SaaSアプリケーションのオンプレミスバージョンを簡単に提供できるコンテナツールReplicated

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SaaSの企業がそのアプリケーションのオンプレミスバージョンを、もっと容易に提供できるように助けるReplicatedが今日(米国時間6/23)、150万ドルのシード資金の獲得と、ベータに参加している顧客企業を発表した。

同社はDockerのコンテナ技術を利用して、デベロッパが一度だけ書いたコードからアプリケーションのまったく同じ二つのバージョンを作り出す。ひとつは通常どおりクラウドにインストールされるバージョン、もうひとつはアプリケーションをプライベートクラウドや自社のデータセンターに置きたいと望む顧客のためのバージョンだ。

また、同社のベータに参加している企業は、Travis-CICode Climate、そしてNPMだ。いずれも、この生後9か月の企業(Replicated)にすでに1週間あまり協力している。

そしてシード資金は、ラウンドを仕切ったのがBoldStartで、これにFounder CollectiveとMucker Capital、TenOneTen、WonderVC、そしてWTIが参加した。また、David Lee(元SV Angel)やTom McInerney、GitHubのファウンダTom Preston-Wernerなどのエンジェルたちも参加している。

企業ユーザとSaaSの相性は必ずしも…

ReplicatedはファウンダのGrant MillerとMarc Campbellにとって二つ目のスタートアップで、最初はカスタマサービスをモバイルのチャットでやる、というアプリLook.ioを立ち上げ、それは2012年にLivePersonに買収された。

その後二人は2年間LivePersonで仕事をしたが、そのとき、問題に気づいた。大企業にはアプリケーションをSaaSでは使いたくないが、そのアプリケーションそのものは欲しい、という場合がある。しかし多くのSaaS企業には、別途オンプレミスバージョンを作ってメンテしてサポートしていく余力がない。

当時は、Dockerに代表されるコンテナ技術の黎明期だった。コンテナによって企業は、ポータブルなアプリケーションを作れる。そしてアプリケーションがポータブルであれば、“LivePersonなどの企業はアプリケーションのDockerイメージをユーザ企業に提供してファイヤーウォールの背後で動かしてもらえる”、とMillerは語る。

コンテナがなければ、顧客が求めているオンプレミスバージョンは二つ目のプロダクトとして作らざるをえない。それは時間と費用がかかるだけでなく、うまくいかないこともある。コンテナはこの大きな問題を解決してくれるので、MillerとCampbellにとっては渡りに船だった。

単なるインストーラではない

しかしReplicatedは、単純なインストレーションツール以上のものだ。それはまず、Active DirectoryやLDAPなどの認証システムを統合し、インスタンスに関する情報をダッシュボードで提供し、アップデートがあればユーザに報告、オーディティング(システム監査)ツールやバックアップサービスまで提供する。

Replicated administrative dashboard.

コードベースが二つも要らないのだから、アプリケーションの制作提供企業にとってReplicatedはとても便利だ。Repricatedにエンジェルとして投資しているGitHubのファウンダTom Preston-Warnerは先週、彼の個人的なブログでこう書いている:

“GitHubでは、GitHub独自のインストーラを作ろうとして何度も挑戦した。それは、インストールする環境のセキュリティを確保し、ライセンス管理を自動化し、シングルサインオンサービスを統合し(LDAP, Active Directory, CASなどなど)、検索できるオーディットシステムがあり、顧客がレビューできるサポートバンドルをサポートし(ログなどの診断出力)、さまざまなバックアップ戦略が可能で、そのほか、数えきれないほど多くのエンタプライズ的機能を具備していなければならない。それらの課題はすべて、GitHubのエンタプライズ利用をこれまで阻(はば)んできた要素なのだ。

Replicatedは、上にPreston-Warnerが挙げている問題をすべて解決し、顧客はエンタプライズインスタンスを驚くほどはやく作れる。同社のデモページは、8分ですべて終る、と主張している。現実にはもっと長くかかるかもしれないけど、重要なのは、これまでのような多大なる苦労が要らない、簡便である、という点だ。なおPreston-Warnerは今GitHubにいないし、GitHubはReplicatedの顧客ではない。

昨日(米国時間6/22)行われたDockerConで、コンテナ技術の主な選手たちが協力してコンテナのオープンスタンダードを作ることになった、と発表された〔関連記事〕。それは、Millerにとっても朗報だ。コンテナが標準化されれば、Replicatedの仕事は理想的な単純性に達する。CoreOSなどをはじめ、いろんなコンテナ技術をサポートしなくてもすむからだ。そのスタンダードに対応した製品を一つだけ作れば、あらゆるSaaSベンダが自分のプロダクトにそれを使えるようになる。

Replicatedはまだ歩き出したばかりだが、彼らが最初のスタートアップの成功をreplicate(複製する、再現する)できるなら、ほんとにすばらしいことだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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