Googleが昨年の2月にローンチしたオープンソースのコンテナ管理ツールKubernetesが今日(米国時間7/21)、バージョン1.0を迎えた。このアップデートによりGoogleは、Kubernetesの一般公開を検討している。また、さらに重要なこととして、GoogleはKubernetesを、Linux Foundationの傘下に新たに作られた組織Cloud Native Computing Foundation(CNCF)に寄贈し、Kubernetesのコントロールをそちらへ委譲する。この機関のパートナーはGoogleのほかに、AT&T、Box、Cisco、Cloud Foundry Foundation、CoreOS、Cycle Computing、Docker、eBay、Goldman Sachs、Huawei、IBM、Intel、Joyent、Kismatic、Mesosphere、Red Hat、Switch SUPERNAP、Twitter、Univa、VMware、そしてWeaveworksなどだ。
この新しい組織のミッションは、“クラウドネイティブなアプリケーションとサービスをデプロイするための共通技術に関して、デベロッパとオペレーターのコラボレーションの便宜を図ること”だ。Linux Foundationの事務局長Jim Zemlinが、今日の発表声明の中でこう書いている。
なんだか前にも聞いたような話だ、とお思いの方も多いと思われるが、それは実は数週間前に、やはり同じような企業、DockerやGoogle、IBM、Intel、Mesosphere、VMwareなどコンテナのエコシステムを支える面々が共同で、Open Container Projectをローンチしたからだ。こちらもLinux Foundationが管理するプロジェクトだが、コンテナ技術のスタンダードを作っていくことが目的だ。CNCFと違ってこのグループにはGoogleのライバルであるMicrosoftやAmazonもおり、逆にCNCFはこの二社がいないことが、顕著に目立つ。
GoogleのシニアプロダクトマネージャCraig McLuckieによると、Kubernetesは一般公開にこぎつけたことを契機に、Googleという一私企業の手を離れて新しい家を見つけることになった。Kubernetesの開発のコントロールを手放すGoogleの基本的な動機は、McLuckieによると、“それをできるかぎり偏在的な(ユビキタス)なものにするためだ。うちとしては、誰もがクラウドを使えるようになってほしい。今うちの顧客の大半がハイブリッドクラウドのユーザだが、そういう方々にも、クラウドネイティブのコンピューティングパラダイムの利点を享受していただきたい”。
彼によると、Googleが今後もKubernetesに関してアクティブであることは変わらない。そして、Googleも新しい組織の成功を期待している。しかもGoogleは、KubernetesがコンテナのためにGoogleが作った、そのほかの社内的なツールの欠陥を克服したものに育ってほしい、と期待している。
McLuckieがとくに指摘するのは、今日のKubernetesが、ノード数が数百ぐらいの小さなクラスタで有効に利用できること。しかし今では、多くの顧客が何千というオーダーのノードを管理したいと願っていることだ。またGoogleのチームは、バッチ処理のような別の種類のワークロードをさらに効果的に統合できることを、期待している。
なお、CNCFの管理下に置かれるのは、初めてのプロダクトであるKubernetesだけではない。同団体の視野はもっと大きくて、Kubernetesの管理だけが目的ではない。むしろ、JoyentのCTO Bryan Cantrillが今日述べているように、CNCFの真のミッションは、“現代的なエラスティックなコンピューティングを構成する重要なオープンソース技術の数々を前進させること”なのだ。
CNCFの統治方式は、まだ細部の煮詰めが必要なようだ。Linux Foundationの理事長Jim Zemlinによると、この組織はサービスを有料で提供することはせず、誰もが参加できる(Linux Foundation傘下のプロジェクトのほとんどが、そうであるように)。基本的な考え方としては、重要な技術を寄与貢献したところが、今後の意思決定にも参加できるようにする。“その席に座る者が、個人の優れたデベロッパであってもかまわない”、とZemlinは述べる。“重要なのは、コアデベロッパの存在だ”。
コンテナエコシステムの一部の大型選手(Microsoft、Amazon、Pivotalなど)がまだ参加していないが、Zemlinは、はぐれ鳥たちもその多くがいずれは参加する、と信じている。“この組織をベースにして作られていく標準クラウド技術は、誰にも拒否できないものになるだろう。今参加していない人たちも、後日、考えが変わるはずだ”、と彼は語る。