Makeの親会社がスタッフ全員レイオフ、運営停止の悲劇

人気のDIY工作雑誌MAKEの発行元でテクノロジーとアートのカンファレンス、Maker Faireを主催してきたMaker Mediaの経済的問題が深刻化し、運営の停止を余儀なくされた。22人のスタッフは全員レイオフされ、事業はすべてストップした。TechCrunchが聞いていたMaker Mediaの困難な財政状態はファウンダーでCEOのデイル・ドハティ氏によって確認された。

創立以来15年にわたってMAKEはわかりやすいステップバイステップの解説で多彩なサイエンス工作を紹介することで大人にも子供にも根強い人気を得てきた。MAKEの読者を中心としてコミュニティーも発展した。2006年以降、Maker Faireは直営、ライセンスも含め40カ国で毎年200回以上が開催されてきた。会場には美しく不思議なインスタレーションが置かれて来場者のインスピレーションを誘っていた。

ドハティCEOはTechCrunchに対し「Maker Media Inc.は運営を停止した。22名の従業員は全員会社を去る。私はこの会社を15年前に創立したが、以来ビジネスは苦闘の連続だった。印刷媒体はもはや有力なビジネスではなかったが、それでもかろうじて運営を続けることができた。イベントの企業スポンサーの脱落が大きかった」と語った。実際、Microsoft、Autodeskは今年、Maker Faireのフラグシップイベントであるベイエリアでの開催のスポンサーに加わらなかった。

それでもドハティ氏はなんらかの形でMakerブランドを残そうと努力している。例えばMAKEのオンラインアーカイブを残し、サードパーティーにブランドをライセンスしたりできないかと方法を探っているという。これを可能にするため、Maker Mediaは通常の倒産手続きでなく、債務を債権者に一括譲渡する手続きによろうとしている。

ドハティ氏は「Makerコミュニティーが示したサポートに言い表せないほど感激している」と語った。現在、世界で進行中のMaker Faireイベントはそのまま続行されるという。ドハティ氏はOculusの共同ファウンダー、パーマー・ラッキーが出資の可能性に興味を示していると語った。またGoFundMeページもスタートしている。

これはヒドイ。友だちと私はMaker Mediaを助けたい。私はMaker Faireが大好きだ。文字通どおり創刊号からずっとMAKEの愛読者だった!―パーマー・ラッキー

CEOによれば、2016年のレイオフ以後、同社が直面してきた経済的苦難をスタッフはよく理解していたという。SF Chronicleによれば、この3月にはさらに8人がレイオフされた。未取得の有給休暇ぶんを含めて未払分給与は支払われたものの、退職金やこのような場合に通例の2週間ぶんの給与は支払われなかった。

ドハティ氏によれば「この会社はベンチャーキャピタルの投資を受けてスタートしたが、機会を十分に活かせなかった」という。MakerはObvious Ventures、Raine Ventures、Floodgateから1000万ドルの資金を調達したが、「投資家を十分満足させることができなかった。ミッションとしては強い支持を受けているが、ビジネスとして失敗だった。NPOの体制を取ったほうがよかったかもしれない。われわれのプロジェクトでいちばん成功したのは教育関係だった」とドハティ氏はいう。

Maker Mediaに対するコミュニティーの支持は以前として熱烈だ。ドハティ氏によれば、雨天だったにもかかわらず先週のビッグイベント「Bay Area Maker Faire」の入場者は目標を達成していた。MAKE誌には12万5000人の定期購読者があり、YouTubeチャンネルの登録者も100万人を超していた。しかし家賃や製作コストの高騰、またコンテンツが無料のオンラインDIYプロジェクトで直接収入源にならないことなどが経営を圧迫していた。

再生に向けての努力が今後どうなるか不明だが、Maker Mediaはある世代の人々とその家族にテクノロジーとアートのインスピレーションを与え続けてきたことは間違いない。【略】

「Maker Mediaは多くの人々の役に立つことができたと思うが、今日のビジネス環境では私は十分な成果を挙げられなかった」とドハティ氏は結論した。現在のところMaker Mediaは辺土で冷凍状態となっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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