SoftBank Vison Fund、不動産仲介のCompassに4.5億ドル――ポストマネーの企業評価22億ドルに

鉄は熱いうちに打てといわれるが、Fidelityがリードしたラウンドで先月1億ドルを調達した不動産仲介のスタートアップ、Compassはさらに巨額の投資を受け入れた。今回SoftBank Vision Fundが4億5000万ドルを投資するのに加えて5000万ドルの発行済の株式買い上げが予定されている。調達された資金は不動産の売買・賃貸のプラットームを世界に拡大するために利用される。

ニューヨークに本拠を置くCompassの資金調達総額は7億7500万ドル、ポストマネー〔投資後評価額〕で22億ドルとなる。わずか数週間前の企業評価額は18億ドルだった。

今回の巨額のラウンドは前回のラウンドと時期的にほぼ重なっている。共同ファウンダーのAllonが日本でSoftBankとの契約をまとめた日にFidelityは1億ドルの投資を発表した。

Compasshsがオンライン不動産仲介に地歩を築いたのは2012年にさかのぼる。当時はUrban Compassという社名だったが、800万ドル資金を支援者から調達するこtに成功し、最大のシードラウンドだとして話題になった。もっともすべては比較の問題で、現在の状況からすると800万ドルは小銭とも見える。

Compaqssは現在アメリカの11都市で運営されている(1億ドルの資金はこの運営のためと発表された)が、共同ファウンダー、会長のOri AllonはインタビューでSoftBankから投資で目標をさらに拡大し、世界的な規模への展開をめざすと語っている。【略】

Compassがこれほど大型の投資を引き寄せる理由のいくぶんかは共同ファウンダーの経歴にある。Allonはエンジニアであり、起業家としてはスタートアップをGoogle、Twitterに売却しており、それぞれの検索ビジネスの重要な基盤となっている。共同ファウンダー、CEOのRobert Reffkinは元ゴールドマン・サックスの金融専門家で、その経歴も申し分ない。

同時にCompassのテクノロジーそのものものも投資家の強い関心をひいたはずだ。Compassは当初、ローカルビジネス情報の革新を目指していたが、ここである要素をローカルビジネスのカギとして重視した。つまりユーザーの実際のロケーションだ。このプラットフォームが提供する近隣ビジネスのデータベースはわかりやすく、事前に十分な審査を受けていてCompassのユーザーが信頼することができた。

不動産仲介にシフトしたCompassが現在ターゲットとするのは高級な物件と顧客だ。 ハイエンドの物件の取引はマージンが大きいし、不動産の購入を考えている高所得者からの着実な需要がある(Allonは「将来もハイエンドだけに絞っていくつもりはないが、当面はこの市場に集中する」とインタビューで語っている)。

家屋の購入・賃貸希望者と物件所有者を仲介するサービスとしてCompassは決して最初の会社ではない。この分野にはZillow、Trulia、Redfin、Homes.com、Rent. comなどの有力サービスを始めとしてきわめて多数の会社が存在する。しかしCompassは、たとえていうなら、多数の既存のスマートフォンンの中に誕生したiPhoneのような存在となる可能性がある。後知恵かもしれないが、iPhoneはユーザー体験を慎重にコントロールし、ユーザーをしっかり見極めることによって既存のスマートフォンが目指しながら実現できなかった高いクオリティーのサービスを実現できたのではないだろうか。

また巨額の投資はCompassの驚くべき成長に見合ったものだ。不動産業者の数―Compassはユーザー向けと不動産業者向けの二つ面でビジネスをしている―という重要な要素を2年間で5倍に増やすという結果を出している。これが手持ち物件数を飛躍的に増大させ、顧客の多様な需要に応えられるようになるという循環を生んでいる。同社は今年、1万6000件の成約(取扱高140億ドル)、売上にして3億5000万ドルを達成することが確実と見られている。

SoftBankのVision Fundaid上級投資専門家、Justin Wilsonは「「不動産というのはきわめて大きいビジネス部門でありながら、これまでテクノロジーが関与する度合いが比較的低かった。そのため非効率と断片化が著しかった。Compass従来と異なるエンド・ツー・エンドのテクノロジー・プラットフォームを構築し、多様なデータを集約し、顧客の当初の物件の検索を始めとして、顧客と不動産業者の双方を取引のあらゆる段階で支援する。保有するユニークなデータとテクノロジーによるディスラプトにより大きく成長し、Compassは数兆ドルにも上る不動産業においてユニークな地位を築いていくはずだ」と声明で述べている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。