SAPは今日(米国時間5/5)、Appleと幅広い提携を発表した。iOSをSAPのエンタープライズ顧客ベースに拡大する。この発表のほぼ2年前、AppleはIBMと同様の提携契約を結んでいる。
SAPのデジタルエンタープライズプラットフォームのプレジデント、Steve Lucasは、両契約に類似点があるのは当然だが ― 大きなエンタープライズ企業がAppleと契約した ― 大きな違いがあると言う。
まず、SAPは厳然たるエンタープライズソフトウェア会社であり、ERP製品、SuccessFactors、あるいはConcur等、同社が開発した全ソフトウェアをアクセスできるクラウドプラットフォームを作っている。この中核部分は、間違いなく差別化要因だと彼は考えている。
それでも似た点はある。IBMと同じく、SAPはAppleと密接に作業することによって、その徹底したデザインセンスを取り組みに生かそうとしている。この提携の目的は、iPadおよびiPhoneでの業務を革新することに留まらない、とLucasは言う。
Appleがエンタープライズ市場に大きく進出したがっていることは自明であり、この種の契約は同社のエンタープライズでの位置づけを確立し、従来PC世界 ― 即ちMicrosoft領域 ― だった企業にAppleハードウェア製品を売る推進力になる。
こうした提携を後押しする主な要因は、iPhoneとiPadの驚異的な人気だ。社員はこれらの機器を職場に持ち込むようになるにつれ、企業にカスタムアプリの開発等、自分たちの要求を満たすことを要求する。これを、大企業でのデジタル転換の動きと合わせると、企業はiOSデバイスや、それをどう使って会社の転換に役立てるかを深く理解する必要がある。
SAPは、自社顧客にiOSを推進するプログラムを複数発表しており、まずiPadとiPhoneでSAPツールに保存されたデータを利用するためのアプリ群を提供する。同社のインメモリーデータベース製品、SAP HANAのためのiOS SDKも提供し、企業がSAPの開発したアプリを使うだけでなく、HANAに蓄積したデータを使うカスタムアプリを自社開発できるようにした。
「われわれは、これまでと全く異なる方法で企業にアプローチしようとしている。それは主として、Appleのアプリデザインに対する考え方によるも。これらのアプリが、iPadとiPhoneでの業務を革新するという使命を果たすことを私は強く信じている」とLucasはTechCrunchに語った。
そして、IBMと同じく、教育なくしてこの種の契約はない。SAPは、iOS版SAP Academyを、SAPプログラマーが HANA iOS SDKの使い方を学習する教育の場として提供する。Lucasは、同社がこの教育に強く力を入れていると言い、発表して数ヵ月で消えてしまうものではなく、将来に向けて続けていくことを約束した。
SAPとAppleの関係はまだしっくり来ないと感じるかもしれないが、IBMが2014年に提携を結んだ時も、眉をひそめる人たちはいた。しかし昨年末までに、Apple – IBM提携によるアプリは100種類となった ― それ以降も確実に数は増えている。
実は、SAPも100種類のアプリを作る計画だ。アプリもSDKもまだ提供されていないが、今年中にベータテストを始めるつもりだと言っている。Lucasは、多くのアプリが既に開発中だがまだ公開準備ができていないと話した。
Appleは、昨年夏にCiscoとも提携している。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)