったのだ。
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