2020年11月に行われたCNBCのTransformカンファレンスで、IBMのCEOであるArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏は変革のまっただ中にある同社の現状を説明した。そのとき彼は、IBMが2018年に340億ドル(約3兆5200億円)で買収したRed Hatを利用して、顧客が成長するハイブリッドクラウドの世界を管理しながら、人工知能を使って効率性を高めたいと考えていると述べた。
それは健全そのもののアプローチに聞こえるが、しかし実際には、その新しい戦略は大きな成長エンジンとして機能せず、同社の決算報告は、クラウドとコグニティブソフトウェアの売上が4.5%減の68億ドル(約7000億円)を示した。一方、AIの収入を示すコグニティブアプリケーションは、横ばいだった。
クリシュナ氏が一筋の光明を求めていたのなら、Red Hatの好成績が慰めになっただろう。Red Hat単独では、売上が前年比で18%増加した。しかし全体としてのIBMの売上は4期連続で下降し、CEOは22期連続売上減を記録した前任者Ginni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏と同じ立場になった。
クリシュナ氏は自身の戦略を2020年11月にCNBCに語り、「Red Hatの買収は、オープンソースをベースとしたハイブリッドクラウド技術プラットフォームを構築するための技術基盤を私たちに与えてくれた。また、旅路に出るときクライアントに選択肢を与えることをベースにしている」と語った。これまでのところ、クリシュナ氏が期待していたような成長を生み出すには至っていない。
クリシュナ氏が同じ11月のインタビューで述べたように、同社は従来のマネージドインフラサービス部門をスピンアウトしている最中にある。「この買収の成功が燃料となり、マネージドインフラストラクチャサービスを廃止するという次のステップ、より大きなステップに進むことができます。そのため、私たちIBMの他部門は、ハイブリッドクラウドと人工知能に完全に集中することができる」と、クリシュナ氏は語っている。
彼のトランスフォーメーション戦略が失敗したというには時期尚早だが、その結果はまだ出ておらず、同社売上の下落は、ロメッティ氏と同じくクリシュナ氏にとっても苛立たしいものであるに違いない。レガシーなテクノロジーを捨て、よりモダンなテクノロジーへと会社を導くのであれば、いつかは結果が見え始めるはずだが、いまのところどちらのリーダーにもその時期は訪れていない。
2020年末にもクリシュナ氏は、彼のビジョン構築の手を緩めることなくクラウドアプリケーションのパフォーマンスをモニターするInstanaや、ハイブリッドクラウドのコンサルタント企業Nordcloudを買収した。ハイブリッドクラウドサービスのポートフォリオを拡大して、IBMをそれらのサービスのワンストップショップにするためだ。
引退したNFLのコーチであるBill Parcells(ビル・パーセルズ)氏は、彼の弱いチームに対してよく「君たちは、君たちの記録がいうとおりのチームなんだ」といった。現在のところ、IBMの記録は一貫して悪い方向へと向かっている。Red Hatに引っ張られてやや成果を出してはいるが、それは損失を償うには十分でない。何かを変える必要があるのだ。
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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa)