2014年にTesla(テスラ)がSolarCity(ソーラーシティー)を買収したことで、この電気自動車メーカーは住宅用太陽光発電の世界でも誰もが認める強力なプレイヤーとなったわけだが、そのリードは攻撃的な計画で突進してくる最大のライバルSunrun(サンラン)により着実に縮められてきた。現在、住宅用太陽光発電設備の設置業者Vivint Solar(ビビント・ソーラー)を32億ドル(約3440億円)で買収したSunrun(Sunrunリリース)は、トップの地位を固めたように思われる。
Teslaの創設当初、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は同社を単なる電気自動車のメーカーではなく、エネルギー企業として位置づけたいと努力していた。Teslaが26億ドル(約2800億円)の値を付けSolarCityを買収(未訳記事)したとき、その動きは「ゼロエミッションの発電オプションを提供する」という同社の「基本計画」の第1段階が最高潮に達したものと見られていた。
その計画が今、住宅用太陽光発電を専業とし、規模の効率性により安価なパネルを提供できるライバルの上場企業から、大きな試練を突きつけられていると太陽光発電分野に詳しいアナリストたちは話す。
「Sunrunは恐ろしいほど大きくなります」と、JMP Securities(JMPセキュリティーズ)のJoe Osha(ジョー・オシャ)氏はBloomberg Newsに語った。「彼らは明らかに規模と効率を追求しています」。
事実、Sunrunの声明によれば、企業合併による事業の効率化で年間およそ9000万ドル(約97億円)の節約になるという。また規模の経済により、送電網に電力を供給するための電力会社との契約をさらに有利に進めることができる。
SunrunはBlackstone(ブラックストーン)の支援を受けたVivintの買収を発表した際に、50万世帯という合算顧客ベースは3ギガワットを超える太陽光発電アセットに相当すると認めている。この数値は米国の住宅用太陽光発電市場全体から見れば、3パーセントの占有率に過ぎない。
Bloomberg NEFのデータによれば、Sunrunはすでに住宅向け太陽光発電設備の設置事業でTeslaを抜き、四半期ごとの両社を合わせた住宅用太陽光発電設備の新規リース件数は、全体の75パーセントを占めているという。
「米国人はクリーンで災害に強いエネルギーを求めています。Vivint Solarは重要で質の高い販売チャンネルを追加したことで、合併した両社がより多くの世帯への認知を広げ、家庭での太陽光発電と蓄電の利点に理解を深めてもらうことが可能になりました」と、SunrunのCEOで共同創設者のLynn Jurich(リン・ジュリック)氏は声明の中で述べている。「今回の取引により、私たちの規模は拡大し、中央集中型の公害をまき散らす発電所に取って代われるよう、そして完全なクリーンエネルギーの未来に向けて加速できるよう、私たちの電力供給ネットワークを成長させることができます」。
14億6000万ドル(約1570億円)全額株式交換による買収(およそ18億ドル、約1940億円が負債と想定)を行ったSunrunはTeslaの太陽光発電事業の強力なライバルとなるが、Teslaにはこの住宅用太陽光発電のライバルを通じて、より多くの蓄電池を販売できるというチャンスもある。
SunrunとVivintは、太陽光発電パネルを設置する際に顧客に蓄電池も勧めるだろう。となれば、Tesla製のPowerwall(パワーウォール)か、LG Chem(LG化学)と共同で製造している自社製のBrightbox(ブライトボックス)のいずれかを扱うことになる。
投資家たちはこのSunrunの最新の行動に反応して、同社株に資金を投入している。Sunrunの株価は、正午の取引で5ドル上昇した。
「Vivint SolarとSunrunは、長い間、クリーンで手頃な価格の災害に強い住宅向けエネルギーの供給という共通の目標を掲げてきました」とVivint SolarのCEOであるDavid Bywater(デイビッド・バイウォーター)氏は声明の中で述べている。「Sunrunと力を合わせることで、より幅広い顧客へのリーチが可能になり、クリーンエネルギーの受け入れと送電網の近代化のペースを速めることができます。今回の取引は、私たちのお客様、株主、そして私たちのパートナーに価値をもたらすと信じています」。
画像クレジット:Vivint Solar
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(翻訳:金井哲夫)