PromisePayとUncharted Powerの女性起業家が語るスタートアップおけるピボットのヒント

スタートアップを立ち上げて成長させるのは容易ではないが、新しい事業へ方向転換(ピボット)して同じように成長させるのは、もっと難しいと言われている。しかし、不可能ではない。

PromisePay(プロミスペイ)の創業者でCEOのPhaedra Ellis-Lamkins(フィードラ・エリス=ラムキンス)氏と、Uncharted Power(アンチャーテッド・パワー)の創業者でCEOのJessica O. Matthews(ジェシカ・O・マシューズ)氏は、どちらもそれを経験している。TechCrunch Disruptでは、両者それぞれの、しかしどこか類似性のあるヒントを投げかけてくれた。

以前はPromise(プロミス)の名称で知られていたPromisePayは、保釈金が払えないという理由だけで投獄されている人々の数を減らすことを目的とする保釈金改革スタートアップとしてスタートした。現在は、交通違反の反則金、裁判費用、子どもの養育費などの援助に重点を置いている。

「私たちは、重大な存続の危機に直面しました」とエリス=ラムキンス氏は話す。「Promiseで、私たちは大量投獄を終わらせ、刑務所の受刑者の数を減らすことに注力していました。そのため、滑り出しはとても順調で、収益も上がりました。そして気づいた根本的な問題は、私たちが効率を上げると、司法制度が人々を収監する効率が上がってしまうということでした。

私たちの間違った想定、つまり司法制度を効率化すれば司法制度に捲き込まれる人の数を減らせるという考え方に即した効率化は果たされませんでした。そこで私たちは、このままの会社では安定した成長はないと判断し、投資家に会いに行きました。利益が出ているときにこんな話を持ち出すのは心苦しかったのですが「この方向性では長続きするとは思えない、これは私たちの取るべき道ではないと伝えました」。

投資家に、法執行機関に技術を売る人たちもいるが、Promiseがやりたいのは人々の解放だと話した。彼女は売り込む相手を間違えていたことに気づき始めた。司法刑事制度に捲き込まれた人たちを気にかけているが、彼らはそうではない。そこが齟齬があると主張するクライントに彼女は話を持ちかけていたのだ。エリス=ラムキンス氏は、刑務所や牢獄に売り込みをかけるのをやめたいので、資金は返すと投資家たちに提案した。

そして彼女は、なぜ人は投獄されてしまうのかを考え始めた。「幸運なことに、それが成長を促したのですが、私は貧しい人たちや、黒人やヒスパニックに便乗して会社を成長させたいとは思っていません。なぜなら、ほかにもっといい方法があるからです」と彼女は言う。「しかし、利益を上げている市場を放棄するというのは、その場になると怖いことでした」。

この判断で揉めた投資家が一人もいなかったと彼女から聞いて、安心した。

マシューズ氏も、創設当初はUncharted Playという名称だった自身の会社Uncharted Powerで比較的似たような体験をしたことを話した。彼女の会社の最初の製品は、数時間これで遊ぶと照明を点灯できるほどの電力が充電される発電サッカーボールだ。後に彼女は、この技術を携帯電話に充電ができるベビーカーに応用した。

しかし、Uncharted PlayでシリーズA投資を獲得した後、マシューズ氏は自分の会社はインフラ整備に専念すべきだと気がついた。彼女は、会社の最終目標は生活に必要なインフラを人々に届けることだと考えていた。サッカーボールでそれを実現するのは、どう考えても難しかった。

「私たちは、そうした製品の製造技術を磨き、売り込みをかけて規模の拡大もできるようになりましたが、単に利益と社会的影響力とのバランスではなく、社会的影響力を求めようとしたとき、支えてあげたい人たちと同じグループに自分も属していることを自覚していた私は、成功したら問題は解決されるのかしらと椅子に座ったまま考えてるような気持ちでした」。

マシューズ氏は、それでは問題解決にならないと気がついた。そうして「数百万ドル規模の収益と64%の売上げ総利益率をもたらす製品と別れを告げることになったと」彼女は振り返る。

だが、それが功を奏した。昨年Uncharted Powerは、未来の電力インフラに関する彼女の論文を評価した投資家から追加投資を調達できたのだ。「それは私たちにとって大きな瞬間でした」と彼女は話す。

マシューズ氏もエリス=ラムキンス氏も、インポスター症候群(自己を過小評価してしまう傾向)と成功の評価について人々に語るべき、輝く貴重な体験の持ち主だ。この鼎談で語られたその他のハイライトをまとめてお伝えしよう。

インポスター症候群と代理症候群について

エリス=ラムキンス氏:テック企業は、人間への投資を著しく怠っていると感じています。そのため彼らは何も知らず、企業が成長する中で忘れさられてゆきます。私たちのような企業が他にもあることを知ってもらえるよう、手助けをする義務が私たちにはあります。

マシューズ氏:それはインポスター症候群ではなく、代理症候群です。私もまったく同様に感じるからです。シリーズA投資を獲得したとき、私はすぐに「大変だ、この人たちのお金を無駄にしてはいけない」と思いました。非常に重く感じました。もし私たちが頑張らなければ、それは私たちだけの問題ではなく、私たちに似た人たち全員の問題になると。

成功の評価

エリス=ラムキンス氏:見るべき点として、どれだけテクノロジーが私たちの社会を全般的に改善したかもあります。それが成功の評価です。成功を評価するとき、結果だけを見てはいけません。その影響が実際の利益よりも大きい場合に、10億ドルの利益を上げたり、評価額10億ドルの企業を所有できたりするのだと思います。そこが非常に重要です。

マシューズ氏:「社会的企業」という言い方をやめましょう。たわごとです。企業は企業。問題は問題。問題を基準にした価値システムを作るべきです。ほかにも増して重要な問題というものがあります。それを知ることは、つまり、そのことを誰よりも理解している企業創業者を支援するということです。そうして問題を乗り越えることができるのです。

画像クレジット:Sasha Craig Photography / Christopher Horne

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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