IBMがインフラサービス事業を2兆円規模の独立事業として分社化する計画を発表

IBMはその昔ありとあらゆる企業向けビジネスハードウェアのトップメーカーだった(実際その社名は「インターナショナル・ビジネス・マシン」の頭文字からきている)。しかし同社は、クラウド事業に主力を移すためにハードのメーカーというレガシィからさらに一歩距離を置く計画を発表した(PR Newswireリリース)。

米国時間10月8日、IBMは通年売上190億ドル(約2兆円)規模のマネージドインフラ事業部を分社化し、公開企業とする計画を発表した。これによりIBMはハイブリッドクラウドとAIアプリケーションという新分野にさらに注力することになる。

新会社は企業が運用するレガシーインフラをハイブリッドクラウド化するため、ハードウェアのテストと組み立て、プロダクト開発、高度なラボサービスなどの各種のマネージドサービスを行う(IBMリリース)。TechCrunchの取材に対して広報担当者は「新会社はインフラサービス事業を行い、サーバー事業は含まれない」と確認した。

IBMでは新会社のスピンオフの手続きを、2021年末までに完了させようと計画している(既存株主にとっては無税のプロセスとなる)。新会社は暫定的にNewCoと呼ばれるだけでまだ社名は決定していないが、発表によれば社員9万名、世界115カ国にクライアント企業4600社を抱え、受注残600億ドル(約6兆3380億円)の巨大ビジネスになるという。新会社は「インフラサービスの分野で直近ライバルの2倍以上の規模で首位となる」ということだ。

ライバルはBMC Software、Microsoft(マイクロソフト)などとなる。クラウドサービス分社後のIBMのビジネスは年間収入約590億ドル(約6兆2320億円)と新会社の3倍以上の規模だ。

同時にIBMは 第3四半期の財務ガイドラインのアップデートを発表した。このガイドラインが正式に発表されるのは2020年10月末とみられる。収入は176億ドル(約1兆8590億円)、GAAP基準による希薄後の1株当たり配当は1.89ドル、非GAAP基準による1株当たり収益は2.58ドルと予想している。なお前年同期(IBMリリース)の四半期収入は180億ドル(約1兆9000億円)1.9兆円だった。2020年第2四半期の収入は181億ドル(約1兆9120億円)と微増にとどまっている。これはインフラサービスを含む部門の売り上げが減少したことによる 。

新会社分離の計画は概ね市場に好感されているようだ。IBMの株価は発表直後の市場外取引で10%アップした。

しかし最も重要な点は、IBMがエンタープライズ ITの分野における根本的な革新に乗り出したことだろう。この分野は現在大きな変化を続けており、今後もこれは続くはずだ。

IBMは売上確保するために、企業が運用するレガシーインフラを重視しており、今後もサポートを続けていく。一方 この分野は、これまでのような急成長を見込めない。企業はIT部門の現代化(コンサルタントのいうデジタルトランスフォーメーション)を図っており、企業内および対顧客向けコンピューティングのインフラをクラウドなど外部へアウトソーシングする努力をしている。一方、IBMはマイクロソフト、Google(グーグル)のクラウドサービスに対抗しなければならない。そこで企業向けハイブリッドクラウドサービスに注力することは、ビジネスの拡大を目指す戦略の重要な柱となる。

IBMはしばしば「ビッグブルー」と呼ばれる巨大企業だが、今回のスピンオフ計画は利益を確保するためのダウンサイズの重要なステップとなるのだろう(今後はミッドブルーと呼ぶべきかもしれない)。

「IBMはハイブリッドクラウド事業で1兆ドル(約105兆6000億円)の収入を達成することに強くフォーカスしていきます。コンピューティングのインフラとアプリケーションを求めるクライアントのニーズは多様化を続けており、私たちのハイブリッドプラットフォームもこれに対応して拡大しています。(IBMと新会社の)2社がそれぞれ得意分野を活かすことによりにより市場のリーダーとなることができるでしょう。IBM本体は顧客向けハイブリッドプラットフォームの構築と運用、AI能力の拡充を重点とする一方、新会社は開発、運営、インフラの現代化などすべてにおいて活動の軽快さを強化し、世界的重要企業となることを目指します。両社とも成長カーブは押し上げられ、他社との連携能力も強化されます。これにより新たなビジネスチャンスをつかみ、顧客並びに株主に対してより大きな価値を提供できると信じています 」とIBMのCEOであるArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏は声明で述べている。

同社による2019年に行われた340億ドル(約3兆5920億円)のRed Hat買収は、おそらくIBM自身の変革への最近の投資の中で最も注目すべきものだ。

IBM の組織再編では2019年にRed Hatを買収したことが目立っている。IBMのエグゼクティブチェアマンであるGinni Rometty(ジニ・ロメッティ)氏は声明で次のように述べている。「私たちは、IBMをハイブリッドクラウドという新しい時代の主役にしました。IBMの長年にわたる改革はオープンクラウドプラットフォームの基礎を作り上げました。これは Red Hat の買収によって大きく加速されました。同時に、マネージドインフラの各種サービスもこの分野のリーダーとなりました。ミッションクリティカルで複雑なタスクの実現にあたっては比較するもののないレベルの能力を実現しています。IBM と新会社の2社はそれぞれの強みを活かして収益化に貢献するでしょう。IBMは顧客企業の新しいデジタル化への改革を促進します。一方新会社は既存インフラの現代化を手助けします。こうした戦略はさらに高い企業価値とイノベーションの加速 さらに顧客ニーズへの対応の迅速化として実を結ぶでしょう」

現在、さらに取材中だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:IBMクラウドコンピューティングハイブリッドクラウド

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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