Omnispaceは63億円を調達し衛星と5Gを単一のユビキタスネットワークに統合

この数年間、周波数帯域が広がり遅延が減ると無線事業者やスマートフォンメーカーが5Gを大げさに宣伝しまくり、大騒ぎになっている。しかし、消費者の関心を多く集めている5Gだが、その次世代無線技術のもっとも重要な用途は、むしろ事業者の側にある。わかりやすい例が自律運転車だ。それが機能するためには、エッジコンピューティングと低遅延高帯域幅通信の組み合わせが欠かせないとされている。

だが、おそらく自律運転車よりもずっと面白くて、今すでに実用化可能な利用法がある。農場では、ネットワーク接続が農器具の管理、家畜の監視、そして農作物の育成を最適化する水利用の分析の役に立つ。物流業界では、グローバルなサプライチェーンの監視や、世界の港から港へ慎重に運ばれるコンテナの追跡などが欠かせない。

ただひとつだけ問題がある。基地局の設置が採算に合わないために数が少なく間隔も広く空いてしまっている僻地では、5G無線通信を導入しにくいという点だ。ましてや洋上には、無線基地局などひとつもない。

ワシントンD.C.を拠点とするOmnispace(オムニスペース)は、ユビキタスな5G無線ネットワーク接続を、地上の無線技術と人工衛星のハイブリッドで法人ユーザーに提供したいと考えている。同社のアイデアは、地上と宇宙という2つの異なるモードをひとつのパッケージに凝集することで、農業や物流などの法人エンドユーザーが、そのIoT接続をいくつもの異なる技術間で転送する必要なく、安定した5G接続を確実に得られるようにするというものだ。

本日(米国時間2月2日)、同社は株式投資6000万ドル(約63億円)の調達を発表した。この投資ラウンドは、現在急成長中のFortress Investment Groupでクレジット運用の責任者を務めているJoshua Pack(ジョシュア・パーク)氏と、同社のSPACのひとつFortress Value Acquisitionの主導によるものだ。また、以前からの投資者であるColumbia Capital、Greenspring Associates、TDF Ventures、Telcom Venturesも参加している。

Omnispaceは、周波数割当資産、なかでも2ギガヘルツ周辺の「Sバンド」帯域のための持ち株会社として2012年に創設。後に、倒産した衛星通信プロバイダーICO Globa(アイシーオー・グローバル)の残党によって買収された。2016年初めにOmnispaceに加わったCEOのRam Viswanathan(ラム・ビスワナータン)氏によると、同社は、さまざまな保有資産をテクノロジーのレイヤーを使って統合することを考え始め、やがて、IoTの特定分野に向けたグローバルな5G無線接続の活用という好機を探り当てたという。

「5Gの展開は、移動体通信事業者のカバー範囲と展開の仕方によって制限されます」とビスワナータン氏。従来型の地上用の無線技術に頼るかぎり「地上の全域、または全顧客をカバーすることできません」。「衛星の主要ユーティリティーは、ネットワークのカバー範囲を、僻地にまで大きく広げます」

ビスワナータン氏は、衛星と無線通信の市場で数十年の経験を持つ。直近では、インドを中心としたネットワーク接続スタートアップDevas Multimedia(ディバス・マルチメディア)を共同創設し、同社の衛星打ち上げのキャンセルを巡ってインド政府と長期にわたる法廷闘争を続けてきた。最近になってアメリカの裁判所は、インドの政府関連商業化法人に対して、12億ドル(約1260億円)の賠償金をDevasに支払うよう命じた

SpaceX(スペースエックス)のStarlink(スターリンク)プロジェクトと比べたくなるが、Omnispaceは消費者向けのブローロバンド市場には目を向けていない。むしろそのターゲットは法人とIoTユースケースだ。さらにOmnispaceは、異なるテクノロジーを組み合わせたハイブリッドネットワークであるのに対して、Starlinkは宇宙での展開に特化している。

Omnispaceは、Fortressからの今回の新しい投資資金を使ってサービスの肉付けを行い、移動体通信事業者数社との試験運用を完了させ、2023年からのネットワークの商用運用開始に向けた準備を進める予定だ。ビスワナータン氏は「あらゆる地域をカバーする足場」を築き「サービスのグローバル展開を目指す」と話している。

Omnispaceは、宇宙戦略を実行するためにフランスの宇宙防衛複合企業に属するThales Alenia(タレス・アレーニア)と提携した。地上では、所有する帯域資産と複数の移動体通信事業者とを結び付けて、ひとつにまとまったソリューションを生みだそうとしている。まずは、アジア太平洋地域と中南米地域で重点的に展開する。

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画像クレジット: Yuichiro Chino / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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