NASAとSpaceXにとって宇宙開発の歴史を作る決定的な瞬間が今月末に迫ってきた。5月27日に実施されるDemo-2ミッションではSpaceXが初めて有人宇宙飛行に挑む。乗員はNASAの宇宙飛行士2名で、米国による有人飛行としては2011年に退役したスペースシャトル以来となる。
先週、SpaceXとNASAの代表がDemo-2の詳細を説明した。NASAの宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の2名はSpaceXのCrew Dragonに搭乗しFalcon 9でISS(国際宇宙ステーション)を目指す。
Demo-2というミッション名でも明らかなようにこのミッションはまだテストの一部だ。それでもSpaceXとNASAにとっては2名の宇宙飛行士を無事に帰還させることが至上命題であり、責任は重い。ちなみにDemo-1も今回同様Crew Dragon宇宙船をISSへ往復させるミッションだったが、飛行は無人で実施された。
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Demo-2は当初の計画されていたよりもかなり長くなる。NASAの発表によれば。ミッションは30日以上、最長で119日継続される。その期間内でで必要に応じて実際のスケジュールが決定される。NASAにとって現在最も重要な目標は、商業有人飛行ミッションであるCrew-1の実施だ。このミッションではNASA、JAXAなどからの4名を宇宙に運ぶ予定だ。
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発表されたタイムラインによれば、Falcon 9の1段目のブースターが点火されて打ち上げプロセスが開始される。上昇後、ブースターが分離されCrew Dragonを搭載した2段目ロケットが作動する。ブースターは前後を入れ替えるフリップ動作を行い、ブーストバックと呼ばれる噴射により、着陸に向けた軌道に入る。ブースターは大西洋を航行するSpaceXの回収艀に着陸する予定だ。
一方、Dragonカプセルは2段目ロケットから分離してISSに向かう。到着までの時間は打上時のISSの位置により、最短で2時間、最長48時間かかる。
打ち上げ予定日前後のフロリダの天候は予測しにくい。またDemo-2が有人飛行であるためDemo-1のときよりも天候条件はシビアなものとなるだろう。直前でスケジュールに変更が加えられる可能性はあるが、打上に適した「窓」はその後も多数ある。
Crew Dragonは2段目から離脱して飛行を開始した後、ISSに近づくために何回かロケットエンジンを作動させる。ドッキングそのものは自動操縦となる。Crew Dragonは完全に自動化されたドッキング機能を備えている。従来はカナダ企業が開発したためCanadarmと呼ばれるロボットアームを使ってISS側のオペレーターがカプセルを捕獲する必要性があった。
ドッキングが完了すると、Crew Dragonは与圧され、宇宙飛行士がISSに移乗できる。 ISSでは、ベンケンとハーリーは実験やメンテナンスなどの業務を行う。その後2名はCrew Dragon戻り、ドッキングを解除、貨物コンパートメントを投棄して軌道離脱のためにロケットを作動させる。大気圏再突入後、十分に減速した段階でパラシュートを展開して大西洋に着水するという予定だ。ISS離脱からから着水までには約24時間かかる。
地上支援チームは5月16日からクルーの厳重な隔離を開始する。これは打上まで続く。打上施設のスタッフは新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のためのソーシャルディスタンスのルールに従い、互いに常に2mの距離を取る。飛行司令ステーションもこのため改装されスタッフの配置も変更される。
ミッションは各段階ごとにみればさほど複雑には見えない。 しかしすべての段階が完璧な信頼性をもって実施されねばならず、これはSpaceXとNASAの長年のハードワークの集大成となる。2011年のスペースシャトル退役以後、米国は国産ロケットでISSにクルーを送ることができなかった。米国が有人宇宙飛行の舞台に復帰する瞬間が近づいている。5月27日の米国東部夏時間正午(日本時間5月28日午前1時)にジョン・F・ケネディ宇宙センターで行われる打ち上げは、ぜひともライブ配信で楽しもう。
画像:NASA
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)