Netflix、Disney+の発表を受けても広告付きオプションはまだ計画にないと述べる

Disney(ディズニー)は先週、同社のストリーミングサービスのDisney+に広告付きの定額制を導入する計画を発表したが、Netflix(ネットフリックス)は、自社の顧客向けに同様のオプションを用意することは当面の間、考えていないとしている。今週開催されたMorgan Stanely(モーガン・スタンリー)のテクノロジー・メディア・テレコム・カンファレンス で、NetflixのCFOであるSpencer Neumann(スペンサー・ノイマン)氏は、Netflixは必ずしも広告に反対しているわけではないが、広告付きモデルに傾倒することは「我々の計画にはない」と説明している。

この役員に投げかけられた質問は、Netflixがサービスのエントリープライスポイントを下げる方法として、広告の利用を考えられるかどうかというものだった。そうすれば、Netflixが価格に対してより敏感な市場を含む、よりグローバルな市場で地位を確立しようとする際に、Netflixの競争力を高めることができるだろう。例えば、Netflixが最近会員価格を下げたインド市場などだ。

しかし、ノイマン氏は、Netflixは「長期的な収益の最適化」に注力しており「会員にとってすばらしい体験となるような方法でそれを実現したい」と、同社の現在のサブスクリプションモデルを擁護している。

広告を導入することで、確かにサブスクリプションの料金が下がり、その結果、より多くの登録者が集まるかもしれないが、エンドユーザーの体験が損なわれる可能性もあるというのが、ここでの基本的な考え方のようだ。もちろん、CFOは、Netflixの計画が変更された場合に備えて、少しヘッジをかけ、もし同社が優れたユーザー体験を提供するという目標を達成できる広告付きスペースで活動する方法を見出したら、おそらくそうするだろうとも付け加えた。「決して絶対にないとは言いません」と述べた。

「今現在、私たちはすばらしいモデルと、グローバルに展開できるサブスクリプションビジネスを持っていると考えています」とノウマン氏はいう。「2年前の売上は200億ドル(約2兆3000万円)程度でしたが、今は300億ドル(約3兆5000万円)です。世界のどの地域でも健全な成長を遂げています」と語る。

もちろん、この威勢のいい言葉は、Netflixのビジネスの状況を完全に反映しているとは言えないかもしれない。今日の投資家たちは、たとえそれがサービスに広告を追加して価格を下げることであっても、Netflixがどこまで目先の成長を追い求めるべきか議論しているのである。そして、Netflixは2021年第4四半期の決算で、加入者数の伸びについてウォール街の予測を下回ったばかりだ。同社は当時、この落ち込みは一時的なもので、人気番組 『ブリジャートン家』 の第2シーズンなど、より期待されている番組のいくつかが四半期後半に開始されたことを反映したものだと主張していた。しかし、同社は株主宛ての手紙の中で、ライバルストリーマーとの競争激化が「当社の限界的な成長に影響を与えている可能性がある」と認めている。

現在、Netflixは、HuluやPrime Videoといった古くからのライバルに加え、Disney+、HBO Max、Paramount+、NBCU(NBCユニバーサル)のPeacockといった多くの新しい競合に直面している。

Paramount+とPeacockは、広告付きのオプションでスタートした。HuluはCM付きとCMなしの両方のプランがある。また、HBO Maxは2021年、広告付きサブスクリプションを開始した。そして今、Disney+が参入している。そのため、Netflixは、低価格の広告付きプランを持たないトップストリーマーの中で、ほぼ唯一の存在となっている。Amazon(アマゾン)のPrime Videoが広告を掲載していないのは事実だが、これは非常に異なるビジネスモデルの一部である。Prime Videoは、Amazonの高速配送オプションに代表される他の多くの特典を含む、より大規模で高価な定額制サービスの一部に過ぎないからだ。

一方、Netflixは、一部の市場で値下げとは正反対のことを行っている。代わりに、価格を上げているのだ。米国では、1月にNetflixは、プランによって1ドル〜2ドル(約1116円〜233円)の値上げを行った。今日(米国時間3月10日)、Netflixは英国とアイルランドでも値上げをすると発表した。

ノイマン氏は、この競争がいずれNetflixの広告に対する考え方に影響を与える可能性があることを認めた。

「私たちの計画にはないことですが、他社はそこから学んでいます。だから、他社がやっていることを無視することはできません」と認めた。「しかし、今のところ、それは我々にとって道理にかなっていないことなのです」と語る。

CFOは、カンファレンスでNetflixのビジネスの他の側面についても語った。彼は、ロシアの恐ろしいウクライナ侵攻を受けてNetflixが最近ロシアから撤退したのは、戦争の中で起こっている「本当の人間の苦しみ」を受けてなされた決定であることを最も重要な点として指摘した。しかし、その機会に関連して、ビジネスの観点からは、同国における制裁、規制の問題、決済に関する課題もあり、そこで事業を行うことはあまりにも困難となった。ロシアは、Netflixの収益の1%未満を占めているという。

Netflixの新興ゲーム事業についても簡単に質問されたが、ノイマン氏は、これを非常に初期の段階にあると特徴づけた。最初の12カ月は、ゲームをホストして世界中のアプリストアに配信するためのインフラという意味で「配管を正しくする」ことに集中していた。現在、同社は、ゲームの定着率やプレイ時間、会員が映画やテレビに対してどのような価値観を持っているかを学ぶことに取り組んでいる。

また、Netflixは現在までに約14のゲームをサービス上でリリースしているが、年内には「その何倍ものゲーム」をリリースする予定であり、新しいタイトルをより早く展開する計画を示していると述べた。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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