Mt. Goxの退場はもっとまともな第二世代のBitcoin起業家の時代を開く

2013年に私がBitcoinのエコシステムを調べ始めたとき、出会うファウンダーたちの半分が少々奇妙な人たちであることに気づいた。

「自分は心理的に『雇用不適格』なんだ」とBitInstantのCEO、Charlie Shremは電話インタビューで私に言った。Shremはイギリスのウェールズ在住の自閉症のハッカー、Gareth Nelsonと共同でBitInstantのシステムを作ったのだという。2人はリアルでは一度も顔を合わせたことがないそうだ。インタビューの間中、Shremは不快なカチカチいう音をさせ続け、話はすぐに横道に逸れた。彼にはあきらかにある種のパラノイアがあった。「誰も信用できない。自分のチームだって信用できない」とShremは私に語った。

次に昨年11月、TechCrunch Japanのイベントで東京を訪れたときに、私は渋谷でMt. Goxのチームに会った。

ファウンダーのMark KarpelesGonzague Gay-Boucheryは弁護士を通じて私に答えた。一時は世界最大のBitcoin交換所だったMt. Goxだったが、BTC ChinaヨーロッパのBitstamp のような強力なライバルに追い上げられ、以前のパートナーのCoinLabを訴える一方でアメリカ政府に500万ドルを差し押さえられていた。

「われわれが何を言っても発言を歪曲されてしまう」とKarpelesは私に言った。(バランスボールの上に座ってロイターの記者の質問に答えているのがKarpeles

残念ながら私は何一つ質問に答えてもらえなかった。私はBitcoinで支払いできるカフェになっているロビーを通って渋谷の街に出た。

それからこうしたBitcoinスタートアップは一つまた一つと失敗していった。

先月、ShremはニューヨークのJFK空港でマネーロンダリングの容疑で逮捕された。昨夜、Mt. Goxのウェブサイトは消滅した。Mt. Goxはマルウェアの攻撃によって75万Bitcoinを喪失したという(これは流通しているBitcoin総額の6%にあたる)。KarpelesもShremもBitcoinの普及と運用ガイドラインの制定に務める世界的NPO、Bitcoin Foundationから脱退しいている。

これまでにもBitcoinは詐欺と盗難の波乱の歴史をたどってきたが、Mt. Goxスキャンダルはその中でも最大のものになりそうだ。1年以上にわたってMt. GoxはBitcoin最大の取引所であり、もっとも目立つ存在だった。

4億ドル相当の資金が行方不明というのはその金額だけでメインストリーム・メディアの大見出しになるニュースだ。Bitcoinの初期には詐欺や不正が発覚すると熱烈な信者の群れが弁護を買って出たものだ。しかしこのスケールの不正となれば、マーチャントや投資家の目に映るBitcoinのイメージは致命的に破壊されただろう。少なくとも数年の後退を余儀なくされたことは間違いない。

今朝のBitcoin相場は490ドルから540ドルあたりで底を打ったようだ。.

東京の起業家とBitcoinのコミュニティーでは「Mt. Goxに不正を働く意図はなかったにせよ、その無能さは重大な過失と評価されるべきだ」だと考えられているようだ。

つまりMt. GoxはBitcoin版のFriendsterということになるのだろうか? Friendsterはソーシャル・ネットワークのパイオニアとして登場したもののスケールに失敗して、後発のFacebookに王座を奪われた。

Bitcoinスタートアップの次世代のファウンダーたちは、もっとまともでウォール・ストリートやワシントンの政治の世界でも受け入れられやすそうだ。彼らは過激なリバタリアンでもないし、見境なく貪欲でもない。

Bitcoinの第一世代とは違い、次世代ははぐれ者のアウトサイダーではない。CircleのCEO、Jeremy Allaireは企業を上場させた経験がある。 彼のBitpayはシリコンバレーでもっとも尊敬されているベンチャーキャピタリスト、Accel、Andreessen Horowitz、Founders Fundから出資を受けている。積極的なBitcoinのエンジェル投資家、Barry Silbertは未公開企業の株式の取引所、SecondMarketを創立し、現在のような有力な存在に育てた。Silbertは独自のBitcoin取引所の設立を準備している。Mt. Goxのもともとのファウンダーで後にKarpelesとGay-Boucheryに売却したJed McCalebも新たな取引所を創立しようとしているという。

アメリカ議会は、昨年驚くほどBitcoinに好意的なところを見せたが、近く資金移動免許を持たないBitcoin業者について調査を始めるという。これは良いことだ。

「短期的には(こうしたスキャンダルは)Bitcoinのイメージにネガティブな影響を与えるだろうが、 システムは次第に成熟しつつあり、運営に透明性を欠いていたり、金融関係の規制に触れたりしたようなプレイヤーは排除されていく」とCoinbaseとBTCJamに出資しているRibbitCapitalのMicky Malkaは言う。

一部の「腐ったりんご」が捨てられ、Bitcoinスタートアップの新しいファウンダーたちの時代が来ようとしている。

–Jonathan Shieberが取材に協力

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

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