宿題をきちんとするというのは、思う以上に大切なことであるようだ。宿題に出たデザインワークを一所懸命こなした2人がスタートさせた会社を、大企業が買収するという運びになったのだ。買収したのはLogitech。買収されたのはシカゴのTT Design Labsだ。2011年末、TidyTilt iPhoneケースをクラウドファンディングで世に出した2人が運営する会社だ。買収金額などについては明らかにされていない。
LogitechのSenior Vice President兼Logtech for BusinessのGeneral Managerを務めるEric Kintzは、主力をPCアクセサリーからモバイル用に移す中、デザインとテクノロジーを融合したTidyTiltのようなプロダクトを求めているのだと話している。
「モバイルに注目していこうとする中、TidyTiltのような製品が非常に面白いものであると感じたのです」とKintzは述べている。クラウドファンディングによって実現されるアイデアについては、イノベーションのヒントにもなるものとして着目しているのだそうだ。
冒頭の話に戻るが、TidyTiltはそもそも「宿題」として生まれてきたものだ。ファウンダーのZahra TashakoriniaおよびDerek Tarnowはシカゴ美術館附属美術大学(The School of the Art Institute of Chicago)に在籍していた。そこでKickstarterプロジェクトの立ち上げが課題として出されたのだった。目標額を1万ドルに設定してKickstarterプロジェクトを開始したが、結局22万3000ドルを集める大成功となった。
それを機にTT Design Labsはデザイン業務を本格稼働させ、TidyTilt+およびJustMountというホルダーもリリースしている。Logitechはこれら3つのプロダクトを、7月から自社製品として扱い始める。価格は現在のものを引き継ぐのだそうだ。DerekはプロダクトデザイナーとしてLogitechに入社し、Zahraはコンサルタントとなる。
今回のニュースは、クラウドファンディング・コミュニティにとって、なかなかのビッグニュースと言えるだろう。もちろん今回の事案が史上初めてのものであるというわけではない。Best Buyも、以前にクラウドファンディングによりデビューしたPadPivotを買収している。いずれの場合も、既存企業側はプロダクト自体とともに、ある種のファンをも獲得することを狙ったわけだ。少々下品な言い方をするならば、人気プロダクトの誕生をじっと待っていて、絶好のタイミングで札びらを切ってプロダクトとデザイナーを双方ともに自らの手におさめたということになる。
売れっ子デザイナーを目指すのであれば、実効性のあるポートフォリオとしてクラウドファンディングの活用を考えても良いのだろう。優れているものを発表すれば、多くの人がそれを認めてくれるわけだ。もしも大成功ということにならなくても、経験から得るものも大きいはずだ。いずれにせよ、シリコンバレーという場所はMBAよりも、起業経験を大きく評価する場所でもある。
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(翻訳:Maeda, H)