スタートアップの成長支援や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援、IT人材の育成などを手がけるSun Asterisk(サンアスタリスク)は12月4日、農林中央金庫を引受先とする第三者割当増資により、約10億円の資金調達を実施したことを発表。2020年の年初にラウンドをクローズし、金融機関および事業会社などから合計で約20億円を調達する予定だ。
このラウンドはSun Asteriskにとって、初の外部からの資金調達となる。「各引受先企業との業務提携を進めている」とのことだが、その件に関しての詳細はまだ明らかにされていない。
農林中央金庫は「Sun Asteriskは、幅広い企業に対する新たな価値創造のサポートを行っており、農林水産業を含めた日本の産業界の発展に大きく貢献していく企業であることから、投資を決めました。新たな取り組みにおける直接投資の初号案件として、金融面のサポートにとどまらず、ともに事業成長を目指していきたいと考えています」とコメント。
Sun Asterisk代表取締役CEOの小林泰平氏は「昨今、海外VCや機関投資家による日本の未上場企業への投資などが増えて来ていますが、市場運用資産60兆円を超える農林中央金庫によるSun Asteriskへの投資が、国内機関投資家のスタートアップへの投資を加速させ、資金調達の多様化が進むと良いなと思っています」と述べている。
2013年頃から産学連携における教育事業を通じてグローバルなIT人材を育成してきたSun Asteriskは、日本におけるIT人材の恒常的な不足の早急な解消を目指し、外部資金調達という手段に踏み切った。
FramgiaはSun Asteriskに
Sun Asteriskは2012年に創業。今年の3月には社名をFramgia(フランジア)からSun Asteriskへと変更。Sun Asterisk代表取締役CEOの小林泰平氏は、社名変更を行なった今年こそが、同社にとっての「第二創業期」だったと話す。
「もう、前の会社の面影がない。(Sun Asteriskは)本当の意味でのデカい会社で、クリエイティブなことをやりたい集団が、国籍関係なく集まっている。今は、『フロム・アジア(Framgiaの社名の由来)』ではなく、より大きな枠組みで考えている。『“アジアから”新しいサービスを生み出していこう』、ではない。『世界に対して』が当たり前になってきた」(小林氏)
そんなSun Asteriskが第二創業期である2019年を締めくくるニュースとして発表したのが、初の外部からの資金調達。小林氏は、その道を選んだのは「Sun Asteriskという会社になり、自分たちがやりたい事を改めて見つめ直した」結果だと言う。
「Framgiaは周りからも『急成長(企業)』と言われていた。5年で1000人、6年で1300人といった具合に成長してきた。外部資金の調達は一切なしで、自分たちで売り上げたところから出た利益でやってきた。それは良い事で、事業もすごく順調だ。このまま自分たちの手金でやっていくこともできるし、今後、市況が悪くなったとしても、僕らのビジネスモデルだとそこまで影響されることはないと思っている。だが、自分たちがやりたいことを見つめ直した時に、やっぱり、より大きな社会課題にしっかり立ち向かっていきたいと考えた」(小林氏)
外部資金調達に踏み切りIT人材不足の解消を目指す
今回調達した資金で、Sun Asteriskはテクノロジー人材の育成プログラムを拡大させる予定だ。同社は現在、ベトナムにて3大学の約1500名に同プログラムを提供しており、今後は「多国展開」を含む事業拡大を図る。資金はクリエイティブスタジオの中長期的な成長基盤の強化、そしてアクセラレーション事業であるスタートアップスタジオによる、各国のスタートアップの創出にも使われる。結果として、「DXソリューションの継続的かつ拡大的な提供」を目指す。要するに、大企業からスタートアップまで、幅広い規模の会社の高度IT人材不足を、海外で育てた人材で満たしていくというスキームを、資金調達によりより加速させていく、ということだ。
「僕たちがやっている教育事業では、海外のトップ大学と提携をして、5年間かけて、日本語と実践的なITを教えていく。『日本に行きたい』という人たちがまだいる。それら(日本語とIT)を教えて、彼らが日本で就職する支援まで行うという事業が凄く上手くいっているおかげで、色んな国の色んな大学から、『うちでもやってほしい』と、引き合いがある。そんなに上手くいっている産学連携の取り組みは聞いたことがない」(小林氏)
とは言うものの、小林氏は、前述の教育事業には多大なコストがかかるため、現在のスポンサーモデルでは勢いのあるスケールは見込めないと説明。そして、数年で同社が育てているようなグローバル人材は「日本を向かなくなる」恐れがあると言う。「ベンチャーなどは別だが、一部のITを除き、大きい企業は、外国人に対するリテラシーが低すぎる傾向にある。日本においても様々な努力が行われているが、労働環境やグローバル人材を受け入れる体制におけるネガティブな要素をなくしていかなければ、彼らは来たくなくなってしまう。日本は英語が通用しない国。英語が喋れる他の国に目を向けられてしまう」と同氏は話す。
だが、小林氏は、今のところは「日本に来たいと言ってくれている、トップクラスに優秀なグローバルで優秀な人材がいる。先人が築いてきた日本というブランドがまだ生きている」と加えた。2030年には日本国内のIT人材が約79万人不足すると予測されているが、Sun Asteriskがこの問題の解決に貢献するためには、スタートアップのような急速な成長が必要だと同社は考えている。
「今、一気に踏み込んでやらないと、この日本のIT人材不足の問題は絶対に解決できない。僕たちに期待されているのは、人と技術の安定供給。かつ、サブスクリプション型で安定稼働ができるというところが大事。Jカーブを描くなら今しかない」(小林氏)