LINE Payを除くQRコード決済サービスに足りないもの

QRコード(バーコード)決済サービスを提供するLINE Pay、PayPay、Origami Payは、さまざまなユーザー還元キャンペーンで熾烈なバトルを繰り広げている。いまのところ傍観の姿勢だが、同サービスにはメルカリの子会社であるメルペイも参入してきた。

メディアではあまり取り上げないが、楽天の楽天ペイもコンビニの初回利用時に200ポイントプレゼントなどのキャンペーンを実施し、利用者の拡大を狙っている。

楽天ペイは4チェーンのコンビニの初回利用で200ポイントずつもらえる

ここ最近、積極的に広告を投下しているNTTドコモは、3月末までd払いでdポイントを40倍付与するため、実質は20%の還元となる。

NTTドコモもd払いでdポイント40倍界王拳

d払いについてはそのほか、楽天とYahoo!のブランドカードを除くと、LINE Pay以外は対応していないJCBブランドのクレジットカード経由で決済できる点でも注目だ。楽天ペイとd払いは、キャンペーンによってはいちいちエントリーしなければならない煩わしさはあるが。

LINE Payは3月31日まで、決済代金の20%還元と最大2000円相当のくじがあたるキャンペーンを実施中

各社とも定期的にさまざまなキャンペーンを打ち出してくるので、当面はLINE Pay、PayPay、Origami Pay、楽天ペイ、d払いなどサービスを軸として、用途や店舗、期間によって使い分けるのが賢明だ。しかし、ここで問題になるのが資金の管理。

PayPayは5月末まで、決済代金の20%還元、1000円相当のくじが10分の1の確率であたる「第2弾100億円キャンペーン」を実施中

複数のサービスに資金が分散してしまう煩雑さもあるものの、なによりも金融機関の口座からチャージした場合に、決済履歴が各サービスのアプリ内にしか残らないことが問題。銀行口座側ではチャージした3000円や5000円などが記録されるだけで、コンビニでいくら支払ったかなどの履歴は参照できない。きちんと家計簿を記録できる人は問題ないが、キャンペーンに乗せられてついつい無駄遣いしてしまう人は、アプリできちんと管理したいところ。

さらにPayPayでは3月末まで金融機関の口座を新規登録したユーザーを対象に抽選で50名に100万円相当のPayPay残高を付与する「100万円もらえちゃうキャンペーン」も実施している

ここで利用すべきなのが個人資産管理アプリだ。さまざまなアプリがリリースされているが、「Money Forward ME」や「Zaim」はQRコード決済サービスと相性がいい。LINE Payの決済履歴を取り込んで、銀行口座やクレジットカード、Suicaなどの電子マネー、Tポイントなどのポイントカードなどの履歴と一元管理できるからだ。

Origami Payはタクシー初乗り半額キャンペーンを3月17日まで実施

実はLINE PayはAPIを一般公開しており、サードパーティーのアプリに決済機能を組み込んだり、LINE Payが持っている各種データを安全に引き出したりすることができる。Money Forward MEやZaimもこのAPIを利用して決済履歴をアプリに取り込んでいると思われる。

「Money Forward ME」でLINE Payを取り込んだ画面。当選した500円の当たりくじも、きちんと「収入」として識別してくれる

残り2つの決済サービスはどうだろうか。PayPayはいまのところAPIを一般には開放していないようで、個人資産管理アプリ側ではどうすることもできない。Origami Payは「提携Pay」という名称でAPIを一般開放しているものの、残念ながらMoney Forward MEやZaimは未対応だ。

「Zaim」でLINE Payを取り込んだ画面。こちらも500円の当たりくじを認識している

現在LINE Payは、3月末まで20%還元と最大2000円くじの「春の超Payトク祭」。PayPayは、5月末まで20%還元と最大1000円くじの「第2弾100億円キャンペーン」、3月末まで金融機関口座の新規登録で抽選で最大100万円相当のPayPay残高があたる「100万円もらえちゃうキャンペーン」。Origami Payは、第6弾まである施策の第4弾として3月17日までタクシー初乗り半額キャンペーンを実施中だ。

しかし、これらの熾烈なキャンペーンが終わったあとに、サービスを使い続けるためのモチベーションの1つになるのは、個人資産管理アプリの連携ではないだろうか。

前述のようにQRコードでの決済を現金やクレジットカード、電子マネーの支払いとまとめて管理できるのは、現状ではLINE Payの一択。そしてQRコードだけでなく、JCBブランドの物理カードとGoogle Pay上のQUICPay(NFC-F、FeliCa)で決済できるLINE Payが、使い勝手では優勢と感じる。

とはいえ消費者としては、まだまだ脱落者は出てほしくない。ひと昔前のキャリアの値下げ合戦のように熾烈な競争をもう少し近くで味わいたいところだ。そのためにも各社は還元キャンペーンだけに目を向けるのではなく、PayPayにはまずはAPIの早期開放を、Origami Payには個人資産管理サービスとの連携を強く望みたい。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。