昨年10月に、OpenStackの専業ベンダMirantisは1億ドルの資金調達ラウンドを発表したが、それからわずか10ヶ月後の今回また、同じ額の資金調達を発表した。今度のラウンドはIntel Capitalがリードし、また 同社は、OpenStackの企業向け売り込みに関してIntelとパートナーする。
Goldman Sachs、August Capital、Insight Venture Partners、Ericsson、Sapphire Ventures、およびWestSummit Capitalがラウンドに参加した。先週SECに提出された文書によると、調達額の75%が株式、残りが直接支出だ。
2010年7月にローンチしたオープンソースのクラウドオペレーティングシステムOpenStackは、Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Google Cloudなどの、プロプライエタリなパブリッククラウドインフラストラクチャに代わる製品だ。OpenStackのまわりに、最初は多くのスタートアップが誕生したが、昨年からは大企業がこれらのスタートアップを拾い上げるようになった。2014年にはCiscoがMetacloudを買収し、さらに今年の6月にはPistonを買収した。IBMはBlueBoxを買収し、EMCはCloudscalingを取得した。またこのような整理統合の嵐の中で、企業向けOpenStackデプロイサービスのNebulaはこの春、閉店した。
買収もされず店仕舞いもしなかったMirantisは、Intelとの密接な協働という道を選び、大量の資金を導入して、OpenStackの大企業向け展開を助けている。一応同社は前進してはいるが、これからの問題は大規模なスケーリングだと思われる(後述)。Intelとのパートナーシップにより同社のハードウェア研究所にもアクセスできるようになり、またそのほかのリソースも利用できる。Mirantisの協同ファウンダで社長のAlex Freedlandによると、これらはいずれも、Mirantis単独ではできなかったことだ。
Mirantisは、OpenStackの自称‘ピュアバージョン’を提供している。Freelandによると、そこが大手のOpenStackサービス/プロダクトとの大きな違いだ。“Mirantisはオープンなプラットホームであり、門番も壁もないので、誰でもアクセスし利用できる。それが、コストを下げ機能を充実するための唯一の方法だ”、と彼は語る。
Mirantisのコンペティタは、OpenStackを売っているIBMやCisco、HP、Oracleなどの大企業ばかりではない。VMwareやMicrosoftなどの、成熟度が高く資金状態も良いエンタプライズテクノロジ企業も強敵だ。Freelandの構想では、今回得られた資金とリソース(主にIntelの)により、大企業におけるOpenStackの全面的な展開を手がけられるようになりたい、という。今のところOpenStackは、全社的というより、個々の小さなプロジェクトで実装されることが多い。
彼によると、VMwareやRed Hatも今のような成熟に達するまでに10年近くを要している。OpenStackはまだ、5年の歴史しかない。
一方のIntelにはこのところ、自分のクラウドインフラストラクチャを持ちたいという企業からの、支援のリクエストがますます増えている。Intelのクラウドプラットホーム担当VM/GM Jason Waxmanによると、Mirantisへの投資により、同社のハードウェアのユーザである顧客たちの、OpenStack開発を加速したい、と。
両社の協働により、1年後には目に見えるような成果を上げていたい、と彼らは期待している。またFreelandによると、年内にはこのコラボレーションに関連した事業拡張も行いたい、という。
これが、IntelによるMirantis買収への第一歩、と見る読者もおられると思うが、Waxmanは直ちにその考えを否定した。“買収に関心があるのなら、投資のような余計なことはしないだろう”、と彼は述べる。Mirantisを独立企業として高く評価しているからこそ、投資とパートナーシップという道を選んだのである。しかも、Intel自身がOpenStack導入支援企業になるなんて、そもそも考えられない。
1年足らずで1億ドルのラウンドを2度経験したMirantisは、新たな成長の段階を迎えている。2014年に同社は、Ericssonに対する3000万ドルという、大きなOpenStack関連の売上を計上した。そのことも、今回の投資に貢献している。
今日(米国時間8/23)発表により、同社の資金調達総額は2億2200万ドルになる。