PDFベースの共同編集・電子署名サービスのAnvilがグーグル系VCから5億円超を調達

リモートワークによってオフィスが必要とするツールは、複数のミーティングを横断する非同期の通信やチャットに変わってきたが、コラボレーションはチャットの簡素な小さな泡の中で完結するものばかりではない。

米国サンフランシスコのスタートアップAnvilは、企業のコラボレーションのかたちをささやかなPDFで変えようとしている。AnvilのオートメーションプラットホームはGoogle Formsをレベルアップして退屈なPDFを動的なフォームでデジタイズし、これまで複数のソフトウェアを使ってアクセスしていた複数のプロセスを統一する。ユーザーはこのプラットホームを利用して、ペンを手に持つことなくドキュメントの作成、共有、書き込み、署名、記入、ダウンロードなどができる。

米国時間6月3日、AnvilはGoogleのGradient Venturesがリードするシードラウンドで500万ドル(約5億4500万円)のシード資金を調達したことを発表した。同社はDocuSignなどと競合するが、AnvilのCEOであるMang-Git Ng(メン-ギット・ウン)氏によると、確かにDocuSignは「ドキュメントの完成と実行の面では優れているが、ドキュメントを実際に作るという部分が弱い」という。AnvilはDocuSignをすでに使っている顧客のニーズに応じて、Anvilのサービスを彼らのワークフローに統合できる。しかしDocuSignのワークフローをAnvilが部分的に再製して、ドキュメントオートメーションのエンドツーエンドのソリューションを構築することもできる。

Anvilは当初、ウェルスマネジメントや銀行を顧客として狙っている。料金は、個々のプロジェクトベース、または月額99ドルから始まるサブスクリプションプランだ。

Anvilのチーム

同社は最近、ある銀行をパートナーとして、新型コロナウイルス関連の中小企業救済事業であるPaycheck Protection Program(PPP)の申請用ポータルを作ったとき、同社サービスの立ち上げてすぐに使える迅速軽快ぶりを自らテストしてみた。ウン氏によると、そのときSunrise Bankの顧客は総額1億2700万ドル(約138億円)のPPPローンを申請し、Anvilがその作業を手伝った。そのときの体験を同氏は「それは私たちにとってあわただしい体験だった。申請内容に関する最初の会話からデプロイまで、6日を要した」、と語っている。

新型コロナウイルスのパンデミックは、確かに紙を使う処理のデジタル化を加速している。ウン氏によると、多くの企業がリモートになっていくにつれて同社への関心も急増し、特に新人研修やコンプライアンス、社内アプリケーションなどの分野ではペーパーワークをもっとコラボレーション可能にしデジタルフレンドリーにしたいという新しいニーズも生じている。

同氏は「今見えている全体的なトレンドとしては、これらの業界の人びとがデジタル化をもっと前向きに考えるようになっているが、しかし一般的に言えば、大企業でこのトレンドの最前線にいる人たちは効率の向上と費用の節約が最大の関心だ。でもロックダウンになってからは、それらをリモートでやる方法を考えなければならないし、リモートで仕事をするためのソリューションが最前線の課題になっている」と説明する。

Anvilのシードラウンドには、Citi Ventures、Menlo Ventures、Financial Venture Studio、および122 Westが参加した。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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