PayPalが銀行口座への即時送金に対応、現在は米国のみで手数料は1%

商品をオンラインまたは店舗で購入するのにクレジットカードや現金、銀行振込に代わって有力な選択肢となるPayPalは米国時間3月12日、ギグエコノミーワーカーなどさらに多くの人が利用できる新機能を追加した。これは、銀行とだけでなくStripeやSquareといった比較的新しいサービスとも競合するものだ。PayPalは銀行口座へ即座に送金できるサービスを開始する。このサービスでは、PayPalを介してお金を受け取った人はそのお金をすぐさま使う予定がなければ、自分の銀行口座に移せる。

このサービスは米国内の消費者向けに展開していて、今後数週間のうちに事業所も利用できるようになる。PayPalのEVPでCOOであるBill Ready氏はインタビューで米国外での展開にも取り組んでいると語った。

銀行口座への即座振替は、米国ではJPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)とのパートナーシップを通じて利用できるようになった。JPモルガン・チェースは、大手銀行がつくったプラットフォームThe Clearing Houseによって構築されたリアルタイム支払いネットワークにアクセスすることができる。PayPalはこの機能を実装する初の会社だとReady氏は述べた。

電子財布を提供している他のサービスと同様、PayPalにとってもユーザーが取引を続けるために自分の資金を電子財布(PayPal口座)に持っておくのが理想だ(なぜなら、それによりPayPalは儲けているからだ)。しかし現実としては、同業他社と同じくPayPalも、サービスの使い勝手を良くするために顧客にそれ以外の選択肢やフレキシビリティーを提供するよう努めている。

その話の流れで言うと、PayPal外への振替は、SquareやStripeに負けないために近年同社が取り組んできた分野だった。そしてその取り組みは消費者に支持されていることもわかっている。

昨年PayPalは、何日も待たずして取引のお金にすぐさまアクセスしたいセラーをターゲットとした“Funds Now”を立ち上げた。それまでは支払いが処理されてそのお金が口座に振り込まれるまでに数日かかっていた。しかし、Funds Nowは主にプラットフォーム上のセラーを対象としていた。

別のクイックな振替サービスはそれより少し前の2017年に始まった。このサービスではPayPalとVenmoのユーザーがデビッドカードに送金できる。これまでに何十億ドルもの取引があった、とReady氏は語った。だが、気を付けなければいけないのは、すべての人がVisaやMastercardのデビッドカードを持っているわけでもなければ、そうしたカードで現金化したいわけでもないということだ。

「小さな事業者や個人にとって、これは問題だった。多くがデビッドカードを持っていないため、今回のサービスは目を見張る拡張だ。今彼らは銀行口座からお金を引き出せる」とReady氏は話した。

銀行口座への即座振替の手数料ははデビッドカードへの送金と同じだ。送金額の1%で、最大手数料は10ドルとなる。

今回のサービス以前も、PayPalの2億6700万の個人口座ユーザーと2100万のマーチャント・アカウントユーザーはPayPal口座のお金を銀行口座に移すことはできた。ただし、その取引が完了するまでに数日、もしくはそれよりも長くかかっていた、とReady氏は話した。それは、古いACHネットワークの活用に頼っていたからだ。

Ready氏は、今日のニュースで特に恩恵を受けると考える特定のセグメントを強調した。それは、いわゆるギグエコノミーワーカーと呼ばれる、週払いまたは固定給で支払いを受けるのではなく、行なった仕事に対して支払いを受ける人たちだ。そうした人たちはおそらく、より良い方法でお金を手にしたり管理したりする必要を感じている。PayPalからお金を自分の銀行口座に移すいい方法があれば、そうしたギグエコノミーワーカーは自分の仕事に対する支払いを受けるのにPayPalを使うだろう。これは長い目で見るとPayPalの取引規模拡大に寄与することになる。

「これは、我々のプラットフォーム上にある資金へのアクセスをスピードアップするための幅広いイニシアチブの一環となる。またグローバルの働き方の変化を認めるものでもある」とReady氏は語った。「新しい雇用拡大の90%は非典型雇用者で、成長中のセグメントだ。ギグエコノミーは資金への素早いアクセスに頼っている」。

計画では将来さらなる機能を追加する予定だ。「これは我々が取り組んでいることの一部だ。ギグエコノミーワーカーで意欲的な人の期待に応える新しい機能を展開したい」とReady氏は話した。

イメージクレジット: kentoh(Image has been modified)

原文へ、翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。