Moon Expressが2000万ドルを調達、月面着陸に向けて本格始動

moon-express-lander-2

Google Lunar X-Prizeに参加中のMoon Expressは、シリーズB1で2000万ドルを調達し、月への処女航海に必要な資金が揃ったと発表した。今回の調達資金を含め、Moon Expressはこれまでに合計4500万ドル以上を、個人やVCのFounders Fund、Collaborative FundさらにはAutodeskなど民間から調達している。

2016年7月に、Moon Expressは民間企業として初めて月への渡航許可を手に入れた。同社は宇宙船MX-1Eを2017年中に月へと飛ばそうとしており、同時にX-Prizeの賞金2000万ドルの獲得を狙っている。

「ついに月への発射に必要なリソースが整いました。私たちのゴールは、地球の社会・経済圏を大部分が未開拓のまま残った8番目の大陸である月へと広げ、学生や科学者、宇宙機関、営利団体のために低価格で月の探索や開発ができるようにすることです」Moon Express 共同ファウンダー兼CEO Bob Richards

Moon Expressが月面への軟着陸を成功させれば、これは民間企業としては初めて、歴史上4番目の偉業達成となる。これまでに月面軟着陸を成功させたのは、全てアメリカ、旧ソ連、ロシアの政府系巨大組織だった。

もちろんこのタイトルを獲得するために、Moon ExpressはイスラエルのSpaceILやインドのTeam Indus(日本チームのHAKUTOが観測機で相乗り)、そしてさまざまな国の組織から成るSynergy Moonといった他のX-Prize参加者を打ち負かさなければならない。それぞれのチームはコンテストへの残留条件として、ロケットの打ち上げ契約をX-Prizeに見せて承認を得なければならなかった。

そして参加者で一番早く月面を500メートル移動し、高画質の動画と画像を地球に送ることができたチームには2000万ドル、2位のチームには500万ドルがおくられる。

おそらくX-Prizeの要件の中で1番厳しいと思われるのが期日だ。賞金を獲得するためには、全ての課題を2017年中に完了させなければならないのだ。ちなみにX-Prize Foundationは、既に一度期日を延ばしている

Google Lunar X-Prizeが特にユニークなのは、参加者が必要資金の90%を民間から集めなければならないと言う点だ。理論的はこの条件によって、利益を重視したビジネスプランが集まり、月に関連したビジネスの発展が加速することになる。

またMoon Expressは、衛星の打ち上げを行っているRocket Lab USAとロケット5台分の契約を結んだ。設立間もないRocket Lab USAは、同社の実験的な宇宙船Electron(Moon ExpressのMX-1Eを月まで運ぶロケットと同じもの)をまだ実際に飛ばせていないが、初めての打ち上げが今月末に予定されている。そして全て計画どおり進めば、Moon Expressの宇宙船は今年中に月へと向かうことになる。

Rocket LabのElectron初打ち上げは今週末を予定。一方NASA VCLSミッションは彼らにとって6回目の打ち上げにあたる予定で今年中に実施される計画。

(編集部注)その後本ツイートには、Rocket Labから「今月はテストを行いませんが、打ち上げ実験には確実に近づいています」という連絡があったと付け加えられている。

複数台のロケットを手に入れること、何か問題が起きてもMoon Expressは複数回チャレンジすることができる。計画では、Rocket Lab USAのElectronがMX-1Eを地球の軌道まで運び、そこでMX-1Eをロケットから切り離し、それ以降はMX-1Eが機体に取り付けられたロケットエンジンを使って月まで移動していく。

そして4日間におよぶ移動の後、MX-1Eは月面に着陸する予定だ。他のチームは探査機を使って500メートルの移動という条件を達成しようとしているが、Moon ExpressはMX-1Eのスラスターを使って500メートル先の地点まで機体を”跳ね”させようとしている。

Moon Express lander on moon

X-Prizeの結果はどうあれ、Moon Expressは月に行くことを何らかのビジネスと繋げようとしている。彼らはいくつもの月面でのロボットミッションを計画しているほか、長期的にはロケットの燃料に変えられる月の水など、月の資源を調査・調達しようとしている。

「月には1兆ドル分の貴重な資源が存在すると分かっており、今後私たちは急成長しているテクノロジーを使って、これまで超大国しかなし得なかったことを起業家ができるようにし、全ての人類のために月の資源を開放するチャンスを掴めるかもしれません」

なお4500万ドルの民間資金は、Moon Expressのオペレーションや製品のテスト・開発、打ち上げ費用などにあてられる予定だ。また同社は既にフロリダ州のケープカナベラル(Cape Canaveral)宇宙ロケット打ち上げ基地17、18のリノベーションに着手しており、今年中の打ち上げに向けて宇宙船のテストやオペレーションがこちらで行われる。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。