株式市場は内外ともさんざんだったという記事を先ほど書いたところだ。新型コロナウイルス、COVID-19の脅威が続く中で原油安というダブルパンチを受けて米国の主要経済指標はすべてダウンした。しかしテクノロジー系企業に強いNasdaqの下げ幅は最小で、7.29%下げの7950.68ドルにとどまった。
ただ留意すべきポイントがある。テクノロジー業界は全体としては他の米国の株式指標ほど下落しなかったが、肝心の部分、つまりSaaSおよびクラウド企業の株価の下げ率はダウ平均やS&P 500を上回った(Bessemer-Nasdaq指数)。
実際、クラウド企業をバスケットにしたBVP Nasdaq Emerging Cloud指数は8.28%下げの1134.51ドルで引けた。これは2019年10月の水準に戻ったことを意味する。 バスケットの揺れを考えても、この指数は過去52週の安値をわずか7%上回るに過ぎず高値から21%も下げている(Financial Timesによる過去52週のデータ)。
伝統的基準でいうと、弱気相場と分類するためには最近の高値から20%下落していなければならない。SaaSとクラウドの株はまだここまで達していないが「調整(correction)」の局面には入っている(最近の高値からの10%の下げを「調整」という)。他の主要な指数は弱気相場をわずかに上回っているが、明日、3月10日にはほぼ間違いなく弱気相場になっているだろう。残念ながらここに落ち込んだのはSaaSが最初だ。
ただし(まだ)慌てる必要はない
SaaS株の値動きが警戒すべき領域に近づいたのはわずか3日前だ。私の記事(Extra Crunch)にはTwitterでかなりの反発があった。SaaSの成功に賭けている投資家には私がこのカテゴリー自体をディスっているように感じられたようだ。実際はその反対で、SaaS企業の株価は依然として十分に高い。投資家が他業種の株以上にSaaS株を売るということも考えられない。
このカテゴリーの企業が史上最高値をつけたのは2月中旬頃、わずか数週間前だが、今はSaaS株の見通しに対して、(少なくとも)短期的な楽観主義は減じた。しかし、今日の暴落は広範囲に及んだものの、株価売上高倍率(PS Ratio)を見ると、さほど悪くなってはいない。たとえば、
だからといって、SaaS企業が今日受けた打撃がなくなるわけではない。多くのSaaSスタートアップは、このカテゴリーのリーダー企業の株価が下がったことを見て深刻な痛みを感じたに違いない。しかしSaaSのトップ企業の運営は順調であり、その地位がゆらぐ気配はない。カテゴリー全体を見渡しても株価は十分高い水準にある。なるほど調整が入ったことは確かだが、今のところそれだけだ。もちろん今日のような下げが何度も続くようなことになれば心配し始めねばならない。
画像:Getty Images
【Japan編集部追記】YChartのPS比では、IBMは1.381、Oracleは3.986、Microsoftは8.634となっている。
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(滑川海彦@Facebook)