Nvidiaの組み込みシステム用コンピューティングプラットホームJetsonに、次世代製品が登場した。組込みシステムといっても、開発対象は主に、交通監視カメラや製造用ロボット、スマートセンサーなどネットに接続されるデバイスで、今回の新製品Jetson TX2は前世代のTX1の倍の性能を持ち、また省電力モードでは本来の半分以下の電力消費で同じ処理能力を発揮する。
TX2はPascalベースのGPUと、Nvidia製64ビットクワッドコアARMチップ2基、RAM 8GB、高速フラッシュストレージ32GB、という構成である。ネットワーキングは802.11ac Wi-Fi、Bluetooth、1GB Ethernetを内蔵する。これらによりネットワークのリーチが長くなり、エッジデバイス(ネットワークの末端のデバイス)が分散ニューラルネットワークを動かして、オブジェクトや音声、まわりの環境などを正しく判定し、自動航行などを助けることができる。
Jetson TX2と並んで発表されたJetPack 3.0はJetson系列用AI SDKの新バージョンで、ディープニューラルネットワーク向けにはTensorRT 1.0, cuDNN 5.1をサポートし、コンピュータービジョンではVisionWorks 1.6、およびそのほかの最新のグラフィクスドライバーとAPIsをサポートする。
Ciscoは、同社のエンタープライズネットワークデバイスSparkに、TX2とJetsonを利用して顔や音声認識など、ローカルなAI機能を実装する、と言っている。それらの機能により、確かにセキュリティや認証が末端レベルで強化されるだろう。またTX2はAIを研究しようとする学生や研究者たちにとって、費用が非常に安上がりですむ。今日ローンチした新しいJetson開発キットは、アメリカとヨーロッパの予約価格が599ドルで、3月14日に発売される。
一方TX2モジュールは第二四半期に399ドルで発売される。既存のJetson組み込みコンピューティングプラットホームTX1とTK1は、値下げして提供を続ける。
このようにエッジデバイス(ネットワークの末端)が高度なAI機能を持つことにより、コネクテッドシティ(インターネットに接続された都市)はインテリジェントシティ(多様な電脳機能を持つ都市)へと成長する。電脳機能はもはや、中央のサーバーが独占するものではない。末端のさまざまな部位が何らかの知能を持つことによって、ネットワーク全体でものごとがスムーズに動くようになる。そしてネットワークの各ノードが知性主体ならば、インフラストラクチャの継続性とか、レイテンシーの懸念などを心配する必要もなくなる。Jetson TX2による世代更新など、エッジの機能・性能の向上により、未来がまた一歩近くなる。