SlackとAWSの統合がMicrosoft Teams+Azureコンビを焦らす

SlackAmazonが米国時間6月4日の夕方、大きな統合を発表した。この統合によりSlackは通話機能にAmazon Chimeを利用することになり、また同社自身のインフラを担うクラウドサービスとして引き続きAWSを利用する。一方、Amazonは、社内コミュニケーション全般でSlackをそのためのオプションとして利用することで合意した。

Amazonのスポークスパーソンは本誌に「Amazonの一部は以前からSlackをライセンスしているが、全社員のオプションになるのはこれが初めてだ」と語った。

ここで強調しておきたいのは、この動きは確かにSaaSのコミュニケーションツールがAWSとの関係を深めたという大きな統合だが、それと同時にこの合意はMicrosoftとSlackのライバル製品である同社のTeamsへの対抗策でもあることだ。そのためクラウドではMicrosoftのライバルであるAmazon AWSと手を組んだのだ。過去にSlackのCEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏は、テクノロジー大手が彼の企業を自分たちの存在を脅かすものと見ている、とからかったこともある。

いずれにしても、Teamsは巨大テクノロジー企業が作った小さなソフトウェアにすぎないが、今回の契約を上記の文脈でみないことはできない。AWSとの関係強化はMicrosoftに対するメッセージであり、インフラサービスであるAzureはAWSと競合している。

もちろんバターフィールド氏自身がそう口にしたわけではない。彼は今回の契約のシナジー効果に関する声明で「AWSと戦略的なパートナーシップを結んだことは、今後の需要に対応するスケール能力を両社に与え、顧客にエンタープライズ級のサービスを提供できるようになる。AWSのサービスをSlackのチャンネル方式のメッセージングプラットホームと統合すれば、開発チームは彼らのクラウドインフラストラクチャのプロジェクトを、Slackを去ることなく容易にそしてシームレスに管理できる」と語っている。

この契約には、AWS Key Management ServiceとSlack Enterprise Key Management(EKM)との統合による暗号キーの管理や、AWSのチャットボットサービスとの連携強化、AWS AppFlowとの直接統合などといったことも含まれている。AppFlowの統合によって、SlackとAmazon S3ストレージやAmazon Redshiftデータウェアハウスとの安全なデータ転送が可能になる。

AWSのCEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏からみれば、これは純粋な統合劇だ。「AWSとSlackが共同で開発者チームに、フロントエンドのアプリケーションで迅速なコラボレーションとイノベーションの能力を与える。それと同時にバックエンドのクラウドインフラストラクチャに関しても、効率的な管理能力を与える」とジャシー氏は声明で述べている。

良好な契約の例に漏れず、これも明らかにWin-Winの関係だ。SlackはAWSに大きな顧客を獲得し、AWSはそのサービスの多くをSlackに直接統合する。エンタープライズユーザーがこれほどまでもSlackに惚れ込んでいる理由は、フォーカスをあっちこっち変えたり、いろんなインタフェイスを行ったり来たりしなくても、ただ1つの場所で仕事を完了できるからだ。

SlackとAmazonの統合によって、両社共通のユーザーにより多くのメリットをもたらし、その一方で共通の敵を焦らす。まさしく、Win-Winだ。

関連記事:SlackのバタフィールドCEOがマイクロソフトの「比較広告グラフ」を非難

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。