仮想現実(バーチャル・リアリティー)はゲームや映画にとって効果的であるのは間違いない。しかし現実に日常使われるソフトでの有用性となると、まだ証明されていないというのがコンセンサスだった。
Googleはバーチャル・リアリティーの普及を加速させようと 360°VRコンテンツのデバイスへの表示を簡単にするツールをリリースした。新しいツールによる体験はユーザーにとっても非常に扱いやすく、VRの世界を日常的に見ることができるものにしそうだ。
今日(米国時間3/30)、GoogleはVR Viewという新しいツールを発表した。デベロッパーはこのツールを利用して360°写真やビデオを今までよりずっと簡単にサイトのページにエンベッドし、GoogleのCardboard〔ボール箱ビューワー〕のネーティブ・アプリで表示できるようになる。また単一レンズ用のMagic Windowも利用できる。デベロッパーがVRをさらに利用しやすくするため、Cardboard SDKがiOSをサポートすることも発表された。
Googleのプロダクト・マネージャー、Nathan Martzは私の取材に対して、「VRはエンターテイメント分野で優れた効果を発揮する。しかしVRががわれわれが望むような変革を起こすためには、同時に有用性も必要だ」と語った。
VRの日常的な有用性にとって最大のハードルは、コンテンツの表示にたどり着く前にユーザーの側で非常に面倒な準備が必要なことだ。VRを体験したいなら、通常ユーザーはやっていることを中断して専用ヘッドセットを取って来る必要があるだけでなく、専用アプリを立ちあげねばならない。こういう状態では日常生活への普及はおぼつかない。
デベロッパー側の立場からすると、VRの表示に実際に関わっている企業の数が少ないのに驚くだろう。独自のVRネーティブ・アプリを開発するためにはたいへんなリソースを必要とする。
Googleが解決しようとしているのは雇用な問題だとNathan Martzは述べた。「〔企業が〕サイトやアプリにVRをエンベッドするのが今よりはるかに簡単になったらどうなるだろう? ほとんどの企業は本業の追求に全力を挙げており、専任のVRの開発チームなどを持っている余裕はない。一方、ゼロからVRアプリを開発するには莫大な投資が必要だ。われわれのVR Viewプロジェクトは企業のVRニーズとその実現の間に存在するこの大きなギャップを埋めようとするのが主な目的の一つだ」とMartzは説明した。
Googleのオープンソース・ソフトのおかげで、デベロッパーは数行のコードを追加するだけでVRコンテンツをサイトで直接表示できるようになった。取り扱っている部屋や家を体験させたい不動産ビジネスや最新のファッションを展示するアパレル産業ではこの機能はことに役立つだろう。 また世界各地の絶景をよりリアルに体験してもらいたいトラベル・ビジネスにとっても魅力だ。
もうひとつの地味ではあるが、あるいは今回の発表でいちばん重要だったニュースは、GoogleがとうとうCardboard SDKのターゲットにiOSをサポートしたことだ。
「われわれがCardboardを開発した目的は当初から『みんなが使えるVR』だ。 ところが、みんなが使っているスマートフォンの相当部分がiPhoneだった」とMartzは言う。Martzのブログ記事によると、iOSむけCardboard SDKはAndroid向けSDKと全く同じ機能を備えているという。【略】
Googleのボール箱ビューワー、Cardboardシステムの利用者は世界で500万人以上だという。現在世界で段違いに普及しているVRシステムであるのは間違いない。ユーザーにとってもVRがどんな体験か試すのにもっと手軽な選択肢だろう。Googleは今回発表されたのツールによってデベロッパーがアプリを含むVRシステムを開発するプロセスを大幅にコストダウンするだけでなく、ユーザーにとってCardboardビューワーをいつも手元に置かせる効果がありそうだ。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)