先月Googleは、ライバルのMicrosoftやAmazonとの契約が残っている企業にはGoogle Apps for Workのクラウドアプリケーションを無料にして企業顧客を増やそうという、大胆な作戦を実行した。Google Apps for Workを有料で使っている企業は現在200万社、無料も合わせるとユーザ数は500万を超えている。それが、今以上に企業ユーザを増やそうというのだ。
今以上に顧客を惹きつけ、今以上にデベロッパたちがこのプラットホーム向けのソフトウェアを作ってくれるようにGoogleは、Google自身のGAfWネイティブアプリケーションやプロダクトだけでなく、サードパーティのアプリケーションを審査しGAfWのユーザに推奨する事業を立ち上げた。
すでにセキュリティとパフォーマンスの審査を通り、推奨されているアプリケーションが8つある:
- ProsperWorks (CRM)
- Smartsheet (プロジェクト管理)
- Ringcentral(クラウドコミュニケーション)
- Switch(クラウドコミュニケーション)
- AODocs(ドキュメント管理)
- Powertools(ドキュメント管理)
- Ping Identity(アイデンティティ管理)
- Okta(アクセス管理)
併せてGoogleは今日(米国時間11/3)、広大なApps Marketplaceにおけるアプリケーションの発見のしやすさをやや改善し、またAndroidへのリンクを強化した。そして今やGoogle Play for Workにあるエンタプライズアプリケーションも紹介している。
今Googleのコンペティタたちは企業ユーザと一般消費者をはっきり分けた製品戦略やマーケティング戦略をとろうとしており、Googleもそれに倣おうとしている。その典型が、IBMとパートナーしたAppleだ。しかもこの両社は2014年の12月という早くから、iOS用やMac用の企業向けアプリの提供を始めている。
このGAfWのニュースのタイミングにも、戦略的意味がありそうだ。今回のGAfW関連の発表は、同じく企業のクラウド利用に焦点を当てたDropboxのイベントと、同日なのだ。
飴と鞭
今回のGoogleからのニュースは、同社がエンタプライズビジネスを伸ばすために飴と鞭的なやり方をしていることを、示している。
Google Apps Marketplace(Google全体のアプリケーションマーケットプレース)は、AWS MarketplaceやSalesforce、それに企業向けにアプリケーション統合サービスを提供しているクラウドストレージ屋さんなどと競合しており、今ではGAfWと統合できる企業向けアプリケーションを750以上も提供している。
しかしGAfW担当のディレクターRahul Soodによると、数が多いことは必ずしもそれらの利用性に結びつかない。“そもそも現状では、どのアプリケーションがセキュアで信頼性があって高性能で今使ってるツールとの統合性が良いのか、さっぱり分からない。しかも、仮に、検討すべきアプリケーションのグループが分かったとしても、実際にそれらを評価する能力や余裕が企業にない”。
そこでGoogleは、さまざまなサードパーティアプリケーションと、Google自身が作ったGAfW固有のアプリケーションとの、相性を審査する役を買って出ようとしている。
“これらのアプリケーションはGoogleとサードパーティのセキュリティ企業がリビューして、安全性と信頼性を確認し、高度な統合化要件を満たしていることをチェックしている”、とSoodは書いている。セキュリティ企業の名前は、今Googleに問い合わせ中だ。そうやって顧客になるべく多くのアプリケーションを使わせて、Googleのプラットホームへの親近感を持たせ、今後のより高度なサービスでお金をいただこう、という心算なのだ。
また顧客(GAfWのユーザ)企業だけでなく、Googleはソフトウェアのメーカーにもこのプラットホームを開発の対象として利用してもらいたい。
そのためにGoogleは、さまざまなことをやってきた。Google for WorkのパートナーのためにTechnology Trackを立ち上げたのが2014年の3月だった。それはGoogle App ServicesのAPIの統合を選択したソフトウェアパブリッシャーへのごほうびだった。そのごほうびとは、技術やマーケティングや営業の支援、そしてGoogle Apps Marketplaceでアプリケーションが上の方に表示されることだ。最近ではGoogleの推奨アプリケーションに優先的に選ばれる、という飴も加わった。推奨にはセキュリティのお墨付きも伴うから、それらのアプリケーションは相当目立つと思われる。
この、Googleによるアプリケーション審査〜推奨制度は、うまくいけば、ほかのアプリケーションマーケットプレースを蹴散らしてしまうかもしれない。企業ユーザにとって、Googleのお墨付きの効果は、かなり高い。次第に、他のマーケットプレースは見なくなる可能性もある。
そうなればもちろん、デベロッパ〜ソフトウェアショップもGAfW向けのアプリケーションを一生懸命作ろうとするだろう。審査に通るコツ、Googleから高く評価されるコツも、次第にわかってくる。それはGoogleにとっても自分のエコシステムを大きくする方法だが、大きくしたものをずっと支配し制御し続けるための“王様的”な方法でもある。