iPhone SEはトリプルカメラを捨てて機種変更したいと思わせる魅力を備える

アップルは4月24日、iPhoneシリーズの最廉価にして最小のモデルとしてiPhone SEの第2世代を発売した。第1世代と第2世代に共通するコンセプトは、旧モデルのボディに最新のプロセッサーを搭載していること。第2世代のiPhone SEには、iPhone 8と同じデザインのボディーにiPhone 11シリーズと同じA13 Bionicプロセッサが搭載されている。今回は、最上位のiPhone 11 Pro Maxと比較しつつ、iPhone SEならではの魅力に迫っていく。

iPhone SE(第2世代)の価格は4万4800円から。カラーは今回のブラック以外に、ホワイトとレッドが用意されている

iPhone 8のボディに最新プロセッサーを搭載

iPhone SEには前述のとおりプロセッサに、第3世代のNeural Engineを搭載したA13 Bionicを採用。ストレージに64GB(4万4800円)、128GB(4万9800円)、256GB(6万800円)を搭載する3種類のモデルが用意されている。メモリ容量についてはアナウンスされていないが、各種ベンチマークソフトのシステム情報で3GBを搭載していることが確認できる。

ディスプレイは4.7インチのIPS液晶ディスプレイ(1334×750ドット、326ppi、輝度:625cd/平方m、色域:P3、コントラスト比:1400:1)を搭載。カメラは背面に1200万画素、前面に700万画素を配置している。通信機能は4G LTE(nano SIMとeSIMのデュアル仕様)、Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)、Bluetooth 5.0に対応。初代とは異なり、リーダーモード対応NFC、FeliCaもサポートする。

本体サイズは幅67.3×高さ138.4×厚さ7.3mmで重さは148g。防水防塵性能はIP67。iFixitの分解記事によれば、バッテリーは1821mAhを搭載している。公称バッテリー駆動時間は、ビデオ再生最大13時間、ストリーミングビデオ再生最大8時間、オーディオ再生最大40時間だ。

前面カメラは700万画素(F2.2)。ホームボタンは物理式ではなく、押した感触を再現する感圧式が採用されているので、故障する可能性が格段に低い

背面カメラは1200万画素(広角、F2.2、光学式手ぶれ補正)。リーダーモード対応NFC、FeliCaだけでなく、ワイヤレス充電(Qi規格)にも対応する

本体右側面にはサイドボタンとnanoSIMカードトレイ、本体左側面にはサウンドオン/オフスイッチ、ボリュームボタンが配置されている

小さなiPhone SEはA13 Bionicの最大性能を発揮できない?

iPhone SEはプロセッサにiPhone 11 Pro Maxと同じA13 Bionicを搭載しているが、ベンチマークで予想外の結果が出た。今回、「AnTuTu Benchmark」「Geekbench 5」「3DMark」の3つのベンチマークプログラムをそれぞれ3回実行し、その中で最も高いスコアで比較してみたのだが、Geekbench 5のCompute以外でiPhone SEがiPhone 11 Pro Maxに大きく引き離されたのだ。例えば、AnTuTu Benchmarkの総合スコアでは、iPhone SEはiPhone 11 Pro Maxの約88%のスコアに留まっている。

iPhone 11 Pro Maxは4GBのメモリを搭載しているが、ベンチマークソフト単体で今回ほどの差が出るとは考えにくい。そこでベンチマーク実行中の端末の表面温度を計測してみたところ、iPhone SEが最大41.1度、iPhone 11 Pro Maxが最大40.5度と0.6度の開きがあった。小さなiPhone SEは端末内に熱がこもりやすく、A13 Bionicの最大性能を発揮できていない可能性がある。

iPhone SEでは、AnTuTu Benchmarkの総合スコアは479610、Geekbench 5のMulti-Core Scoreは3013、Computeは7323、3DMarkのSling Shot Extremeは4074を記録

iPhone 11 Pro Maxでは、AnTuTu Benchmarkの総合スコアは542188、Geekbench 5のMulti-Core Scoreは3449、Computeは7311、3DMarkのSling Shot Extremeは5370を記録

AnTuTu Benchmark実行中、iPhone SE(左)が最大41.1度、iPhone 11 Pro Max(右)が最大40.5度に達していた

広角カメラの画質は同等だが、ナイトモード非対応は残念すぎる

広角カメラの画質について違いは見受けられなかった。少なくともある程度の光量があれば、上位モデルと同等の写真を記録できる。超広角、望遠カメラは搭載されていないが、それを知らずに買ってしまう方はいないだろう。

しかし、iPhone SEにナイトモードが搭載されていないことは大いに不満だ。複数枚撮影した画像を合成することで、明るさを増し、ノイズを除去するナイトモードは、AndroidではiPhone SEよりも低スペックな端末にも搭載されている。

ベンチマークスコアがわずかにふるわなかったもののA13 Bionicを搭載するiPhone SEにナイトモードを搭載しない理由は、正直、上位モデルとの差別化以外に思いつかない。できるだけ早くiPhone SEにナイトモードを提供することを強く望みたい。

iPhone SEで撮影

iPhone 11 Pro Maxで撮影

iPhone SEで撮影

iPhone 11 Pro Maxで撮影

カメラスペックさえ割り切れればiPhone 11シリーズと比べて遜色なし

価格とサイズは性能の重要な要素。個人的には128GB以上のモデルを勧めるが、64GBモデルなら4万4800円から購入できて、ポロシャツの胸ポケットにもスッポリ入るiPhone SEは、エントリーモデルとして申しぶんない。パフォーマンスや広角カメラの画質は最上位モデルとほぼ同等なので、実際の利用シーンで物足りなさを感じることはないはずだ。

おサイフケータイ、防水非対応の初代iPhone SEは、個人的にはメイン端末になり得なかった。だが、今回の2代目はカメラのスペックさえ割り切れれば、iPhone 11 Pro Maxから機種変更してもいいと思わせるほどの魅力を持つ1台だ。

これまでPlusとかMaxなどの大きなiPhoneばかりを買ってきた筆者にとって、4.0インチの初代から4.7インチへと大きくなった2代目でさえも非常にコンパクトに感じられる

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。