ソフトバンク・ビジョン・ファンドやGreylock(グレイロック)などの投資企業から10億ドル(1070億円)以上を調達した自律型ロボットのスタートアップであるNuro(ニューロ)は米国時間5月28日、米国の大手薬局チェーンのCVS Pharmacy(CVSファーマシー)と提携して、処方薬の配達試験をヒューストンで実施すると発表した。この試験運用でNuroは、まずはトヨタ・プリウスをベースにした自動運転車を使い、あとで自社製R2配達ロボットに切り替えていくという。開始予定は6月となっている。
今回の提携によりNuroは、食料品を超えて医療へと範囲を拡大することになる。先月、同社はその自動配達車を使って、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック対応として建てられたカリフォルニアの仮設病院への食料品と医療用品を配達するなど、医療分野への足がかりを作っていた。
今回の試験運用は、テキサス州ベルエアーにあるCVS Pharmacyの1店舗を中心に行われ、3つの郵便番号の地域が配達の対象となる。利用者は、CVSのウェブサイトまたは薬局アプリで処方薬を注文すると、そこで自動配達のオプションが選べるようになる。このとき、処方薬以外の商品をついでに頼むことも可能だ。自動配達車が到着したときに、利用者は自分の身元証明を行うと品物が受け取れるようになる。CVSの利用者であれば配達料金は無料。
「処方薬の配達は、次第に需要が高まっています」と、CVS Health(CVSヘルス)店舗運営担当上級副社長Ryan Rumbarger(ライアン・ランバーガー)氏は、事前に用意されていた声明の中で述べている。「私どもの薬局へ足を運んでいただくことが難しい今の時期、お客様がいち早く必要なお薬を入手できる方法を増やしたいと考えています」。
Nuroは、すでにヒューストン地区での運用を開始している。Wlamart(ウォルマート)は、昨年12月にヒューストン市場でNuroの自動運転車を使った食品の自動配達を試験的に行う計画を発表した。この試験運用では、自動配達を望むヒューストンの一部の人たちを対象に、Walmartのオンラインストアで購入した商品をNuroの車両が配達する。これには、運転者やその他の人を乗せず、品物だけを運べるNuroの自社開発配達車両R2とプリウスが使われる。
Nuroはまた、2018年、自動運手化したプリウスと、R1として知られる初代の自社開発ロボットを使った試験を、スーパーマーケット大手チェーンのKroger(クロガー)とその傘下のスーパーマーケットFry’s(フライズ)との提携で進めている。R1は、アリゾナ州フェニックスの郊外スコッツデールで、安全のための運転者を乗せない無人配達サービスにも使われていた。2019年3月には、Krogerの配達サービスをヒューストンに移し、自動運転化したプリウスで開始している。
医療用品や食料を自動配達する、人と接触しないNuroのプログラムも続いている。昨年4月に始まったこのプログラムでは、NuroのR2ロボットを使って2つの施設で実施された。ひとつはサンマテオのイベントセンター、もうひとつはサクラメントのスリープ・トレイン・アリーナだ。これらは現在、新型コロナウイルス患者のための仮設病院になっている。Nuroは、毎週、双方の施設の50人以上の医療スタッフに食事と用具を配達している。
仮設病院でのプログラムがいつまで続くかは不透明だ。先週、この2つの仮設病院に入院していた患者は25人だった。スリープ・トレイン・アリーナは、カリフォルニア州機器管理局を通じて6月30日まで患者を受け入れる。この仮設病院は、今年末まで山火事の被災者のためのシェルターとして使われる可能性もある。
画像クレジット:Nuro
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(翻訳:金井哲夫)