Spotifyは米国時間4月27日、2021年2月に開催された同社のイベント「Stream On」で新しいサブスクリプションプラットフォームを発表したのに続き、ポッドキャストの有料サブスクリプションの提供を正式に開始した。Spotifyのポッドキャスト作成ツールAnchorを通じて、ポッドキャスターは特定のエピソードをサブスクライバー専用コンテンツとして設定し、Spotifyやその他のプラットフォームに公開することができるようになる。このサービスは当初、12の独立系クリエイターを対象にテストされていたが、順次ウェイトリストに登録済みのクリエイターへと展開される予定だ。
当面は米国のクリエイターのみを対象に有料サブスクリプションを提供し、今後数カ月のうちに海外展開を目指すとしている。
このローンチは、ポッドキャスト、特に有料ポッドキャストの市場が過熱している中で行われた。Appleは先に、Apple Podcastプラットフォームを通じてポッドキャストの有料サブスクリプションを提供する計画を発表している。
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しかし、Spotifyの取り組みとAppleの計画には大きな違いがある。それはサブスクリプションの収益をどう分配するかだ。
Appleは、初年はポッドキャスト収益の30%を徴収し、2年目からは15%に引き下げる。これはApp Storeのストリーミングサービスと同じである。一方Spotifyは、同社のプログラムは今後2年間、クリエイターに無料で提供されると述べている。つまり、クリエイターは収益の100%を得ることになる。そして2023年春、Spotifyはこのツールへのアクセスに5%の課金を導入する計画だ。
12のクリエイターからなる最初のグループは、サブスクライバー限定の有料ボーナスエピソードをフィードに公開し、プラットフォーム上の他のポッドキャストのエピソードと同じように発見や検索が可能になる。これらの有料エピソードはポッドキャストのメインフィードに表示され、再生ボタンに鍵のアイコンが表示される。アーリーアダプターには、Wild Thing、Tiny Leap、Big Changes、The Mindful Minuteなどが名を連ねている。
クリエイターはサブスクリプション料金を、月額2.99ドル(約325円)、4.99ドル(約542円)、7.99ドル(約868円)の3つの価格帯から選択できる。
Spotifyは、Anchorのクリエイターがフィード全体を有料としてマークできるようにする一方で、クリエイターが有料化を選択的に行う場合、無料エピソードの魅力はリスナーをまず惹きつけることにつながり、より賢明なアイデアであると考えている。後からボーナスコンテンツをアップセルすることもできる。ただし、大規模なポッドキャストでは別のアプローチの可能性もあるだろう。
例えば、Spotifyは有料フィード全体を含む有料サブスクリプションの契約をNPRと結んだ。NPRは5つの番組―How I Built This with Guy Raz、Short Wave、It’s Been a Minute with Sam Sanders、Code Switch、Planet Money―を公開し、5月4日から有料サブスクライバーには無料で提供される。これらの番組は「Plus」としてブランド化され(例:Planet Money Plus)、無料フィードと一緒に配信される。このケースでは、リスナーはボーナスの材料を得られないが、NPRをサポートすることになる。今後数週間のうちにさらに多くのNPR番組が独自のPlusバージョンとして公開される予定だ。
The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、Spotifyの有料サブスクリプションが今週登場することを報じた。記事の中で、購読を希望するiOSユーザーは取引を処理するためにウェブサイトに送られ、Appleのアプリ内購入の要件を回避することに言及している。これはSpotifyにとってトリッキーな一線になる可能性がある。同社はApple批判の中心的存在であり、先週議会でApp Storeに関してAppleの反競争的行動を証言している。
アプリ内購入を迂回して、ユーザーにウェブサイトに行ってサブスクリプションを購入するように誘導しているわけだが、同社は、その説明はポッドキャストの制作者に任せているとしている。
Anchorの共同創設者であるMichael Mignano(マイケル・ミニャーノ)氏は次のように述べている。「基本的に、ポッドキャストを購読する方法や場所についてリスナーに情報を提供するのは各クリエイターに任されています。実際のサブスクリプションはAnchorのウェブページ—Anchorのクリエイターのプロフィールページで行われますが、認証後にSpotifyに戻ってくると、ロックは解除されます」。App Storeのルール上、Spotifyアプリが実際にこのウェブページを開くことはないという。(また、Spotifyはサブスクリプションベースの売上の一部を徴収していないため、Appleが数年前に設立したクリエイターへの寄付に対しては、たとえアプリ内課金を採用していたとしても、当面はカーブアウトを通じて保護されることになる。)
有料のポッドキャスト機能を利用するために、クリエイターは最初にエピソードを録画またはアップロードした後、Anchor内でエピソードにマークを付ける。別のポッドキャスティングアプリでコンテンツにアクセスしたいリスナーには、購読後にプライベートRSSフィードが提供される。
またSpotifyは、初めてSpotify Open Access Platform(OAP)を発表した。これにより、すでに他のプラットフォーム(競合サービスやプライベートRSSフィードを含む)で有料サブスクライバーとなっているクリエイターが、既存のログインや課金ソリューションを使って、そのコンテンツを現在のサブスクライバーに提供できるようになる。Spotifyによると、これはクリエイターが関係を直接コントロールするのに役立つという。しかしSpotifyは、そのコンテンツを同社のサーバー上で再ホストすることで、結果としてより広範な有料ポッドキャスト市場への洞察を得ることになる。
同社は、まだこのソリューションの完全な詳細を発表する準備はできていないが、今週中にいくつかのニュースを発表すると述べている。
有料ポッドキャストの提供に加えて、Anchorを使ってオーディオ広告のマーケットプレイスSpotify Audience Network(SPAN)を独立系ポッドキャストに開放する計画だという。これもまた、SpotifyがAppleと差別化されている領域だ。Apple Podcastでは、クリエイターは自分の広告を販売する責任があるため、収益の100%にとどまる。
これに対してSpotifyは、ポッドキャスト視聴者にサービスを提供することを目標に、広告技術に投資してきた。同社はこれまで、ネットワーク経由でMegaphone(2020年に買収)のインベントリのロックを解除していたが、今後はAnchorのクリエイターの一部がSPANを利用できるようになる。同社によると、5月1日に50のクリエイターを集めてスタートし、その後徐々に拡大していくとしている。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Spotify、Anchor、ポッドキャスト、サブスクリプション、アメリカ
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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)