今週末、ソフトウェアやハードウェアのエンジニア、アーティスト、起業家がボストンに集結した。MITが主催するハッカソンのHacking Arts 2016に出場するためだ。
ファイナリストに残った12チームのうち、見事受賞を果たしたのは以下の4チームだ。
- Best All-Around Hack優勝: Harmony Space
- Best All-Around Hack第2位: Revive
- Best All-Around Hack第3位: möbel
- Hackers’ Choice: Inkfinity
MIT提供の受賞プロジェクトの詳細はこの記事の最後に掲載してある。
ハッカソンは通常、あるテクノロジーのプロモーションや新しいプロダクト・アイデアの宣伝、優秀な人材の発掘などを目的に企業や教育機関が主催するイベントだ。しかし、Hacking Artsはもっと「大きなもの」に挑戦するように出場者に呼びかけている。
Hacking Arts2016のWebサイトによれば、出場するチームは「アートが持つ機能を強化する、あるいはアートへのアクセスを向上させるようなプロトタイプを設計・創作する」ことが求められ、「テクノロジーとアートを通じて世界を変える」ことが彼らの目標となる。
同ハッカソンのオーガナイザーを務める、Sloan MBA候補生のHelen Smithによれば、今年応募があった700名のうち、本戦に招待されたのは250名だったという。結局は250名中177名がハッカソンに参加、全体の58%が女性で、87%が学生だった。この学生の大半は学部生だ。ボストンやニューヨークからの参加者が多かったが、このためにボストンにやってきた者もいた。
出場者たちが創りあげたプロジェクトは、モバイルアプリ、ウェアラブル、没入型のエンターテイメント体験など様々だった。半数以上のハッカーたちがARやVR、そしてロボティクスを駆使して彼らが打ち立てた目標を達成していたとSmithは話す。彼女によれば、今年のプロジェクトで多く見られたテーマは「テクノロジーによって感情移入を促す」というものだったという。
ディベロッパーに熱い眼差しを向け、チームのメンターを務めたHacking Arts 2016の協賛企業は、Adobe、Autodesk、Shapeways、Jibo、Whoaboardなどの企業だ。出場者たちはペインティング・ロボットのArtmatrや、パーソナルアシスタント・ロボットのJIBOのデモに群がり、そのようなロボットをどのように自分たちのプロジェクトに活用するべきか考えていたとSmithは言う。
2015年度と2016年度のHacking Artsで審査員を務めたArtsy CTOのDaniel Doubrovkineによれば、2016年のハッカソンでは去年に比べ、VRではなくARを利用する出場者が増えたと話している。
また彼は、今年の出場者の多くは音楽の分野にフォーカスしており、ファイナリストの約半数はサウンド・デザインを何らかの形でプロジェクトに組み込んでいたと話している。意外だったのは、今年はAmazon Echoが普及しはじめた年であるにもかかわらず、音声認識やボイスコントロール技術を利用するファイナリストがいなかったことだ。
Daniel Doubrovkineは、今年の出場者が創りあげたプロトタイプに刺激を受けたと話す一方で、出場したチームへのアドバイスがあるとすれば、もっと実験的な目線でプロジェクトに取り組むようにアドバイスするだろうと話している。
「人は常に、プロジェクトがもつ目的を一番に考えがちです。しかし、プロジェクトの目的はさまざまなアイデアを考えている最中に突然生まれることもあるということを私たちは学んだのです」と彼は言う。
Hacking Artsの運営はMIT Center for Art, Science & Technology (CAST)と、 Martin Trust Center for MIT Entrepreneurshipの協力の元、MIT Sloan School of ManagementのEntertainment, Media & Sports Clubが勤めている。
Hacking Arts 2016の受賞者たち
優勝:Harmony Space
チームメンバー: Max Harper、Matthew Seaton、Evin Huggins
「このアプリケーションは音楽の思考ツールです。このアプリケーションは私たちの空間認識感覚を聴覚と入れ替えます。空間を「聴き」、ハーモニーを「見る」ことができるようになるのです。あなたの位置X(左右)、Y(上下)、Z(前後)は、異なる3つの音符のピッチを調節する役割を持ちます。これは、すべての場所が「調和可能な」場所になることを意味します。特定の場所にポケモンが浮いているのと同じように、このアプリケーションが創る世界には「オーブ」が存在し、そのオーブによってユーザーはメジャーコードとマイナーコードを奏でることができる場所を特定することができます。このアプリケーションには、3D空間トラッキング技術とHololensの拡張現実機能が利用されています」。
第2位:Revive
チームメンバー:Paul Reamey、Tim Gallati、Luna Yuan、Liabao Li、Qi Xiong、Jingchen Gao
「このシステムは、仮想現実、触覚で感じるフィードバック、そして音楽を融合することでユーザーに太極拳を指導するシステムです。このシステムは仮想現実環境でユーザーに合図を送ります。そうすることでユーザーは、体の動かし方を理解できるだけでなく、自分の動きが正しいのかどうかフィードバックを通して知ることができます。ユーザーとシステムが相互に作用するビジュアルエフェクトを利用することで、エネルギーの流れを意味する「気」というコンセプトを表現しました。また、このシステムにはユーザの動きを促すための触覚で感じられるフィードバック機能も備えられています」。
第3位:möbel
チームメンバー:Kiran Wattamwar、Christina Sun
「”ソーシャル家具”プロジェクトのmöbelは人々の協力関係を促すプロジェクトです。家具の組み立ては、わざと複雑になるように設計されており、1人だけでは組み立て不可能な作りになっています。少なくとも2人以上が協力することで、家具の本来の価値が発揮されるのです。組み立てられたmöbel製のイスに座るためには、2人の人間が狭い空間で向き合うように座る必要があります。これにより、本当の意味で人と人との間に存在するバリアを壊し、2人の協力関係を促すのです」。
HACKER’S CHOICE AWARD受賞:InkFinity
チームメンバー:Sharon Yan、Yaqin Hunag、Daisy Zhuo、Lei Xia
「InkFinityは、仮想現実を利用してユーザーをインクで描かれた世界の中に誘い込み、詩的な旅に連れ出すアプリケーションです。ユーザーは絵画で描かれた世界に入り込み、その美学を隅々まで探索し、文化的エトスを3D空間で体験することができるのです」。