リアルタイム自動車衝突回避システムを公道上の車両に提供するSaaS企業のHAAS Alert(ハーズアラート)が、500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達した。同社はその資金を、販売やマーケティングの拡大、そして車対車間および車対インフラ間(V2X)技術の研究開発 / 提携を加速するために使用するという。
このラウンドは、R^2とBlu Venturesが主導し、TechNexus、Stacked Capital、Urban Us、Techstars、Ride Ventures、Gramercy Fundが参加した。
HAAS Alertは、携帯の電波を使うセンサーを利用して、車両周辺の環境から道路のハザードデータを取り込み、その予測技術によって車両システムを通じてドライバーにデジタルで警告を発する。HAAS Alertが独自に開発したデジタル警告システムSafety Cloud(セーフティクラウド)は、消防車、救急車、警察車両、レッカー車、建設車両、廃棄物処理車両、スクールバスなど、官民を問わずさまざまな車両に搭載されている。
HAAS Alertのコネクテッド・ビークル担当上級副社長のJeremy Agulnek(ジェレミー・アグルネク)氏は、TechCrunchの取材に対し「緊急対応要員、けん引業者、建設・作業現場の作業員、および類似の役割を果たす自治体職員の車両は、衝突による死傷率が極めて高いのです」という。「同時に彼らは、地域社会のバックボーンとなる存在であり、すべてのドライバーが毎日のように道路で出会う存在でもあるのです。これらの仕事の多くはもともと危険をともなうものですが、それでも衝突されることによる事故は、すべての死因の上位にランクされています」。
HAAS Alertは、先進的運転支援システム(ADAS)とV2Xを、課題に対するソリューションとして捉え、道路上で最もリスクの高い人たちからサービスを始めて、そこから発展させていくことを目指している。
「私たちにとって、この活動はコネクテッドビークルをエンターテインメントや一般的なコネクティビティのために使用するということではなく、特に安全性に注力するということなのです」とアグルネク氏は述べている。「こうした人びとをつなぎ、保護することで、すべてのドライバーとインフラ対してコネクテッドビークルの体験をすぐに提供することができ、コミュニティの安全性も高めることができるのです。私たちは、緊急応答者や道路作業者の安全性課題を解決することが、モビリティを次のステージに進めるための最も重要な要素だと考えています」。
現在、Safety Cloudは750以上の公共機関や民間企業の車両に搭載されており、合計で10億回以上の警報を送信している。
HAAS Alertは、V2X技術を活用して衝突のリスクを低減しようとするスタートアップの増加を象徴しており、資金調達はパズルの大きなピースとなるだろう。ソフトウェアの開発や保守にコストがかかるだけでなく、公共のインフラや車内にセンサーを設置するためのハードウェアや人的コストも安くはない。HAAS Alertは、2022年までにドライバー安全警報100億回を達成したいと考えているが、そのためには、自動車業界をもっと巻き込む必要がある。現在、同社は主に緊急 / 専門車両群を相手に仕事をしているが、同社のプラットフォームを利用する車両群が増えれば、より多くの一般自動車顧客を獲得することができ、その逆もまた成り立つだろうという。
「緊急 / 専門車両群や代理店経由のお客様には、Safety Cloud上で路上資産を有効活用するために納得していただける料金をお支払いいただき、一般自動車利用のお客様には、当社が提供する安全警告、ソフトウェア、その他のサービスに対するライセンス料をお支払いいただいています」とアグルネク氏はいう。
同社によれは、緊急車両が点滅信号を作動させた際に、接近してくるドライバーたちに自動的にデジタル警報を一斉に送ることができるハードウェア「HA-5トランスポンダ」を、全国の車両に積極的にインストールしている最中だという。これらの警報は、道路上や道路付近に緊急応答要員がいることを他の道路利用者たちに知らせ、ドライバーに減速や回避の時間を与える。
アグルネク氏によると、彼らのハードウェアのセットアップは迅速かつ簡単に行うことが可能で、ダウンタイムも最小限に抑えることができるものの、車両にすでにインストールされている配車システムやGPSやテレマティクスシステムを介して追加のハードウェアなしでSafety Cloudを統合するオプションも用意されているという。
「Safety Cloudの警報を車両に追加するために必要なのは、車両の既存のテレマティクス機能を介してデータを受信し、インフォテインメント画面や機器部分にドライバーへのアラートを表示するためのソフトウェアアップデートだけです」とアグルネク氏は説明する。「現在、ある自動車メーカーとのプロジェクトを進めていますが、彼らの車にアラート機能を実装するのに1週間もかかりませんでした」。
各種の計算は、クラウドまたはハードウェア内のエッジチップで行われる。つまり、警告ロジックは、HAAS Alertのクラウド、車両OEMのクラウド、車両搭載ユニット、またはハイブリッドのマルチロケーションアーキテクチャ上に配置することができる」とアグルネク氏はいう。
Safety Cloudには車両管理プラットフォームのSituational Awareness Dashboard(状況認識ダッシュボード)が標準提供されており、行政機関同士が管轄区域を超えた連携ができるように設計されている。またHAAS Alertは、特定の業界向けのアドオンも可能だ。例えば、R2R(レスポンダートゥーレスポンダー)は、車内に取り付けられたライトが、他のSafety Cloud搭載車がアクティブレスポンスモードで同じ交差点に近づいてきたときに、レスポンダー(緊急応答要員)に対して通知を送る機能だ。またFleetFusion(フリートフュージョン)は、Safety Cloudのリアルタイムデータを組織内のダッシュボード、サードパーティアプリケーション、交通管理センターに統合することができる。
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画像クレジット:HAAS Alert
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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)