Googleが今日(米国時間12/15)、ハイエンドなスマートフォンの拡張現実(augmented reality, AR)プラットホームTangoを閉鎖して、マスマーケット指向のARCoreに集中する、と発表した。そのことは、8月にARCoreが発表されたときすでに確認されていたが、今回はTangoの終結の公的日程が決まった。
Tangoのサポートは、2018年3月1日で終わる。
Googleはこんなツイートを: “これまでの3年間、Tangoの大きな進歩に貢献された、デベロッパーのみなさまの素晴らしいコミュニティに、感謝申し上げたい。みなさまとの旅路を、ARCoreで続けたいと願っている”。
2014年に導入された“Project Tango”は、それ自身が先駆者であり、AppleのARKitなどよりもずっと早くから、スマートフォンとタブレットというモバイルの世界にARのソリューションを持ち込み、深度(奥行き)専用カメラなど複数台の高度なカメラハードウェアを使って、今のMicrosoftのHololensにも似たやり方で3D空間のメッシュを作った。しかしスマートフォンのメーカーの実際の製品に、このかなり高価な機能性を実装させることは、Googleにとって見果てぬ夢に終わり、Tangoは3年間でごく一部の新奇なデバイスに載っただけだった。
今年のGoogleは、iOS 11におけるApple ARKitの成功に背中を押された形だ。GoogleはAndroid上のARにコストの高い入り口があるという状態を廃し、8月にARCoreを導入した。しかしTangoとARCoreの両者には多くのクロスオーバーがあるから、Tangoは単純に無に帰したわけではない。ARCoreはTangoを単純化して、3D空間(奥行きのある空間)のメッシュを作るよりも、プレーン(面)の検出にフォーカスしている。そのためARCoreは、Galaxy S8やPixelのような人気のスマートフォンでも動き、TangoのようにマルチカメラやIR(赤外線)といったクレージーなセットアップは要らない。
8月の時点でGoogleのAR/VRのボスClay Bavorはこう語った: “Tangoの目標はわれわれのコア技術を証明して、それが可能であることを世間に示すことだった。もちろんスマートフォンのARは他社もやっているが、Tangoの目標はあくまでも、その能力を(いずれは)できるだけ多くのデバイスで実現することだった”。
というわけなので、今回の閉鎖はきわめて論理的だ。ARのプラットホームを単一化することがすでに困難になっていたAndroidのようなプラットホームのために、Tangoのような要素がばらばらに多様化している開発プロセスを維持しても意味がない。まともなユースケースも確立していない現状では、商機もかなり乏しい。だから、先へ先へと進みすぎた技術を、もっと扱いやすいレベルに戻すことが妥当だ。しかしもちろん、Tango実装機を買ったユーザーはがっかりするだろう。たとえば数か月前に出たばかりのAsus ZenFone ARは、その最大のセールスポイントとして、Tangoを実装している。